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後日談

――――ロゥ


アレからの出来事、まず挙げるとしたらプレシア・テスタロッサのことだろう。

虚数空間から帰って来たプレシアさんはその場で血を吐き倒れた。

原因はフェイトを造る際に使用した薬品の毒素のためだった。 内臓の大部分が使いものにならなくなっていて、心臓などは虚数空間に落ちた時にはすでに止まっていたようだ。

そんな状態で虚数空間から脱出できたのはフェイトを想う親心のたまものか。


とりあえずプレシアさんは即座に医務室へ運ばれ緊急手術を行うことになった。

執刀医はオレことロゥ・アイアス。

行った手術はダメになった内臓を取り除いて残留していた毒素を出来るだけ取り除き、人工心肺装置やら人工透析装置やらを繋いで一時的に延命、その後届いた人工臓器を取り付けて縫合、これで三日間にわたる大手術は無事終了した。 プレシアさんは生き延びた。

まぁ、未だ体に毒素が残っているし、大量に取り付けた人工臓器に体が拒絶反応を起こす可能性が残っているので手放しで喜べなかったりもする。

オレの見立てでは余命五年、早ければ明日にでも逝ってしまうそんな不安定な命だった。

裁判は書類で簡単に済まされた。

現在医療施設の充実した監獄で暮している。



続いてフェイト。

クロノの尽力のおかげでほぼ無罪確定、裁判を受けるがそれが終われば晴れて自由の身だ。

まぁ、裁判生活は辛いだろうがそこら辺は我慢してもらうしかない。

余談だがフェイトはプレシアさんが投獄される直前オレにアリシアの葬式がしたいと言ってきた。

だから、オレは少々裏技を使い二人に小さな葬式を挙げさせた。

アリシアを埋葬したのはプレシアとアリシアがピクニックをしたという思い出の場所だった。

そこもこれからは少し悲しいが三人の思い出の場所になるだろう。



次にユーノ。

しばらくアースラに住むことになった。

…………こいつは特に何もないな。

強いて言うなら、時々町に降りてなのはと遊んでいる……フェレットモードに限りだが。



そしてアースラメンバー。

小規模だが次元震が起きたので必然的に第97管理外世界に留まることになった。

観測以外にやることもないのでヒマを持て余したエイミィ+オレにクロノがからかわれるという事件が勃発した。

フェイトが裁判から戻ってきた時に限りその頻度が減るので、クロノはフェイトが戻る時は必ず迎えに行くようになった。



最後になのは

ひとまず日常に戻ることになったようだ。

本来ならば事件が終わった時点で魔法の世界に来るか今回のことを忘れ日常に戻るか選択しなければならなかったのだが、そこら辺はリンディさんの手腕により考える時間を得たようだ。

レイジングハートも現在なのはのもとにある。



オレ周辺のことはこのぐらいだ。

少々付け足すとしたらリンディさんたちに肉体改造やらのことを問い詰められたことだ。

もちろん証拠を残すようなへまはしていないし、最大の証拠であるオレの体は昔の事件で書きかえられた遺伝子のために改造されたのかさえ判断できない。

なので『やってない』の一点張りをした。

まぁ、改造自体昔の事件で強化された筋力に耐えられる骨格に変質させただけなので、少々強引ではあるが『治療』で通るだろう。 骨を強くするのにボルトを使ったりするのだから。



――――なのは


~~~~♪


あの事件から数日が経ったある日のある朝。

なのはは携帯のメロディーに起こされた。


「ん~~……(ピッ)…………Zzz」


切った。

今日は日曜日だからもう少し寝ていても問題ないのだ。


~~~~♪


再び鳴り出す携帯。

なのはは重い瞼を開き携帯を確認する。

 着信:時空管理局

飛び起きた。


「ハ、ハイッ! 高町な――」

『――のはちゃーん、ボクが色々と手術やら事後処理やらプレシアさんの護送やら研究レポートやら負傷した局員の検査やら荷造りやらetcやらで忙しい中、頼まれた情報が手に入ったからキミのお願い通り連絡して上げたのに再三のコール無視挙句に着信拒否るとは何事かな? 弁明があるならどうぞ?』

「あ、ごめんなさい。 ちょっと寝ぼけて――」

『言い訳なんか聞きたくないね』


……なんだか滅茶苦茶だ。


『恨み事は置いといて、フェイトちゃんと会えるから』

「え? ええ!?」


なんだか滅茶苦茶、だけどとてもうれしい!


「ロゥくん、それ本当!?」

『Yes 本人も会いたいっていってたから、場所はボクたちが初めて会った公園、時間はAM5:30急いでね』

「うん! ありがとう!」


わたしはロゥくんにお礼を言い電話を切った。


「えへへ、フェイトちゃんと会えるんだ……」


それにフェイトちゃんも私に会いたいと言ってくれた。


「……そうだ、時間――」

 5:25

「――あと五分!?」


その後なのはは慌しく着替えて家を後にしたのだった。


――――フェイト


「…………」


わたしはクロノたちと海の見える公園にいた。

アリシアの葬式の時もそうだったが、管理局の人が都合を付けてくれたらしい。

わたしがあの子にあの時の返事をしたいと言ったらあっさりと許可してくれたのだ。 管理局の人にはどんなに感謝してもし足りない。

しばらく待っていると、あの子がやってきた。

走って来たらしい、息が上がっていた。


「だ、大丈夫?」

「はぁ、はぁ……う、うん、だい、じょう、ぶ……」

「あんまり時間は無いんだが、しばらく話すといい。 僕たちは向うにいるから」

「オレはここで見てたいんだけど……」

「ダメだ! ほら、来い!」


クロノたちはそう言って離れて行った。


そしてフェイトとなのはだけになる。


沈黙、話したいことがたくさんあったが、なのはが何かを言おうとしていたのでわたしはそれを待つことにした。


「……あはは、何だかいっぱい話したいことあったのに……変だね、フェイトちゃんの顔見たら忘れちゃった」


なのははそう、少し照れたように言った。


「わたしは――」


わたしはこの子に伝えたいことがあったが、それはあっさり忘却の彼方へと追いやられてしまった。


「――そうだね……わたしもうまく言葉にできない」


だから想った事をいう。


「だけどうれしかった」

「え?」

「まっすぐ向き合ってくれて」


そう、わたしはうれしかった。

母さんがアリシアの亡霊に取り付かれていたころ、独りきりで寂しかったころ、わたしの目を見て名前を呼んでくれたことが、その頃の私には何よりうれしかった。


「うん、友達になれてらいいなって思ったの」


この子はとても明るい笑顔とともにそう言った。

しかし、すぐに笑顔に影が差した。


「でも……今日は、もうこれから出かけちゃうんだよね?」

「そうだね……少し長い旅になる」


その間、二人が今のように話すことは叶わないだろう。

再び沈黙、しかし今回のは先程と違い重い。


「また会えるんだよね?」


懇願するように、心から願うようにそう言ってくれた。

わたしはそれだけでうれしくなってしまう。


「うん……少し悲しいけど、やっとホントの自分を始められるから」


わたしの言葉に再び笑顔に戻る。

フェイトは思う、この子と友達になりたい。

だから、あの時の返事をしようと思った。


「返事をしたいんだけどいいかな?」

「え?」


なんだか少し恥ずかしい、顔が火照っている。  わたしは海の方に顔を向ける。

フェイトは今までにない緊張を感じながらいう。


「キミが言ってくれた言葉『友達になりたい』って」


横から息をのむ音が聞こえる。

わたしは言う。


「わたしに出来るなら、わたしでいいのなら……だけど――」


わたしは言葉に詰まる。

それでも最後まで伝える。


「――わたし、どうしていいかわからない。 だから教えてほしいんだ、どうしたら友達になれるのか」

「…………」


そして沈黙。


「…………」

「…………」

「…………」

「…………簡単だよ」


フェイトが顔をあげると、そこにはとても優しい笑顔をたたえたなのはがいた。


「友達になるの、すごく簡単」


わたしはその笑顔に見惚れ少しぼんやりしてしまった。

言葉は続く。


「名前を呼んで、初めはそれだけでいいの。 キミとかアナタとか、そういうのじゃなくて、相手の目を見てはっきり名前を呼ぶの」


なのははフェイトに向き直る。


「わたし高町なのは、なのはだよ」


フェイトも向き直り相手の目を見て名前を呼ぶ。


「な、のは」

「うん、そう!」


少し発音が違った。 それでもなのはは嬉しそうに応えてくれた。


「な、の、は」

「うん、うん!」


わたしの声は緊張のためにたどたどしかったが、それでも呼べた。


「なのは」

「うん! う、うん……」


気が付けばなのははその優しい瞳に溢れんばかりの涙を湛えていた。

なのはがわたしの手を握る。


「ありがとう、なのは」

「…………うん」


名前が呼べたら、今度はいっぱい話したくなってきた。

けれども喋りたいことがありすぎてやはり言葉に出来ない。


「……キミの手は暖かいね、なのは」


結局、言えたのはそんな何の意味もない言葉だった。

なのはの返事は無かった。

とうとう泣き出してしまい、返事が出来なかったのだ。

なのはがわたしとの別れを悲しんでくれるのがうれしい。

けれど変だ、嬉しいはずなのにわたしの頬を涙が流れていた。


「少しわかったことがある」


なのはの涙をすくいながら言う。


「友達が泣いてると、同じように自分も悲しいんだ」

「フェイトちゃん!」


フェイトの言葉を聞いたなのはがフェイトに抱きすがった。

フェイトはそれを優しく抱きとめる。


「ありがとう、なのは。 今は離れてしまうけどきっとまた会える……そうしたらまたキミの名前を呼んでもいい?」

「うん、うん」

「会いたくなったらきっと名前を呼ぶ、だからなのはも名前を呼んで」


そしてこれはわたしからわたしの初めての友達に、救ってくれたことに対して何も恩返しが出来ないわたしの誓いの言葉。


「なのはに困ったことがあったら、今度はきっとわたしがなのはを助けるから……」


フェイトの言葉を聞いたなのはは、嬉しさのあまり声をあげて泣いた。



――――ロゥ


「ひっく、あんたのとこの子はさ、本当にいい子だね」


フェイトの感情が流れ込んだアルフが泣きながら言った。


「フェイトがあんなに笑ってるよ」


それを聞いたロゥは今まさに抱き合っているなのはとフェイトに目をやった。


「……バックにはユリの花が合いそうだ、フォルテ」

《…………》

ffフォルテシモ、いくらマスターの命令だからって空気を壊すようなことをやらなくてもいいんだぞ」

《了承》

「…………何か納得できないものが」


オレ、ffの声聞いたの久しぶりだぜ?


「じゃあどうすんのさ? 時間、かなり過ぎてるぜ?」


オレがそう言うとクロノは普通にそれを告げに行った。

あのどこかピンクっぽい空間に平然と割り込むなんて勇気がある。 それとも神経図太い?


「どう思いますか? 使い魔'sのみなさん?」

「つかいまーずってなんだい?」

「ボクは使い魔じゃない!」


…………。……


そんなこんなでなのはとフェイトのお別れは終わりを告げた。

これからはフェイトは裁判、アルフも同様、クロノはそのサポートで忙しくなるだろう。 ユーノ? 知らない、あいつがアースラに残る意味あんの?

そしてオレ、なんとここ鳴海市に住むことになった。

昨日クロノに言われるまで忘れていたけど、ジュエルシードって全部で21個あってオレたちが回収したのって20個なんだよな……1個足りないじゃん!

という理由で、いつ暴走するかも分からないジュエルシードを発見するために、感知魔法の得意な局員を現地に置いて常に捜索させることになってたらしい。

追加任務でジュエルシードが暴走したときの早期対処のため人の集まる場所に行き警備をする。

管理外世界なので目立った行動を取ってはいけず、よって偽装行動の得意な局員が望ましい。

以上のことを満たす局員はアースラクルーの中にオレしかいなかったのだ。


こうして幕を閉じると思われた事件はまだ続くのであった。






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