70歳まで働き続ける高齢者のつらい現実

 京畿道・坪村で紙資源ごみを集めて売ることで生計を立てているキム・チョルスンさん(71・仮名)は最近、毎日の仕事がつらい。蒸し暑さの中で、足が震えるほど歩き回っても、1日に稼げるのは1万ウォン(約700円)程度。運が悪いときは、リサイクル業者からお金をもらえないこともある。昨年から右のひざの状態が良くないというキムさんは「いつまで働けるか分からない」と不安な心境を語った。

 韓国にはキムさんのように、高齢でも仕事を辞められずにいる人たちが多い。経済協力開発機構(OECD)の調査によると、韓国の実質退職年齢は、男性で70歳を超える。老後もやりたい仕事を続けて、充実した人生を送るといった優雅な話ではない。70歳になって初めて、生活費を稼ぐための仕事から解放されるという意味だ。韓国はOECD加盟国のうち、メキシコに次いで2番目に実質退職年齢が高い。欧米では60代半ばが一般的だ。職場を早い時期に追い出された後、さらに10年以上働き続けなければならないというのが、韓国で家庭を支える一般的な男性の現実だ。

■引退が70歳を超える理由

 韓国では「サオジョン(四五定=45歳定年、沙悟浄の韓国語と同音)」「オリュクト(56歳まで職場にいれば給料泥棒、釜山の五六島と同音)」といった流行語が生まれるほど早期退職の圧力が強い。1990年代後半の通貨危機以降、10年以上続いている現象だ。統計庁のデータによると、韓国人が「一生のうちで最も長く勤めた職場を離れる年齢」は平均53歳(男性55歳)で、一般的な感覚で考える引退年齢と大差ない。

 しかし、OECDの調査で韓国人の実質退職年齢が70歳だというデータが示されたはなぜか。結論から言えば、OECDがいう退職年齢とは、会社員や個人事業者が長期にわたり定職として勤める職場を意味するわけではない。どのような形であれ、金銭を受け取って働いている限りは退職者ではない、というのがOECDの分析基準だ。

 先に登場したキムさんのように、1日働いても1万ウォンしか稼げない人も、OECDの基準ではまだ引退していないことになる。企画財政部(省に相当)のキム・ボムソク人的資源政策課長は「職場を退職すれば、人々は自分が引退したと考えるが、実際は退職者の大半が起業したり、報酬が少ないほかの職場を探す。実際の引退とは、そうした職場も全て辞める時点と考えるべきだ」と述べた。

キム・テグン記者
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