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賈詡ルート
第1話 すべての始まり

始まりは北のほうのそれなりに裕福な村だった。


「高順~。早く、早く!」


子供にせかされて付いていく黒髪のちょうど青年に入りかけている少年は高順という。優しげな風貌でこのまま成長すれば「紅顔の美少年」という言葉が当てはまる可能性がある少年。


「落ち着けって。急がんでも飯は逃げんぞ? まあ、喰われてなくなるかもしれんが」


その日は、村でのちょっとした祭りの日だった。高順はまだ若く少年と言える年齢だったが村の警備隊で「最強」と呼ばれるほどの力を持っていた。


「それじゃあ、今季の豊穣を感謝して―――」


村長がそう言って酒を掲げようとした瞬間に村長の首に矢が突き立った。


「何!? まさか、賊か!?」


大人の一人がそう叫んだ瞬間に雄叫びと共に賊と思わしき男たちが村に入り込んできた。


「人間は全員、殺せ! 今は、食料を奪うのが先だ!」


その声と共に盗賊たちは村人を次々と斬り殺していき、数人我にかえった村人が応戦しようと武器を取りに戻ろうとするが次々に殺されていく。


「クソがぁ!」


高順はなんとか盗賊の一人から剣を奪い、戦っていたが多勢に無勢。徐々に囲まれて身動きが取れなくなってしまった。


「ほぅ? なかなか強いな。お前ら、あのガキは生きて捕らえろ。多少の怪我は構わんが、後に響きそうな怪我は付けるな」


「了解」


全身に包帯をまいた盗賊の頭領は、部下に高順の捕縛を命じた。そして、まもなく高順は盗賊に捕らえられ、目の前で自分が生まれた村が燃えるのを見せつけられた。










「よぉ? 元気か? 餓鬼」


「なんなんだよ。お前らは…」


高順は縄で縛られることもなく、盗賊の頭領の目の前に座らされている。


「俺は…まあ、へいという。ちなみに、本名でもない。ところで、餓鬼。お前はこの世界をどう思う?」


へいと名乗った包帯男は喉を鳴らしながら高順に目を向ける。高順はその目を見て息を飲んだ。黒の目には獣のような獰猛な光だけではなく、まるで王を想わせるような威圧と知性があった。


「俺の持論は「弱肉強食」だ。いくら、漢王室が頑張ろうともすでに弱者。いずれ、強者に喰われる」


「それが……俺の村を襲ったこととなんの関わりがある!」


「クックック。簡単だ。お前らは「弱者」だったから「強者」である俺たちに殺された。ただそれだけのこと」


黒は高順の目の前に立ち、絶句している高順を見下ろして哂う。


「いいか? 所詮この世は弱肉強食。正義が勝つんじゃねぇ、勝ったほうが正義なんだよ」


そして、黒は高順に「悪」を説きはじめた。


曰く。お前は、自分たちに負けたから「弱者」である。


曰く、自分たちは「悪」を掲げて好きに生きると。


曰く、高順に興味があったから捕らえたに過ぎない。死にたくなければ必死であがけと。


曰く、村人の仇を取りたいなら「強者」になって自分たちを「弱者」にしてみろと。


黒はそう告げると高順を放ってその場を離れた。残された高順は、ただ唇を噛み締めて肩を震わせていた。


「必ず殺してやる……皆の仇を……」









現在高順の年齢は、大体18,9です。原作開始時は、華雄、黄蓋、黄忠、厳顔より少し下です。

盗賊の首領の黒は外見は志々雄です。かと言って紅蓮腕は放てません。


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