財務省の周到な政治家養成
自民党政権は、自民党と官僚の連立だった。民主党は「脱官僚」を掲げながら何もできず、官僚に取り込まれ官僚との連立を組まされた、と言っていいだろう。党内対立や野党対策で落ち着かず、政策は官僚に丸投げし、国会対策まで財務省に頼り切る結果となった。
権力者の経験がない民主党には野党対策のノウハウはなかった。財務省は自民党時代から政治家と表裏一体になって国会対策を支えてきた。財務大臣に国会対策委員長だった安住淳を抜擢したのも「使える」と勝が判断したから、と言われる。
野田佳彦は藤井裕久民主党最高顧問による「一本釣り」だった。財務省OBの藤井は飲み友達だった野田を財務官僚に引き合わせ、政権交代で藤井が蔵相になると主計担当の副大臣に起用した。
自民党総裁の谷垣禎一も、財務省が手塩にかけて育てた政治家である。財務省は長時間かけてシンパとなる政治家を養成する。有望と見ると担当者を決めて、御用聞きに当たるほど周到な体制ができている。
民主党は野田、自民党が谷垣。今を逃したら消費税増税のチャンスは回ってこない、と財務省は舞い上がった。谷垣自民党とは話がついている。あとは民主党内の反対を押し切るだけ。税調会長の藤井、財務相の安住、さらに岡田克也を副首相にして、野田を含めた4人を神輿に載せて突っ走った。
消費税反対が渦巻く民主党税調で司会役を務めたのは、1年生議員の岸本周平。財務省OBの脱藩官僚がいまや切り込み隊長だ。
パブリックサーバントであるはずの官僚が、政治家を操って増税を推進した、という姿は誰の目にも明らかになっている。
政治家がだらしない、党は決められない、と有権者は半ば諦めて「官僚主導」の政局を見ている。「増税反対」は過半数を占めるが、一方で「社会保障が充実するなら」という思いで賛成に回る人も少なくない。