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賈詡ルート
エピローグ

母様。ボクに好きな人ができました。そう言いながら、愛しい人の待つ庵へと歩いて行く。アイツは油物があまり好きじゃないから、さっぱりとしたものがいいかもしれない。


「董卓軍だな? 悪いが、そちらの責任者と話をしたい」


アイツと初めて話した言葉はそれ。その時は、何も思わなかった。でも、今ではここまで思うなんて。


「母様が言っていたっけ。父様と出会った時も最初はどうとも思わなかったけど、一緒にいるうちに『何がなんでも一緒に居たい』って想うようになったって」


そう考えると、ボクや母様って独占欲が強いのかな? そして、その相手がいなくなると駄目になるのも母様と似ている。やっぱり、ボクは母様の娘だ。


「七乃には悪いけど…これだけは譲れない。アイツとはボクが一緒にいるんだから」


張勲もそれが分かっているから影に徹して不穏分子を粛清したりしているんだろうな。まあ、アイツも高順を好いているのは分かっているからボクもうるさくは言わない。


「それと曹操には悪いけど、アンタが天の御使いを想うように…ボクだってアイツを思っているんだ。だから、もしかしたらアンタとボクの立ち位置は真逆だったかもしれない」


高順が天の御使いを殺した。でも、その逆もありえた。だから、ボクは曹操に一方的ではあるが親近感を覚えていた。


「でも…これが現実。ボクは高順を手に入れて、アンタは天の御使いを失った。ただそれだけよ」


曹操には悪いって何度も言うけど、本当にそのとおりだから仕方ない。ボクは『高順を手に入れるために強者』を目指した。曹操は『大陸を手に入れるために強者』を目指した。ただそれだけの違い。その結果がこれ。


「まあ、もう終わったことだから別にいいわね。さて、早く帰ってアイツの世話をしないと」


多分、ボクの決断は周りから見れば間違っているんだろう。高順を生かすために、七乃と波才を抱き込んだ。











「張勲。ちょっと付いてきて」


「はい~?」


最終決戦の日にボクは七乃を連れて波才の部屋までいった。そして、こちらを見ている波才を前に言った。


「波才。高順をどんな形でもいいから生き延びさせて」


張勲は波才の部屋までに行く途中でボクの目的に気づいたのか波才の首に剣を突きつけていた。波才は目を瞑って少し考えた後こう言った。


「筆頭が倒れたら我々が展開する右翼にある崖に落とします。ですが、それまでです。それ以降のことは確約できません」


多分、波才がそう言ったのは『あの場での強者はボクだったから』ということ、それと波才もどこかで高順に死んでほしくないと思っていたからだと想う。


まあ、とにかく波才を脅した結果がこれ。高順は全身に大やけどを負い、長時間喋ることもできず、一人では寝台から起き上がることもできない体になった。でも―――。


「でも、高順はボクのものになった」


ボクがいなければすぐに死ぬ。多分、ボクは狂っている。でも、この気持は高順が好きだって気持ちは狂っていない。


「絶対に離さない。絶対に邪魔はさせない」


今までボクは月のために我慢してきた。その月から「好きに生きて」と言われた。月の周りには戴宗や呉用がいる。呂布たちもいるから大丈夫だということなんだろう。元魏軍も曹操が人質となっている以上は反乱は起こさないだろう。だったらボクは好きなように生きる。


「賈詡文和はもう終わり。これからは詠として生きていく……」


さあ、庵が見えてきた。高順とどんな話をしようか? 今日街で見かけた半裸の野太い変態のことでも話そうか? それとも―――。


「母様、父様。ボクは今、幸せです。周りから見れば狂っているかもしれないけど、間違い無くボクは幸せです」

















「貂蝉。北郷一刀は死んだが…この外史は滅びに向かっていない。どういう事じゃ?」


「簡単な話よ。この外史における「主人公」はご主人様じゃなくて、賈詡文和の父親だったから」


そこは何も無い空間。そこで、貂蝉と卑弥呼の二人が会話をしていた。


「しかし、賈詡文和の父親はすでに死んでいるのではないか?」


「ええ。でも、あの男の血は賈詡文和に受け継がれている。つまり、この外史において「主人公」の条件とは「黒という男の血を引いている者」ということよ」


北郷一刀には外史を存続させる能力がある。だが、この外史ではその役目は黒が担っていた。


「要するに黒という男がご主人様より早くこの外史に流れ着いたことで『世界』は黒を『天の御使い』として認識したの。そして、黒が死んだことで外史は崩壊しようとした。でも自分が崩壊することを認められなかった『世界』は気づいた」


「黒の血を継ぐあの少女か?」


「ええ。外史はその存在を保つため黒の血を継ぐ賈詡文和という少女を「主人公」とみなしたわけ。なんせ、その頃はまだご主人様はこの外史に現れていなかったからね」


貂蝉の言葉、それはこの外史の主人公は一刀ではなく賈詡だと宣言したもの。


「そういう事で、この外史はどんなに薄くなろうと賈詡文和の血が途絶えなければ崩壊しないのよ。ある意味、私たちのような存在からしてみればありがたいわね。この外史が崩壊することはほぼありえなくなったのだから」


貂蝉はそう言って笑みをこぼす。好意を持っている一刀が死んだことは残念だったが外史が存続していくのは嬉しい。それに、仮に黒の血筋が途絶えても外史は代替案として一刀の血筋を重要視するだろう。


「ま、この外史はこれでいいじゃろう。貂蝉。次の外史に行くぞ」


「はいはい。それじゃぁ……賈詡ちゃん? 頑張りなさい?」


もうこの外史に来ることはないだろう。だから、この外史の主人公に声援を送る。多分これからつらいこともあるだろうからそれに負けないように声援を。
最後はミザリーとかそんな感じのエンドです。まあ、高順らしい最後です。

魏軍の処分に納得いかない方もいるとは思いますが、まだ五胡がいるため下手に処分するより、曹操を人質として運用したほうが戦力的には助かるのでこのような形にしています。それに、一応楽進も人質ですしね。

外史の設定とかはこの小説のみの設定なのでツッコミはなしの方向で。黒も考えようによっては天の御使いなのです。ということで、こんな感じに。

一応、別エンドでは黒の手紙が発見され詠が天の血を受け継いでいることが発覚するというものもありましたが、くどくなりそうなのでカットです。

さて、この「悪人無双~高順伝~」にお付き合い下さりありがとうございました。ログみたら投稿から一ヶ月ほどしか立っていない……どんだけ現実逃避していたんだ自分?

とりあえず、次回は以前発表したとおり島左近が恋姫世界にやってきます。一刀とセットで動かすので、一刀をどの勢力に入れるかのアンケートをお願いします。

1.魏
2.呉
3.蜀
4.劉備軍

以上からお選びください。蜀と劉備軍を分けているのは特に意味はありませんがどうせなら分けようと思いました。ついでに、ヒロイン(左近の)は誰がいいか…と言っても黄忠・厳顔・黄蓋くらいしか思いつかない。魏だと…ギリで張遼?まあ、とにかく次回作も御願します。


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