初めて聞く「価値基準」だった。
ずいぶん前の話になる。プロ注目の高校生投手が、夏の甲子園で早々に負けたときのことだ。試合後、ある放送局の記者に「今、感謝の気持ちをいちばん伝えたい人は誰ですか?」と聞かれ、その投手は涙をこらえ切れなくなってしまった。
よく見る光景ではある。うがった見方をすれば、テレビ取材でありがちな「泣かせるための質問」でもあった。
すると、近くにいた記者が「幻滅した」と吐き捨てるように言った。いわく、「甲子園で負けて泣くようなヤツは、プロでも大成しない」と。
一流のプロ野球選手の多くが甲子園で涙を見せていない!?
そのときは、そういうものかと思いつつも、そんな見方に抗う気持ちもあった。涙にもいろいろな種類があるし、あまりにも杓子定規に過ぎると思ったのだ。
ところが、そのとき号泣した選手は、大学、社会人を経て何とかプロ野球選手にはなったものの、時代を経るごとに輝きを失い、今では高校時代のスケール感はすっかり影を潜めてしまった。わかりやすくいうと、ぱっとしないのだ。
それからというもの、心のどこかで、そんな視点で選手を見るようになった。
負けたとき、この選手は、どんな表情を見せるのか――。
近年で、もっとも大量の涙を流した選手といえば、'09年夏、準決勝で敗れた花巻東の菊池雄星(西武)だろう。
慟哭。
そんな表現がぴったりなほど、菊池は激しい泣き方をした。
結論を下すのは時期尚早ではあることは承知の上だが、菊池も、前評判からすると、ここまでは結果を出せていない。
確かに、プロで一流と呼べる成績を残している選手の多くは、甲子園で涙を見せていない。
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