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フェイトVSロゥ
――――なのは


ユーノくんに結界内に転送してもらった。

わたしはいま、ものすごい勢いで落ちている。

だけど、少しも怖くない。

ユーノくんがわたしのためにリンディさんやロゥくんとの約束を破ってくれた。

きっと私がうまくやるって信じてくれてる。

もう、後戻りできない。


「……いくよ、レイジングハート」


――ユーノくんのため


「風は空に!」


――フェイトちゃんのために


「星は天に!」


――そして何より


「輝く光はこの腕に!」


――わたし自身が進むために!


「不屈の心はこの胸に!」


わたし、高町なのはは飛びます!


「レイジングハート! セットアップ!!!」




――――ロゥ


ロゥが到着するとそこは五本の竜巻が稲妻をまき散らすというデッドゾーンを形成していた。

その中で、ユーノとアルフが協力して竜巻の核のジュエルシードを抑え、なのはとフェイトがいままさに封印魔法を使おうとしていた。


「……オレは手を出さない方がいいな。『ffフォルテシモ』が無い状態じゃ足手まといになりかねない」


それよりも、なんでなのはとフェイトが何で協力してるんだ? 二人は敵対してたはずなのに。

ロゥがそんなことを考えているうちに二人はジュエルシード五つを同時に封印してしまった。

……貼り合うのが虚しくなる才能だな。ほんと、妬ましい。


「ま、それはおいといて……ブースト」


オレは魔法で身体能力を強化し一気に飛び上がりなのはの首に腕をかけた。


「な~の~は~ちゃ~ん。キミは一体な~にをやっているのかなー?」

「ふぇ!? ろ、ロゥくん?」


なのはが予想通り驚き身構える。また怒られると思っているのだろう。


「はぁ、フラグ立たねーな…………なのは、怒る気はねーから正直に答えろ。……後悔してるか?」


かなり唐突だと思う。はたから聞いてる奴は今の会話がまったく理解できないだろう。てか、唐突過ぎてなのはまでわかんないかも。

しかしなのはは理解してくれたらしく、しばらく考えた後にこう答えた。


「…………てない。後悔してないよ」


強い意志の灯った眼差しでオレを見ながら宣言する。

その解答には満足だけど正直、こうゆう目は苦手です。なぜならひがみやの自分がひどく小さな存在だと実感させられるから。

なのでオレは話の矛先をフェイトに向ける。


「で、フェイトちゃん。これが最終警告になるけどジュエルシード渡して投降してくれないかな?」

「悪いけど断らせてもらうよ」


こっちはオレの質問を予想していたようで即座に拒否ってきた。

まぁ、ジュエルシードを封印するたびに同じ質問されてちゃ予想もつくよな。

ヤバ、今の会話でオレが管理局に内緒でフェイトに会ってたのばれたかも。


「……リンディさん怒ると怖いんだよなー。そうゆわけで、捕まってオレの手柄になって少しでもリンディさんの怒りを鎮める材料になってね♪」

「今日は見逃してくれないみたいだね……バルディッシュ!」


フェイトはバルディッシュを釜に変形させ、それをロゥに突きつける。


「あぁ、Time limit(時間切れ)だよ。バグ――発動」


ロゥもポケットに両手を納めフェイトに向き直る。


「え? ロゥくん? フェイトちゃん?」


なのはが面白いぐらい混乱している。

オレはそれを黙殺して無言で結界を張る。結界内の魔法の発動を困難にさせる『ハウル』の付加効果付きだ。

結界内にハウル独特の遠吠えを思わせる歪な音階が響き渡る。


「……くっ」

「意外と厄介なものでしょう? 微弱な魔力波を結界内で乱反射させると術式の脆いところから崩れだすんだよね。だから枯渇内では絶えず術式を成型しなければならないんだ」


フェイトは安定した飛行が出来ず、バルディッシュは刃が揺らいでいる。


「実はボク本人にも効果のある魔法なんだけど、こんな状況下で戦うの慣れてるし。ほら、この世界のことわざで『肉を切って骨を断つ』っていうじゃない? アレだよ。……それじゃ、降参してくれないかな?」


そう言ってオレはフェイトの目の前まで足場を形成しゆっくりと歩いて近づいて行く。

本当は近接戦クロスレンジはあまり得意じゃないが、人の心理的に自分が迎え撃つ準備が整っていないときに脅威がゆっくりと近づいてくると一旦距離をとって体勢を整えようとするのだ。

フェイトはまさにその行動をとる。

多分すぐに距離を詰められないようにだろうが、結界ギリギリまで距離をとる。


「そんなに距離とってもいいのかな? 捕らえろ、フライングバインド」


ロゥの周りに、魔喰領域内一杯に小さな紫色の輪が現れる。

そして膜を突き破るように無数のバインドががフェイトに向かって飛翔する。

しかし、フェイトもただ黙ってロゥの攻撃を待っていたわけじゃない。

ロゥのバインドが射出された時には、フェイトのフォトンランサーもすでに放てるようになっていた。


「フォトンランサー・ファランクスシフト――はあぁぁぁぁぁぁぁあ!」


ロゥに向かって雷を纏った魔力球が飛来する。

気付けばロゥはバインドで拘束されていた。


「しまった……バインドにに気をまわしすぎた。バインドと合い撃ちになってくれたら楽なんだけど……」


バインドとフォトンランサーの群れは空中で激突するかと思われたが――


「フライングバインドに自動回避プログラムあるからなー」


バインドのほとんどがフォトンランサーを回避してフェイトに向かって飛んで行った。

必然的にフォトンランサーはロゥに向かって飛来する。

ロゥバリアジャケットは防御力がほとんどないので直撃=死亡である。


「自殺願望は……ありません。『Dispell(解呪)』


ロゥは自分を拘束するバインドを解除し再び両手をポケットに納めバグを発動、シールドを前面に展開する。


――衝撃


マシンガンの一斉掃射を喰らったかのような激しい衝撃がロゥを襲う。

立ちこめる煙。

ロゥは煙が晴れる前に転移魔法を構築、発動させフライングバインドの大群から逃げ惑うフェイトの眼前に転移する。


「え?」


オレは驚くフェイトに軽く当て身を喰らわせバインドの軍団に突き落とす。

すぐさまフライングバインドがフェイトを捕らえがんじがらめにし、芋虫的なフェイトが出来上がった。


「ごめんね、フェイトちゃん」


ロゥ・アイアスはフェイト・テスタロッサを捕らえた。




――――ロゥ


ロゥがそれに気付いたのは自分の結界に僅かな揺らぎを感じたからだ。

だが、気付くのが遅かった。遅すぎた。


「ぁぁぁぁぁぁああああああ!!!」

「ぐっ!?」


それは、ロゥの堅牢な結界を打ち抜きフェイトに直撃した。

防御力の無いバリアジャケットを身につけているロゥはその余波だけで意識を刈り取られた。



――――翌日


目の前にはなのは、アリサ、すずかの三人が和気あいあいとゲームに興じていた。

ここはアリサ・バニングの家、というより屋敷である。

なぜロゥが現地住民の家にいるかというと、リンディさんがフェイトを捕縛し損ねたことでオレが落ち込んでいるとなのはにチクったらしい。

結果、翌日の午後に唐突に現れたなのはに半ば誘拐されるように連れ去られ、待機していたリムジンに放り込まれて現在に至る。

まぁ、確かに落ち込んでいたけどさ。

ロゥの結界は込めらている魔力こそ少ないが、緻密に編み上げられた術式はそこいらの魔道師の砲撃程度ではびくともしない自負がある。

それを次元跳躍魔法なんていう高難易度の魔法で撃ち抜かれたのだ。

プライドがズタボロである。

それと同時にロゥはあの攻撃を放った魔道師に羨望の想いが湧きあがった。

次元跳躍魔法はロゥの得意分野である魔力の精密制御と効率運用、さらにロゥが持ちえない膨大な魔力容量が必要な魔法である。

――膨大な魔力容量がなくては魔法自体が発動しない。

――効率的に運用しなければ次元を渡る際に魔力を使い切ってしまう。

――精密制御出来なければフェイトのような小さな的に当てることなんかできない。

今思い出しても背筋が冷えるような感覚がある。とても興奮する。

全てに関して優秀。才能がありそれに溺れることなく自身を磨き続けた者のたどり着ける境地。

 プレシア・テスタロッサ

 あなたは一体ジュエルシードで何を求めるのですか?


「……ん、ロゥ……! ロゥくん!」

「……ん? 呼んだ?」


気付けば三人がオレの顔を覗き込んでいた。

少し呆れた表情をしている。


「……完全に聞いてなかったわね。ほら、アンタの番よ」


アリサがオレにコンピューター端末を差し出してくる。


「……アリサちゃん。ボク、こうゆうの結構強いよ?」

「望むところよ」


壁付近に置いてある画面に『魔法少女リリカルな○はA's THE BATTLE OF ACES』の文字が…………よし! 何も気にしない♪

オレは管理局の『白い悪魔』を選択する。アリサは『黒い執務官』を選んだ。

……数分後


「……なんでこのキャラクターの時だけ打撃技しか使わないのよ?」

「そいつが相手だとなんか本能的なモノによってね……」


戦果はアリサが執務官を使わないときのみ全勝した。


「……何か納得の出来ないものが……な、何見てるのよ?」

「や、後ろ、犬が……ぶくぶく太るわけでもなく、ストレスが溜まってるわけでもなく、適度な運動で程よく締まった肉……」

「健康状態を褒められてるのよね?」

「食用?」

「「「違う!!!」」」

「そう言えば外に一匹檻に入れられてたけど、あっちが食用?」

「犬は食べ物じゃない!!!」


アリサがロゥの視線から犬を庇うように動く。


「えー、食べないの? じゃあ何で一匹だけ檻に入れてるの? 狂犬病?」

「ちがう! あの子は昨日大怪我してて拾って来たの!」

「変わった食材の調理は得意だけど……」

「だから食べない! それにあの子とっても珍しい犬種なのよ、オレンジの毛並みに額の所に宝石みたいのがついてて、きっと飼い主も探して――」

「ちょっと待った!」


オレはアリサに待ったをかける。

オレンジの毛並みに額に宝石?

オレの脳裏にフェイトの使い魔、アルフが浮かび上がる。

オレはなのはに視線を送る。


「アリサちゃん、そいつに会わせて……食べないから」

「……ダメ、信用できない」

「アリサちゃん、わたしからもお願い!」

「まぁ、見せるだけなら……本当に食べないわよね?」


アリサが念を押してくる。


「大丈夫だよ」

「……もう、なんでそんなに会いたいのよ?」

「うん、実は昨日愛犬のアルフと散歩してたんだけど、目を離した隙に逃げ出しちゃってね……」


オレは出来るだけ悲痛そうな顔を作る。もちろん嘘。

なのははアリサたちにオレの落ち込んでる理由を言っていないはずだから、こんなことを言えば愛犬がいなくなって落ち込んでいると騙されてくれるだろう。

結果、アリサは半ばオレを引きずるようにアルフのもとまで連れて行った。

嘘も方便♪


…………。……


『……という訳で、何があったか教えて』


オレはうずくまっていたアルフに念話を使い単刀直入に質問した。

アルフはオレをいぶかしむように睨んでくる。

フェイトを捕まえようとした張本人だ。当然だろう。


『ボクがここにいるということは管理局もキミを捕捉したということだよ? 今から管理局に協力的な姿勢を見せれば温情が与えられるかもよ? しかも使い魔は主と精神リンクしてるから、使い魔の行動は主の意思と捉えることもできる。フェイトちゃんのことを思うなら協力すべきじゃないかな?』


オレはアルフが協力するとフェイトの罪が軽くなるかもしれないということを示す。

それと同時に、アルフの行動次第ではフェイトの罪が重くなると暗示させる。


『…………わかったよ』


そういうとアルフはぽつりぽつりと今までのことやプレシアのフェイトに対する虐待のことを語った。


…………。……


「クロノ、これならフェイトは罪にならないよな?」


フェイトの過去を聞き終えたオレはクロノに確認をとる。

ちなみにオレは今、アルフを連れて帰るという名目でアリサ宅を後にした。アルフはリードを付けられ、リードの先はロゥが握っている。


『あぁ、今回みたいな事例ではまず間違いなく無罪だろう。彼女の話が本当であればだが……』

「アルフの今の発言を立証する証拠が必要か……証拠はオレとお前で集めればすぐだな。となれば後はフェイトとプレシアを捕縛出来れば解決だな」


事件解決のめどが立った。次にフェイトと遭遇することがあればそれは決戦となるだろう。

となれば、間違いなくプレシアと戦闘になるだろう。

オレがプレシアと戦闘を行うなら必ず『ffフォルテシモ』が必要になる。

まだ完全に修理が終わってないがすぐに使えるようにしておかなければならないだろう。


「……アルフちゃん、急用が出来たから走るよ」

「ちょ、ちょっと! 私は怪我したばっかなんだって!」

「なら運ぶ……よいしょ!」


アルフを担ぎそのまま運んで行った。

……アースラに着いた後におもいきり噛みつかれた。



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