第50話『粒子制御(ハドロンコントロール)』
垣根帝督が襲撃者を迎撃、殲滅した翌日の朝。
着崩した学生服(長点上機学園の制服)に身を包んだ少年、垣根帝督。
登校中の彼の数十メートル先に見覚えのある人間が四人、横に並んで話しながら歩いている。
そのうち三人は女子で一人は男子だ。
三人の女子生徒は元気が無いのか姿勢が少し悪い。
男子生徒だけは楽しそうに喋っていた。
読者の皆様には誰が誰だか分かっただろうか?
垣根は歩く速度を落とす。前を歩く四人から距離をとり、気づかれないようにするためだ。
垣根の前を歩く四人の中学生。
高町なのは、八神はやて、フェイト・T・ハラオウン、海原光貴。
昨日彼女達は海原と共に任務を行い、そして今日、偶然三人で登校中に合流した。
そして道中に海原光貴と鉢合わせした。
なのはとはやてとフェイトは海原光貴に対してあまり良い印象は無かった。
むしろ苦手に思っている。
しかし海原はそれには全く気づいていない。
海原光貴も善人ではないが根っからの悪人でもない。そして彼女達は善人故に彼を無下に邪険にできずにいた。
要するにジレンマである。
そんな四人に絶対関わりたくはない垣根帝督はとばっちりを避けるべく少しずつ離れていく。
だがこの時垣根には運というものが無かった。
フェイトが何気なく後ろに目を向けたのだ。
垣根とフェイトの目が一瞬だけ合う。
フェイトは念話で必死に助けを求める。
後で気づいたなのはとはやても念話で呼び掛ける。
(垣根、お願い助けて!)
(垣根くーん!私達を助けて〜!!)
(もうウンザリや!帝督くん、何とかして〜な〜!)
が、垣根帝督は聞こえないフリをして無視した。
そしてさらに距離をとる。
彼女達は失念していた。
垣根帝督はなのは達のような善人ではない。それどころか彼は悪党である。
そんな彼が自分の身を危険に曝して彼女達を助ける訳が無いのだ。
(ちょ、なんで何も言ってくれへんの!?)
(なんでどんどん私達から離れるの!?)
(私達を見捨てないでよ垣根くん!!(泣))
念話による叫びも虚しく、何の躊躇いも無く垣根に見捨てられた。
そして教室にて。
「それじゃなのは、フェイト、はやて、また後でね(ニコッ)」
「「「(…やっと着いた……)」」」
精神的に虫の息のなのは達。
「おはよう……って、大丈夫?アンタ達」
「なのはちゃん、フェイトちゃん、はやてちゃん、何かあったの?」
いつものように三人に声をかけたのはアリサ・バニングスと月村すずか。
「……"アイツ"や…」
「「あ、なるほど」」
原因がわかり、納得する二人。
三人に少し遅れて教室に垣根帝督が入ってきた。
「よお、三人とも朝からお疲れさん」
彼は半笑いで労いの言葉を言う。
毛ほども同情していないのが分かる。
その瞬間、漫画のような涙目ではやてとなのは、フェイトが垣根に食ってかかる。
「帝督くん!なんで私らを見捨てたんや!!」
「私達昨日から辛かったんだよっ!?」
「助けてって(念話で)言ったのになんで無視したの!?」
はやて、フェイト、なのはの順にそれぞれ思い思いに不満を垣根に不満をほざく。
「いや、とばっちりは御免だし」
「でも無視はないんじゃない?」
すずかが苦笑いで言う。
「そ〜だよ!酷いよ酷いよ〜!!」
なのはは漫画のような涙目で垣根の両肩を掴み、ガクガクと揺する。
「なッ!?ちょ、高町!揺すんじゃねえよ!やめ、…首がッ!!頭が……っ!わ、分かった!無視したお詫びにお前らの言うこと聞いてやるから!」
間接的に脳を揺すられ垣根は目を回した。
「ホント!?」
それを聞いたなのははパッと笑顔になり手を止めた。
「ほんまやろな!?」
「嘘じゃないよね!?」
彼の言葉に食いつくはやてとフェイト。
「ああ、嘘じゃねえよ」
垣根は心の中でほくそ笑む。
(本当に"聞く"だけだけどな)
……そしてなんだかんだで授業が終わり、放課後に。
垣根帝督の周りになのは、フェイト、はやてがいる。
「さて、何してもらおかな〜」
「何でも良いぜ、何でも聞いてやる。聞くだけな」
「…………ちょっと待って。何でも言う通りにしてくれるんだよね?」
感づいたのか、フェイトが問う。
「いんや。聞くだけだ」
「………………………………それって、要するに、本当に聞くだけ………?」
なのはも気づいたようだ。
「……なんやそれ!!ずるいで帝督くんッ!!私らを嵌めよったな!?」
「ばーか、ちゃんと言葉の意味を確認しないお前らが悪い」
「嘘ついたの!?」
フェイトが問いただす。
だが垣根は飄々としている。
「人聞きが悪いな、俺は別に"嘘は"ついて無いぜ☆」
「狡いよ垣根くん!!」
垣根は彼女達を無視して教室の窓を開けて足をかける。
「ちょ、何してんねん!ここ三階やで!!」
はやてがそう言い終わる前に垣根は窓から飛び降りた。
「あーばよッ!」
彼はキレイに着地して走り去った。
唖然としている三人にアリサが呆れたように口を開く。
「馬鹿ね、あの垣根が素直にアンタ達の言うこと聞いてくれる訳無いでしょ」
ガッカリした様子にすずかが慰める。
「さ、三人とも、元気出して。きっと良いことあるよ」
所変わって、喫茶店。
垣根帝督はテラスに座り、彼の所属する『スクール』の制御役、"電話の男"と通話していた。
「粒子制御の潜伏場所が分かったってのは本当か?」
『はい、上層部からの確定情報です。送られたデータに記されているポイントに向かってください。敵は必ず"殲滅"するように』
「はいよ」
垣根は電話を切り、立ち上がる。
「さーて、いつものクソッタレな仕事の始まりだ」
彼は小さく呟きながら歩きはじめた。
とある近郊の商業用ビル。
外装はそうだが、実はマフィアの事務所となっている。
そのビルの中から引っ切り無しに轟音が響いている。
中で戦闘が起きているのだ。
だがビル周辺は『スクール』の下部組織によって封鎖され、情報が外部に漏れることはない。
瓦礫だらけになりめちゃくちゃになった内装。
そこに立っているのは二人の少年だった。
ビルの所有者であるマフィアは既に全滅していた。
『粒子制御』の少年が右手を前にかざしてハドロン砲を撃つ。
垣根帝督は『未元物質』背中から生えた六枚の白い翼を振るい、粒子拡散を行って相殺する。
「テメェの能力はギリギリ大能力者(レベル4)ってとこだろ。この世界に存在する素粒子の一つである『ハドロン』のみしか操作出来ないんだからな」
「うるせー!!俺の商売の邪魔ばっかしやがって、これでも食らえ!!」
『粒子制御』はヘッドホンのような物をつけ、手に持っているスイッチを押す。
「ッッ!!これは……!」
垣根帝督の頭に響くジリジリとした痛み。
AIMジャマー。
「威力の高いやつは機材が馬鹿みたいにデカイが、ここなら問題ねえ!」
さらに彼は続ける。
「最初から第二位の超能力者(レベル5)相手にまともに相対できるとは思ってねえよ。だが肝心の能力が使えなきゃお前はただの人間だ」
勝ち誇るように笑い、顔をしかめる垣根帝督にハドロン砲を撃とうとする。
ダァンッ!!
『粒子制御』の右肩に風穴が空いた。
「ぐあっ!?」
彼が前を見ると、左手で頭を抑えながら垣根帝督が小型の自動拳銃を構えていた。
「…別に俺は能力にかまけてた訳じゃねえ。"こういう状況"も想定してるんだよ」
「…くっ……!」
『粒子制御』は右肩を血で赤く染めながら、忌ま忌ましそうに垣根を睨みつける。
「それに何も『スクール』は俺一人って訳じゃないしな」
ガァンッ!!ガァンッ!!
遠距離からスタンバイしていた金丸が『手腕砲』をぶっ放す。
AIMジャマーの機材が砲撃によって損傷し、機能を失う。
別のポイントで構えていた『スクール』所属のスナイパーが『粒子制御』の両足を狙撃する。
「ッッ!!ぐああああああああああッッ!!」
彼は仰向けに倒れる。
そこに垣根が近づき右手に持つ自動拳銃を向ける。
「や、やめろ。やめてくれ!降参だ!抵抗はしないから命だけは見逃してくれ!!頼む!!」
「悪いな、上層部からの命令で敵は殲滅しろって言われてんだ」
『粒子制御』の喉が干上がる。
ハドロンを集めて防護壁を作ろうとしたが遅かった。
「あばよ、三下」
ダァンッ!!ダァンッ!!
垣根帝督は『電話の男』や下部組織らに連絡し、この場を去った。
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