福島のニュース
アースフィルダム耐震性検証を 現基準満たさず決壊も
 | 東日本大震災の地震で決壊した藤沼ダム=昨年3月22日、須賀川市(福島県農林水産部提供) |
|
|
福島県内のアースフィルダムと呼ばれる農業用ダム(堤高15メートル以上)のうち、ダムの設計基準が設けられた1957年以前に建設されたダムの8割が東日本大震災で被災し、堤体損傷も大きかったことが、東北大大学院工学研究科の風間聡教授(水工学)らのグループの調査で分かった。土を盛って堤体を造るアースフィル型農業用ダムは古くから各地に整備されており、風間教授は耐震性の検証を急ぐよう求めている。
今回の震災では、アースフィル型の藤沼ダム(須賀川市)が震度6強の強い揺れで決壊。流出した水は流域の木々を巻き込んで、下流域の家屋を破壊し、死者、行方不明者は8人に上った。 研究グループは東北大のほか、福島大、静岡大などで構成。昨年4月からことし3月にかけ、福島県内のアースフィルダムのうち22カ所を現地調査し、被災の度合いや震度との関係性を調べた。 その結果、57年以前に完成した11カ所のうち、決壊した藤沼ダムを含む9カ所で堤体外側ののり面が滑り落ちる被害が確認され、堤体上面にも段差が生じていた。 被災ダムは13カ所に上り、震度6弱〜6強に見舞われた阿武隈高地と中通り南部に集中していた。特に中通り南部の地質は岩石化しておらず、ダムの地盤も弱かった。 農業用ダムやため池は全国に約20万カ所あり、建設された時期が古く現在の耐震基準を満たしていないものも多く含まれている。 風間教授は「改修が必要だが、管理主体の行政や土地改良区は財源が乏しく、決壊に備えたハザードマップも作成していない」と指摘する。 藤沼ダムは揺れによって堤体上部が滑り、水が越流して堤体を浸食。地震発生から下流域の集落に濁流が到達するまで10分程度しかなかった。 風間教授は「ダムの下流域には集落や農地が集中するので、貯水量100万トン以上のダムは早期の耐震検証が必要。当面対策が取れない場合は、決壊の危険性を知らせる警報システムを整えるべきだ」と強調する。
[アースフィルダム] ダムは堤体の構造別にコンクリートダム、土や岩石を材料とするフィルダムなどがある。アースフィル型は土を台形状に盛って造り、戦前から農業用ため池などに用いられてきた。国によると、アースフィル型の藤沼ダムを含む堤高15メートル以上の農業用ダムは全国に約1700カ所ある。
2012年07月05日木曜日
|
|