第52話『高町家』
仕事が終わり、気分転換にと、とある喫茶店『翠屋』に寄った垣根帝督。
彼はここのコーヒーを気に入り、最近通うようになった。
ここのコーヒーの味は缶コーヒーの比ではない。と、垣根は思っている。
「ただいま〜。あ、垣根くん、来てたんだ」
お使いの帰りなのか、買い物袋を持った高町なのはがカウンター席に座る垣根に笑顔で近づく。
「よお、高町。店の手伝いか?」
「うん。お母さんに頼まれてお使いに行ってきたところ♪」
(随分と嬉しそうに話すな。そんなにパシられるのが好きなのか?コイツ)
垣根が見当違いな思考をしていると、丸いレンズの眼鏡をかけた女性が近づいてきた。
「…君がなのはが言ってた垣根くん?」
「誰だアンタ」
「あ、初めまして。なのはの姉の高町美由希です♪」
「そりゃご丁寧にどうも。垣根帝督です」
挨拶を交わす二人。
「それにしても、『帝督』ってちょっと変わった名前だね」
美由希が無神経な事を言う。
「ちょっ、お姉ちゃん!失礼だよッ!!」
なのはが美由希を咎めるように言った。
だが当の本人である垣根は飄々ととしていた。
「まあ、自覚はあります」
「ごめんね垣根くん、お姉ちゃんが変なこと言って…」
なのはが代わりに謝る。
「気にしねえよ」
垣根は軽く流した。
「……なんだ、やはり君が垣根君なんじゃないか
高町士郎は苦笑しながらカウンター越しに垣根帝督に話しかけた。
「あ」
固まる垣根。
「え?どういうこと?」
なのはは首を傾げた。
「…実は以前、彼がここに来たときになのはがよく話していた男の子によく似た……つまり君が来たときに名前を確認したんだが、人違いだと言われてね」
「ええ!?垣根くんなんで嘘ついたの?」
眉をひそめてなのはが垣根に問う。
「………魔がさした」
「嘘でしょ」
適当なことを言う垣根につっこむ美由希。
「……本音を言うとな、何となく嫌な予感がしたからだ」
「本当に?」
なのはがジト目で彼を見つめる。
「本当だ」
垣根は面倒臭そうに答える。
士郎はそんな垣根となのは達のやり取りを見て微笑む。
そして、小さく呟いた。
「こうして見てると、普通の中学生にしか見えないな……」
士郎は誰にも聞こえないような声で呟いたつもりだったが、垣根帝督には聞こえていたようだ。
垣根は高町士郎の呟きを耳にした瞬間、鬼のような形相でなのはを睨みつけ、右手で彼女の頭をガッチリと掴んだ。
「たぁぁぁかぁぁぁぁ町ぃぃぃぃくうぅぅぅぅん!!」
「にゃああああッ!?」
状況が分からず狼狽するなのは。
「テメェ、あん時他言無用だって言っといたのにナニアッサリと自分の家族にしゃべってんだコラ」
垣根は彼女の頭を掴んだ手にさらに力を入れる。
「痛い痛い!!ゴメン、垣根くん!…でもお父さん達ならむやみに他人に喋ったりしないから……」
「……そうか…」
彼はジト目でなのはを睨みつつ、手を放した。
「うう(泣)」
なのはは涙目で解放された頭をさする。
「ひどいよ垣根くん!思いっきり頭を締め上げるなんて!!」
「自業自得だ、約束破ったお前が悪い。」
「いや、それにしても親の目の前で娘の頭を締め上げるのはな……」
顔を引き攣らせ、苦笑いの士郎。
だが垣根帝督は当然と言わんばかりに反省のはの字も無い。
だが、こんなやりとりができるのはお互いに心を許しているからこそできるのだろう。
「……さて、もう夕方だし、もう帰るか。会計頼みます」
「ああ」
垣根は立ち上がり、会計を済まして帰ろうとする。
「あ、待って!…その、夕飯はいつもどうしてるの?」
「はあ?別に、コンビニ弁当とかで済ますけど。それがどうした?」
彼はなのはの問いによく分からないという調子で答えた。
「……えっとね、…その、よ、よかったら………うちで…////」
緊張と羞恥心で言葉がうまく出てこない。
「よかったらうちで夕飯食べていかないかしら?」
不意になのはの背後に現れた女性。
士郎と同じく年不相応な若々しい容姿。
なのはの母、高町桃子。
「……まさかとは思うが…」
「なのはの母の高町桃子よ。よろしくね、帝督くん♪」
桃子はそう言いながら柔和に微笑む。
垣根帝督は目を見開き、なのはに言った。
「お前の両親、ホントに四十代か?アンチエイジングとか若作りとかのレベル逸脱した若々しさじゃねえか…」
「あら、嬉しいこと言ってくれるわね♪」
「にゃははははは……」
喜ぶ桃子と苦笑するなのは。
「…帰るか」
「まあ待て、折角だから食べていきな。君には色々聞きたいこともあるし」
帰ろうとした垣根の肩を軽く掴んで引き留めた、士郎に似た風貌の青年。
高町恭也。
結局、夕飯を御馳走になることになった垣根帝督だった。
後半へ続く(キ●トン山田風)
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