医師リスト
意見書 98/1
意見書 98/6
意見書 99/3
厚生省へ提出した 「カルテ等の診療情報の活用について」の意見書
1998年 1月 26日
 



厚生省健康政策局医事課 カルテ検討会御中

厚生省ホームページにて募集しています「カルテ等の診療情報の活用について」以下のとおり意見申し上げます。

医療事故市民オンブズマン メディオ
広報担当スタッフ 伊藤 隼也 (41歳・男性・フォトジャーナリスト)
編集担当スタッフ 阿部 康一 (39歳・男性・会社員)
連絡先: 〒163-12 新宿区西新宿6-21-1 アイタウンレピア 808
医療事故市民オンブズマン メディオ 事務局
Tel./Fax.: (03)5323-5260
  1. 診療情報の提供の考え方について

    診療情報は、患者本人の情報であり、患者本人に帰属するものである。患者に対して診療情報が開示されない現状は異常な状態であり、診療情報開示に関する患者の権利を早急に確立すべきである。

    診療情報を患者と医師が共有することにより、「患者不在のお任せ医療」から脱却し、「自己責任を伴う患者本位の医療」の実現に向かって前進することができる。

    また患者が診療情報を手にすることにより、「医療不信の緩和」、「セカンドオピニオン取得の容易さ」を図ることが可能となり、患者の受ける恩恵は大きい。

    「今のカルテは略語の多用や悪筆により患者は理解できないから、開示しても無駄」という意見もあるが、そのような患者を無視する考え方に固執する医者からは患者が離れ、「患者が理解できるように説明することを重視し、チーム医療にも有益なわかりやすいカルテを書く医者」に患者が流れるだけである。つまり、診療情報の開示は「消費者である患者が医療の質を見極め、病院を選別する」動きを加速し、ひいては「日本の医療の質向上」に寄与する。

  2. 提供する診療情報の範囲について

    医師の診療録、看護記録、検査結果、画像 (カメラ・X線・CT・MRI・内視鏡などにより撮影されたもの)を含む患者の診療において作成されたすべての記録。

  3. 提供の要件 (提供を求めることができる者の範囲、提供の例外)
    • 患者本人 (未成年者含む)
    • 患者本人に委託された人
      弁護士など資格について制限はつけないが、本当に患者本人が委託したかどうかの確認ができることを条件とする。
    • 患者本人が未成年者の場合、その保護者
    • 患者本人の意思を確認できない場合(死亡を含む)、その家族
      家族の範囲は、「配偶者・子・父母・孫・祖父母及び同居する親族」(厚生省の「脳死者からの臓器摘出に関するガイドライン」と同一)とする。
  4. その他

    医療事故や薬害により患者が被害に遭うケースが、後を絶ちません。しかも、患者や遺族が事実の解明や被害の救済を求めても、責任を回避し真実を明らかにしようとしない医師や医療機関が数多く存在します。その場合、被害者の診療記録が医療機関からは開示されないため、被害者は何が起こったか知ることさえできません。

    診療記録を入手するためには、「証拠保全」を裁判所に申請するしか方法がなく、これは弁護士報酬を含め数十万円もの高額な費用と数ヵ月の時間を必要とするもので、この時点で多くの医療事故被害者は泣き寝入りを余儀なくされます。医療被害の事実は、ただ医療不信を形成するばかりです。

    診療情報は、患者本人の個人情報です。医療事故被害者の人権を守るためにも、診療情報の開示 (謄写) を受けるという、当然の権利が早急に保障されることを望みます。

以上