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出会い


――――なのは


「ジュエルシード、シリアル7!」

「「封印!」」


わたしとフェイトちゃんのの封印魔法で、木のお化けになっていたジュエルシードを無事封印することができた。

本当はゆっくりお話ししたいんだけど……。


「ジュエルシードには衝撃を与えたらいけないみたいだ」

「うん、夕べみたいなことになったら、わたしのレイジングハートもフェイトちゃんのバルディッシュもかわいそうだもんね」


フェイトちゃんがわたしと同じ高さまで飛び上がりバルディッシュを向けてくる。


「だけど、譲れないから……」


……やっぱり、お話してくれそうにない。


「わたしは、フェイトちゃんと話をしたいだけなんだけど」


本当はこんなことしたくない。

だけど、このままじゃ何も変わらないから。フェイトちゃんと友達になれないから。


「わたしが勝ったら、ただの甘ったれた子じゃないってわかってもらえたら」


わたしははまっすぐフェイトちゃんを見つめる。

そこには、強くて優しくて、そして寂しそうな紅い瞳。


「お話、聞いてくれる?」

「…………」


フェイトちゃんは黙って頷いてくれた。

わたしはレイジングハートをしっかりと握り直す。

そして、二人はまっすぐぶつかっていく。


「「はぁ――――!」」


ある程度離れていた二人の距離は瞬く間に無くなり、たがいに杖を振り上げ、振り下ろす。



……しかし、二人の杖がぶつかりあうことはなかった。

なぜなら――


「Freeze(動くな)」


夜を思わせる漆黒のマントに対照的な純白の狐面をつけた魔道師が、左右に展開したバリアで二人の杖を受け止めていたのだ。




――――ロゥ


「Freeze!」


うっかり、現地の言葉を調べるのを調べ忘れてしまった。

とりあえず、デバイスに使われていた言語を使ってみたが、どうやら通じたようだ。

心の中で胸を撫で下ろす。


「ここでの戦闘行動は危険すぎる」


クロノが近づきながら、驚きから抜け切れていない二人の魔道師に指示を出す。


「時空管理局・執務官、クロノ・ハラオウンだ。詳しい話を聞かせてもらおうか? まずは二人とも武器を引くんだ」


クロノは鋭い視線で二人を威嚇しながら、さらにどすの利いた声で威嚇する。

……いや、クロノ威嚇しすぎだって。あと、オレの紹介なし?

クロノと二人の魔道師が地上に降りたのを確認し、足場にしていたシールドから飛び降りた。


「これ以上戦闘を続けるのであれば――」

「クロノ!」


オレはクロノに警告しながら突然飛んできた射撃魔法をシールドではじく。

襲撃者の姿を探すと、空に燃えるような毛色の獣がいた。使い魔だ。


「フェイト! 撤退するよ!」


そう言いながらさらに威力の高い魔法を放ってくる。

ロゥはシールドではじききるが、


「……目眩しか!」


はじいた攻撃が地面を削り、土埃で視界がふさがれる。

ロゥはロストロギアを確保するためにロストロギアを感知、それを強固なバリアで包み込む。

使い魔か二人の魔道の誰かわからないが、誰かがロゥのバリアを破ろうとしている。


「クロノ! ロストロギアだ!」

「わかってる!」


クロノが射撃魔法を放つとバリアの違和感が消えた。

土埃が晴れると、使い魔が黒い方の魔道師を受け止めたところだった。


「……あの視界で撃ち落とすって、どんな射撃センスよ?」

「ロストロギアは?」

「もちろん確保」


オレはバリアに包まれたロストロギアを指さす。

それを確認するとクロノはデバイスを黒い魔道師に向ける。魔力ダメージで気絶させるつもりだろう。

ところが、クロノが攻撃しようとした瞬間、


「だめー!」

「なっ!?」


白い方の魔道師がかばうように割り込んできた。


「やめて! 撃たないで!」


珍しく動揺するクロノ。その隙に黒い魔道師は使い魔と共に逃げ出した。

それに気づいたクロノは、すぐにオレに指示を出す。


「ロゥ! 追跡だ!」

「了解!」


ロゥは転移を使い魔道師を追った。




――――ロゥ


ロゥは重い足取りでアースラに戻ってきた。


「……逃げられた」


そう、逃げられたのだ。


「魔道師が気絶している隙に使い魔を叩けばよかった……」


結局、意識を取り戻した魔道師が転移先に遅延発生型の攻性魔法を設置していて、それに見事にはまったロゥはところどころ焦げた状態で帰って来た。

完全に判断ミスである。


「あぁ! 自己嫌悪!」

「……ロゥ君、何してるの?」


空中にウィンドウが現れ、その中のエイミィ・リミエッタ執務官補佐が呆れ顔で眺めていた。


「自分のふがいなさに悶えてるところ。で、エイミィはどうしたの?」

「うん、ロゥ君の報告がまだだから呼んできてっていわれて」


そうだった。落ち込んでて忘れてた。


「サンキュ、場所は?」

「取調室。白い子たちから事情を聴いてるところ。早く行かなきゃ話が終っちゃうよ?」

「わかった」


オレはエイミィに簡単な礼をいうとそのまま取調室へと向かった。



・・・・・・・・・。・・・・・


取調室に入った感想。


「何だここ?」


でした。

なんだか壁一面に盆栽が所狭しと置かれ、床には畳が敷き詰められている。脇に置かれた獅子脅しがカコーンと音を立て、取調室にふさわしくないやわらかな空気を醸し出している。

そう、アースラの取調室は和風様式だった。


「あら、ロゥ君。ここは土足禁止ですよ」

「色々と言いたいことがありますが……わかりました」


そう言ってロゥは靴を脱ぎ畳の上に上がり、リンディさんの横に座るクロノに裏拳を放った後その横に座った。

そこでふと前方に目をやると二人の魔道師が驚いた表情でオレを見ていた。

……ん? 二人?


「クロノ、何で二人もいるの?」


片方は知っている。黒いのと戦ってた白い女の子だ。

だけど、もう片方の男の子は見覚えがない。ここに来る前に見た資料には載っていなかったはずだ。

そういえば近くにフェレットがいたな、この子の使い魔か?

オレが黙っているとクロノが二人に自己紹介をさせた。


「えと、わたし、高町なのはです。よろしくおねがいします」

「ユーノ・スクライアです」

「ロゥ・アイアス二等陸士です、好きに呼んでくれてかまわないよ。お互い年齢も近そうだし敬語はいらないからね」

「わかり……じゃなくて、うん! よろしくね!」


なのはがうれしそうにいう。


「そっちの使い魔も」

「わかった……って、使い魔!?」

「やっっぱ優秀なんだね高町は、こんな高性能な使い魔従えるなんて」

「ちょっと待て! 違う! ボクは人間だ!」


簡単に激昂するユーノ……いいおもちゃみーっけ。


「ほら、近くにいた小動物だよね? キミ」

「そうだけど違う! 一体ぼくのどこが使い魔だ!」

「いやー、人間形態も完璧だよ。ボクでもこのレベルはちょっと無理かなー」

「こんおぉぉぉ!」

「ユーノ君、どうどう」


ヒートアップしたユーノをなのはがなだめる。


「……ロゥ、もう満足か?」

「あぁ。あ、説明はいいよ。状況はおおざっぱに理解したから」

「理解したって、まだ何も説明していないぞ」

「スクライアって遺跡発掘の一族でしょ? スクライアにロストロギア事件ときたら発掘途中の暴走くらいしか思いつかないし。で、現地で得た協力者と共にロストロギアの回収ってところかな?」


なのはとユーノが目を丸くして驚いている。リンディさんとクロノにいたっては、わかっていたけどやっぱり驚いた、といった顔をしている。


「それで? ユーノ君。今回のロストロギアって結局何なの?」


オレのまじめな質問でユーノはしぶしぶといった感じに答える。


「……今回のロストロギアはジュエルシードという名前で、全部で二十一個存在する強力な次元干渉型の魔力の結晶体なんだ。封印処理されてないジュエルシードは近くの生き物の願望を自覚の勇無に関係なくかなえようとするし、暴走状態だと周囲へ無差別破壊行動をとるんだ」

「へー、そんなにヤバイのか。……リンディ艦長、これだけヤバイと民間人に介入させるのはまずいんじゃありませんか?」

「「えっ!」」


オレの発言に二人が驚く。


「そうよねぇ…………それでは。これよりロストロギアジュエルシードの回収については時空管理局が全権を持ちます」

「キミたちは今回のことを忘れて、それぞれの世界に戻って元通りに暮すといい」


当然だ。守るべき民間人をみすみす危険地帯に送り込むことなんてできない。


「でも、そんな……」

「次元干渉に関わる事件だ。民間人に介入してもらうレベルの話じゃない」

「でも!」

「まぁ、急に言われても気持ちの整理がつかないでしょう。今夜一晩ゆっくり考えて、二人で話し合って、それから改めてお話をしましょう」

食い下がるなのはをリンディさんがいさめてから、オレに二人を送るように指示をする。

なのははいまだ未練がましい表情だったが結局「はい」とうつむきながら承諾した。



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