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道しるべ


――――なのは

わたしとユーノくんはアースラの転移ポートを使って鳴海市に戻ってきた。

あたりは夕日の赤色に包まれてとっても綺麗なのだが、これからのことを考えるとあまり気分がすぐれない。


「高町、ユーノ。念のため二人を送りたいんだけど」

「あ、うん。こっちだよ」


ロゥくんはねぼすけさんな表情だったが、以外にも仕事はちゃんと出来るようだ。


「……高町。今しがた失礼な電波を受信した気がする」

「あはは、気のせいだよ…………ところでロゥくん。わたしの名前なんだけど出来れば『なのは』って呼んでくれないかな? わたし兄弟とかいるから紛らわしくって」

「わかった。昔、ここの人に初めて会った人をいきなり名前で呼ぶのはいいことじゃないって注意されたことがあったから、ごめん」

「あ、全然気にしてないから! べつに怒ったとかそういう訳じゃなくて、やっぱり名前は呼ばれ慣れたなのはの方が落ち着くわけでして、だからロゥくんも気にしなくていいから!」

「わかった。ボクもただ謝っただけだから」

「それはそれで人としてどうかと思うのですが……」


なんだかロゥくんと話すと疲れる気がする。


「ところでなのはちゃん、使い魔――」

「ぼくは使い魔じゃない!」

「――キミたちこれからどうするつもりかな?」


ユーノ君の叫びは完璧に無視された。

あ、落ち込んでる。

ロゥくんはそのまま話を続ける。

けど、まじめな話のはずなのに眠そうな顔のままだ。


「ボクとしては二人に手を引いて欲しいかな。二人が今回のの事件に関わるとリンディさんは始末書を書くかもしれないし、組織の仕組みを理解していない二人が参加するとアースラの連携に支障をきたす可能性が大きいんだよ。これはロストロギア関連の事件だと致命的な弱点になるかもなんだよ。それに二人が事件に深く関われば関わるほど二人にはそれだけの責任が問われることになるし、知らなかったとか民間人だからなんて言い訳は通用しない、問題を起こせばミッドの法で裁かれる。この事件に関わるのなら、今言ったことを忘れるないでね」

「「…………」」

「……」


それから翠屋に着くまで誰も口を開かなかった。




「あ、そうだ。なのはちゃん、ユーノ君」

「え! なに!?」


翠屋に着くとロゥくんが突然話しかけてきた。


「『バスカビルの犬事件』って知ってるかな?」

「え? ええと、シャーロック・ホームズの?」

「や、最近ミッドチルダで起きたヤツ……って知るわけないね」

「ロゥ、急にどうしたの?」

「この事件なんだけど、変身魔法で犬になった魔道師がバスカビル家で覗きをしまくるという事件で……」


そう言ってユーノくんを見るロゥくん。


「ユーノ君、訴えられるなよ」

「してないよ! のぞきなんか!」

「訴えられたら絶対勝てないから」

「だから、訴えられないから!」

「『なのはの恥ずかしい映像をぼくが持っている限り、なのははぼくを訴えることが出来ないのさ。ぐへへ』だって? ユーノ見損なったよ」

「そんなこといつ言った!!!」

「『いまここにコピーが一枚あるが、ぼくに忠誠を誓うのならあげてもいい』だって? 確かにそれは魅力的だけど法の番人にケンカ売ってるのかな?」

「だ~か~ら~!」

「ジョークだよ、気にしない気にしない」

「=*??@?*}*―!!?!」

「じゃ、帰る。なのはちゃん、もしこれ以上かかわるなら――」


ロゥくんの雰囲気がいままでで一番真剣になる。

わたしはついつい身構えてしまう。


「う、うん」

「――アースラに来るときは翠屋のケーキを持ってきてね、できれば抹茶ケーキ」


そう言い残し、次の瞬間ロゥくんは転移してしまった。


「……ほぇ?」

ええと、つまり翠屋の抹茶ケーキが食べたいってこと? それだけ?


「はぁ、ロゥくんて変な人だなぁ……」




――――クロノ


「すごいやー! どっちもAAAクラスの魔道師だよ」

「……あぁ」


高町なのはと黒衣の魔道師の戦闘データをエイミィとともに見ていたのだが、二人とも分析するまでもなく優秀だということが分かる。魔力に関して言えば僕よりもなのはの方が上だろう。

しかし、なのはの戦い方は強大な魔力にモノをいわせた力任せで大雑把な戦い方で、この程度なら僕でも十分対処できる。

そこまで考えたところで、後方に向かってバリアを展開した。

背後からとてつもない悪寒を感じたのだ。

僕がバリアを展開しきった瞬間、


「砕ッ!」


そんな掛け声とともにガコン! という擬音のよく似合う衝撃が走る。


「……なぜバレタ?」


相変わらずの読めない表情と感情を感じさせない声、ロゥ・アイアスが蹴りを放ったその体勢まま立っていた。

危ないところだった。今回のロゥの奇襲は完全に気配を消したもので、気付けたのは一重に掛け声のおかげだった。

掛け声がなければ僕はここに転がっていただろう。


「ロゥ、二人をちゃんと送り届けたんだろうな?」

「あれ、スルー? なるほど、今回の奇襲は気に掛ける必要すらないとゆうことか」


ロゥがまた勘違いをしている。僕もいちいち正すのが面倒なので放っておく。

僕も大人になったものだ。


「そうそう、二人はちゃんと送って来た。なのはちゃんはクロノのお姫様だからな」

「そうか……って待て!」


この間違いは放っておけない!


「一体どうゆうことだ!」

「や、クロノはなのはちゃんみたいなかわいい子タイプだろ? アースラエースの女に手を出すほどオレもバカじゃない」

「なのはさんなの!? まぁ! そう言ってくれればなのはさんの事情聴取はクロノに任せたのに……」

「か、母さん!?」


気付けば母さんさんが横に立っていた。


「……リンディさん、どこから湧きましたか? ボクとしてはクロノがあればどこにでも発生することが出来るというのが最有力候補ですね」

「ロゥ君、それじゃ私がカビか何かみたいじゃない? 女性にそんなこと言ってはだめよ。ところで、みんなで何をしているのかしら? ……あぁ、二人のデータね」

「はい」


そう言って僕も二人のデータに視線を戻す。

しばらくすると、椅子の背もたれを握っていた母さんの手に力が入るのがわかった。

息子の僕が言うのもなんだが、母さんは一児の母として思うところがあるのだろう。


「……確かに、凄い子たちね」

「はい、これだけの魔力がロストロギアに注ぎ込まれれば次元震が起きるのもうなずける」

「あの子たち、なのはさんとユーノくんがジュエルシードを集めるのはわかったけど、こっちの黒い服の子が集めるのは何でなのかしらね?」

「ずいぶんと必死な様子だったね」

「ああ。何かよほど強い目的があるのか」

「目的……ね。まだ小さな子よね」


母さんが憐れむような悲しむような、どっちつかずといった表情で黒衣の魔道師を眺める。


「普通に育っていれば、まだ母親に甘えていたい年頃でしょうに……」

「…………」


その後はみんな黙ってデータを見続けた。


そして、


「う~~ん、やっと終わったー……て、あれ? ロゥ君は?」


気付けばロゥが消えていた。



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