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なのはVSフェイト


――――この状況までの流れ


フェイト捕獲作戦の会議中になのはがフェイトと戦いたいと発言。

クロノがまさかのOK

アルフがフェイトに一騎打ちの日程と場所を教える。

ロゥがフェイトにこっそり会っていたのがリンディさんに知られ怒られる。

現在に至る。




――――ロゥ


なのは、フェイトはロゥの海上に張られた広域結界の中、先刻から黙したまま見つめ合っている。

その間合いはフェイトの近接攻撃の踏み込みに遠く、なのはの射撃攻撃にはやや近い。互いに得意な間合いから外れた、スタートには公平な間合い。


「……二人ともまじめだね~」


正々堂々とした二人のあり方にロゥの口からそんな言葉がこぼれる。


そして、申し合わせたわけでもなく、不意に二人が同時に魔法陣を展開する。

小型の魔法陣。詠唱不要の高速起動魔法。


「ディバイン!」〈ディバインシューター〉

「ランサー、セット!」〈フォトンランサー〉


なのはの周囲に桜色の五個の光球が、フェイトの周囲に雷光を纏う四個の光球が一斉に発生する。


「シュートッ!」

「ファイアッ!」


それぞれの魔法が放たれ二人の決戦が始まった。


…………。……


そしてロゥは結界内にいる者の意識を読み取る。

それは能力の類でなく、事前に知りえた情報、動きの変化、ff(フォルテシモ)から送られてくる魔法の解析データにもとづいた単なる予想。

――純粋にフェイトと友達に、悲しみを分け合うために羽ばたくなのは

――母親となのはの間で揺れ動くフェイト

――主人を守り、襲い来る痛みを退け、その手に勝利と喜びを与えたいと、使命感とも言える強い思いを宿した従者(デバイス)たち


「フォルテ、空間中の魔力動、術式の解析および一般魔道師とそれらを照らし合わせ誤差率の測定を頼む」〈…………〉


ffが指示された情報をロゥに送ってくる。

返事がないのは修理の途中で引っ張り出したからへそでも曲げたのだろうか?

そんなロゥを後目に戦いは進む。


…………。……


高速飛翔するフェイトのフォトンランサーと不規則に揺れながら弧を描いて飛ぶなのはのディバインシューター。

並みの魔道師であればたやすく防御を打ち抜き、一撃必倒の威力を持つそれらが撃ち放たれ飛翔する。

なのははそれをわずかに横にずれて回避する。

フォトンランサーは直線飛翔しかしないからその回避は正解だ。なのはの防御が頑丈でもガードをするとその分魔力が削られる。どんなに莫大な魔力容量でも節約するに越したことはない。

そして、なのはは次の攻撃へ入る。


対するフェイトは襲い来るなのはの回避したが、


「ッ!」


なのはの誘導制御弾がフェイトを捉えようとその後を追う。

射出された五個のシューターのうち、三個が鋭い軌道で迫る。


「バルディッシュ!」〈ハーケンフォーム〉


フェイトはバルディッシュを鎌状に変形させそれらを切り裂く。

不規則に揺れるそれらを的確に切り落とせるのは経験のたまものか。

だが、不意に四つ目のシューターが現れる。

フェイトはそれも切り落とそうとするが、


「………!」


不意を突くように真下から五つ目のシューターがフェイトを襲う。

フェイトがなのはを見ると思念制御を行っているのが見えた。

思念制御されたシューターは今までの自動追尾と違い、まるで生き物のようにフェイトに迫る。

危険、しかし好機でもある。

制御に集中しているなのはは隙だらけだ。

フェイトは防御を捨て前に出る。

正面のシューターを紙一重でかわし、


〈ソニックムーブ〉


下から迫りくるシューターはフェイトの金色の軌跡を残すほどの加速のもとに外れる。

フェイトはそのままバルディッシュを振り上げる。


――なのはにDoubt(ダウト)


フェイトがバルディッシュを振り上げた瞬間、なのはの背後から六つ目のシューターがフェイトに襲いかかる。

この戦闘を見ていた者のほとんどがこの隙を突いた攻撃が当たると確信した。

しかし、歴戦の戦士はこれに動じない。


「バルディッシュ!」〈アークセイバー〉


バルディッシュの光刃が放たれ、ブーメランのように回転しながらシューターを切り裂きなのはに迫る。

なのはが咄嗟に防御に入る。

なのはのシールドから魔力がみるみる削られて行く。


〈ブラスト〉


光刃が爆散する。

金色の爆煙がなのはの視界を奪う。

フェイトはここからシールドを抜いての直接攻撃でなのはを落とすつもりなのだろう。


しかし、それではダメだ。


「……ディバイン」〈ディバインバスター〉


フェイトが異変に気付きすぐにシールドを張る。


「バスターッ!」


爆煙の中からなのはの砲撃が放たれる。

フェイトの防御がギリギリ間に合うが、防御の上から凄まじい勢いで魔力を削られている。

しっかりと編み上げられたなのはの砲撃は反則的な貫通能力がある。アレは魔力を削るのではなく『えぐる』のだ。


「――ぁぁぁあああ!」


フェイトがシールドの出力を全開にし、かろうじてバスターの軌道をそらす。

軌道のそれたバスターは空を覆う厚い雲に大穴をあけた。


…………。……


「…………なんでやねん」


とりあえずつっこんでみた。

空に穴をあけるってどんな魔力ですか!? なのはって実はどこぞの最終兵器だったりするのでしょうか?

こんな魔法戦闘のためだけに生まれて来たような奴が、ただの一般家庭から生まれてきたことがにわかに信じられない。

フェイトは今の一撃で完全に本気になったらしく、先程よりも攻撃が鋭くなっている。

対するなのははフェイトの攻撃範囲から離脱しながら射撃魔法で牽制するといった感じだ。


しかし、ぶっちゃけると戦闘が単調で暇だ。

だから、心配そうに二人の戦闘を眺める使い魔二人に話しかけることにした。


『心配かな?』


突然の念話に二人は驚いたようだが、アルフがぶっきらぼうに答えた。


『あたりまえじゃんか……めちゃくちゃ心配だよ』

『……ぼくもだ』

『まぁ、二人とも思うところがあったようだからこの戦いは避けられなかったんじゃないかな。それはそれとして、どっちが勝つか賭けない? 負けたら罰ゲーム』


オレの発言にアルフとユーノは呆れた風に返してくる。


『フェイトが勝つのは当然だけど……今はあの子たちのやりたいようにやらせてあげたいよ』

『なのははこの後も戦うかもしれないから、あまり無理しないでほしいな。勝つけど……』

『…………』


なぜだろう、念話越しに二人が睨みあっているのがわかる。


『……フェイトが勝つ』

『いや、なのはだ』

『二人ともストップ。賭けはアルフちゃんがフェイトちゃんでユーノがなのはちゃんでいいね? ほら、なのはちゃんが何かやるみたいだよ』


…………。……


現在、なのはは徐々に追い詰められていた。

追いすがってくるフェイトを蛇行飛行で振り切ろうとするがまったく離れない。

それどころか、なのはの動きが読まれ始めていた。

なのはは自分の相棒に念話で話しかける。


『このままだとまずいね……なんだか動きが読まれてきてるし』

〈はい、そうですね〉


なのはの魔力はもう半分も残っていない。

フェイトも同様であってほしいが、消耗戦になれば不利なのは一撃の使用魔力の大きいなのはの方だ。


『アレはまだ使わないとして、一勝負しようと思うんだけどどうかな? レイジングハート』

〈そうしましょう、マスター〉


なのはは急停止し大型魔法陣を展開しながらフェイトに向き直る。

なのはの作戦はこうだ。

フェイトとなのはが砲撃を撃ち合えばなのはが勝つ。フェイトが回避に回っても、遠くに行けばいくほど魔力が拡散し威力が弱まるが、攻撃範囲が広がっていくので避けられることはまずないだろう。

つまりフェイトには近接戦の選択肢しかない。

しかしそれをバリアで受け、カウンターで砲撃を返せば大ダメージを与えることが出来る。


ところがフェイトはその場に留まりなのはと同様に大型魔法陣を展開する。


『れ、レイジングハート、どうしよう?』

〈撃ちましょう〉

『だよね!』


なのははここぞとばかりに魔力を注ぎ込む。


「ディバイン――」〈ディバインバスター・フルバースト〉


しかし発動はフェイトの方が早かった。


「サンダー――」〈サンダーレイジ〉


空を覆う雲が雷轟を響かせる。


「レイジー!」


自然では決してあり得ない極太の落雷がなのはに落ちる。

なのはに落ちるそれをレイジングハートがシールドではじくが、余波がなのはのバリアジャケットを焦がす。


「っ! あつ、熱い! 痛い! けど……バスター!!!」



――――アルフ


「…………なぁ、あんたのご主人様って人間?」

「あはは……ってぼくは使い魔じゃない!」

「え? 使い魔じゃないの? ネズミ素体の」

「ぼくは人間だし変身形態もネズミじゃなくてフェレットだから!」

「あれま」


アルフは戦ってるなのはを見る。

そこには落雷に撃たれながら花のように拡散する砲撃を放つなのはがいた。



――――ロゥ


「フォルテ、二人の使用魔力量と過去から割り出した予想最大魔力量との割合から二人の魔力残量を割り出せ」

〈…………〉

「およそ一割以下か……次の戦闘で終わるな」


見上げるとなのは、フェイトともに大魔法のために魔力を練り上げていた。


「Doubt 2. なのはのは攻性じゃない……何をするかわからないが、半端なことをするとフェイトのアレに確実に落とされるぜ」


フェイトのあの術式は一度見ている。

 フォトンランサー・ファランクスシフト

貫通性の極めて高い射撃魔法を秒間七発放つ大型発射体が三八個。これから四秒間にかけて攻撃が放たれる。

 4×7×38=1064

四秒間に一〇六四発のフォトンランサーが放たれる大魔法。

回避しようがシールドを張ろうが、数多の弾丸が対象を捉えシールドを削り、落とす。

単純にして強力な魔法。

なのはの残りの魔力を全て使えばかろうじて防げるだろうが、それだと互いに魔法なしの近接バトルになる。

そうなれば勝つのはフェイトだろうし、大魔法を撃ち合うには時間が足りない。

なのはには切り札があったようだが、完全に詰みだった。

回避するというわずかな選択肢もあったがバインドで捕らえられた時点で消えている。


「……一撃必殺」

「必殺!」


フェイトの不吉なつぶやきになのはが暴れだす。


「ちゃんと非殺傷設定にしてあるから、安心して……」

「無理! 安心とかぜったい無理!」


非殺傷だって打撲くらいできるし痛い、大魔法であればなおさらだろう。


「フォトンランサー・ファランクスシフト――」〈フォトンランサー・ファランクスシフト〉


フェイトがバルディッシュを掲げ、振り下ろす。

なのはが残りの魔力を全て使いシールドを展開する。


「ファイアッ!」


一〇六四発のフォトンランサーがなのはを襲う。

先刻と同じようになのはが金色の爆煙に包まれる。

フェイトが撃ち損ねた数個のフォトンランサーを一纏めにし、一撃分の魔力球を精製する。

魔力を最後の一滴まで使いなのはを落とすつもりのようだ。

ロゥはボートの上で立ち上がる。


「フォルテ、なのはが落ち次第フェイトを捕らえる。オレのバリアジャケットを……や、待て! ……指示変更、すぐに結界内の魔力密度及びその流れを解析しろ」

〈…………〉


フォルテから指示した情報が流れ込んでくる。


「……ク、ククッ! マジかよ。ここまでチートだと妬む気も失せる」


ロゥはつり上がる口元を手で押さえながらそんなことをつぶやいた。



――――フェイト


フェイトは撃ち残したフォトンランサーを一纏めにしてとどめの一撃を放とうとする。

すでに魔力は底をついた。今飛んでいるのが不思議なくらいだ。

意識は途切れぎみに、あたりはぼやける。

フェイトはおぼろげな意識の中、最後の一撃を放つため右手を掲げ――


――その手が虚空に縫いつけられた。


「?」


フェイトが視線を上げると桜色のバインドに捕らえられた自分の右手が見える。


「……助けてあげようなんて思ってるわけじゃない」


ゆっくりと晴れていく金色の爆煙の中から声が響く。


「ただ、分け合いたいんだ」


現れたのはあちこち焼け焦げた女の子。


「楽しいことも、悲しいこともぜんぶ……全部分け合いたいから」


大型魔法陣を展開した少女がまっすぐ私を見つめている。


 「友達になりたいから!」


その言葉は朦朧としたフェイトの意識の中に、不思議と染み渡った。


「スターライト――」〈スターライトブレイカー〉


結界内に溢れたフェイトとなのはの魔力がレイジングハートの先端に集束し、直径一メートルを超える魔砲弾が形成される。


「――ブレイカーッ!」


フェイトは放たれた桜色と金色の奔流に呑まれ、意識を手放した。




――――ロゥ


「集束砲。空間中に溢れたあらゆる魔力を自身の魔力でからめ捕り集束、射出する高等砲撃魔法。集束の技術さえ優れていれば自らの最大魔力値を遥かに超えた砲撃も可能になる特殊な魔法」


ロゥは言う。


「Wonderful(素晴らしい)」




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