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動きだす集団移転 新天地課題も多く 女川・南三陸・亘理
 | 移転候補地を確認する住民=6月28日、宮城県南三陸町歌津 |
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東日本大震災の被災地で、防災集団移転促進事業が次々と動きだしている。宮城県では2、3の両日、亘理、女川、南三陸3町の復興整備協議会が開かれ、それぞれ3地区、13地区、3地区の集団移転計画が国の同意を得た。先行地区では住民たちの結束力が目立つ。一方で移転先用地の権利関係の整理など、新たな課題が浮上している地区もあり、集団移転の実現までに乗り越えるハードルはまだ多い。
◎女川/用地買収の遅れ懸念
宮城県女川町竹浦地区は女川湾の入り江に面し、60世帯約180人が暮らしていた。震災の津波で10人以上が犠牲になり、大半の家が流出した。住民は県内外に散り散りになったが、有志が昨年夏、町内でも珍しい復興委員会を設立。集団移転を目指した話し合いを重ねてきた。 「海の見える場所で、また一緒にみんなで暮らしたい」。郷土芸能「獅子振り」を通じた住民の結び付きは強固だった。月1回、20〜30人が集まった。移転候補地を探して地質調査をし、新潟県中越地震で集団移転をした集落も視察。自前で移転計画や工程表も作り、町に提示した。 復興委員長を務める鈴木成夫さん(63)は「津波で何もかも奪われ、仮設住宅で人生を終えるのはみじめすぎる。希望する住民でそろって、早く安住の地に移りたい」と住民の思いを代弁する。 今回、国の同意を得た集団移転計画は町内13地区。今後、移転先の用地買収が本格化するが、課題も浮上している。 町によると、契約手続きに向けて土地を詳しく調べると、金融機関の抵当に入っていたり、所有者が死亡した後も相続人の登記手続きが行われていなかったりするケースが続出している。買収完了までに時間がかかる地区も出かねない。 町復興推進課は「用地買収が滞り、移転を望む住民と土地所有者の間にあつれきが生じることがないよう努めたい」と話している。(丹野綾子)
◎南三陸/早期再建へ住民結束
南三陸町歌津の寄木地区と韮の浜地区が合同で移転する候補地は、海岸から内陸へ約1キロほど離れた高台にあり、海が望めない。住民の多くは漁業者。浜から離れるのは大きな決断だったが、一刻も早い生活再建を望み、地域はぶれることなく事業化に突き進んできた。 「早く1カ所に落ち着きたい」。地域の互助団体、寄木契約会会長の畠山孝市さん(65)は住民の切実な声を受け、昨年6月から移転候補地探しに奔走。契約会の共同所有地を提案し、8月ごろには住民の理解も得た。 寄木地区から2キロ以上南西に位置する韮の浜地区も当初は単独で移転候補地を探した。しかし一定の面積など条件に見合う土地が見付からず、寄木地区と合同で移転する方針を決めた。 浜が違えば地域性も異なるとされる漁村地域だが、両地区は以前から運動会や消防団活動などで協力し合う関係だった。話はスムーズに進んだ。 韮の浜契約会会長の阿部国男さん(67)は「もともと馬が合う地区同士。寄木の皆さんには感謝している」と話す。 海を望めない内陸への移転計画も対し、町側は「本当にここでいいんですね」と念押しした。 畠山さんは「軽トラックで漁港まで5分ほど。多少離れていても仕方ない。逆に津波を思い出してつらい人もいる。とにかく早く移転することを考えた」と振り返る。 国の同意を得た同町の3地区はいずれも10〜40戸規模。町復興事業推進課は「いずれも地域にまとまりがあり、方向性が揺らがなかった」と話す。町は30地区程度への集団移転を想定。順次の国の同意を取り付ける方針だ。(吉田尚史)
◎亘理/希望先一ヵ所に集中
移転先を候補地6カ所から選べる亘理町では、住民の希望する移転先が一カ所に集中し、町は頭を痛める。 町が災害危険区域に指定した3地区の576世帯のうち、集団移転するのは約240世帯。半数を超える134世帯が町中心部に近い「亘理江下地区」を選んだ。町が当初想定した100世帯を大きく上回る。 「亘理江下地区」は震災で津波を防いだ常磐自動車道の西側に位置する。町復興まちづくり課の高橋伸幸課長は「住民は安全性と利便性を考えたのだろう」と推察する。造成する団地の区画拡大が必要で、買収の対象となる地権者も増え、町は協力を求めている。 中心部に人気が集まる一方、津波の被災地近くや山あいの移転候補先には思うように住民の希望が集まっていない。 災害危険区域に指定された荒浜地区のすぐ西側にある移転候補地への希望はわずか40世帯。町の南西の内陸部に点在する候補地の4地区も計66世帯にとどまる。 荒浜地区の住民らでつくるNPO法人「復興わたり・あらはま」の渋谷尚事務局長は「もっと多くの住民が地元に移転してほしかった。荒浜漁港周辺で水産業や商業の集積を図り、戻ってきたくなるようなまちづくりが必要だ」と語る。(原口靖志)
2012年07月04日水曜日
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