2012年7月3日 17時30分
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食品による窒息死が過去10年で最悪、消費者庁が注意喚起
消費者庁の6月27日に発表した資料から、2011年度の不慮の事故による死亡原因のうち、窒息事故が9,727件とこの10年で最悪を記録していたことが分かった。窒息事故死の原因の半数(4,869件)が食品を誤ってのみこむこと(誤嚥=ごえん)によるもので、こちらも同様に過去最悪となっている。死亡者の大半は高齢者だが、乳幼児も毎年20人以上に上る。消費者庁は食品による窒息事故の予防策とともに、応急手当ての方法も知ってほしいと呼び掛けている。
窒息事故死が交通事故死を上回る
日本ではこの数年、消費者庁だけでなく、内閣府の食品安全委員会のほか文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国民生活センター、東京消防庁などが食品による誤嚥に関する調査研究などを行い、注意喚起を行っている。しかし、食品による窒息で死亡する人は後を絶たない。
日本人の不慮の事故による死因を見ると、2006年度には窒息事故(9,187人)と交通事故(9,048人)が逆転。交通事故による死亡者数がそれ以降も減少の一途をたどり、2011年度には7,144人にまで低下したのに対し、窒息事故による死亡者数は減少せず、同年度には9,727人と過去10年で最悪を記録した。
窒息事故の原因の約半分は食品によるもの。死亡者の年齢の大半は65歳以上の高齢者が占め、次いで45~64歳、30~44歳と年齢に比例して多い。一方、0~4歳の乳幼児の死亡も年間20~30人発生している。
食品による窒息事故の予防策として、消費者庁は次のような対策を示している。
- 食品を食べやすい大きさに切る。一口を無理なく食べられる量に
- 食事の際は、お茶や水などを飲んで喉を湿らせる
- 食べ物を口に入れたまま、しゃべるなどしない
- 食事中に驚かせるような行動をしない
- 食事中は遊ばない、歩き回らない、寝転ばない
(消費者庁ニュースリリースより)
ご飯、野菜、果物、ソーセージ…あらゆる食品が原因に
米国でも食品などによる乳幼児、高齢者の窒息事故に関する注意喚起が行われている。バージニア州健康局では高齢者に対し、食品の形状や食器に関するアドバイスのほか、
- 起床直後など完全に覚醒していない状況での食事を避ける
- 食べ物をのみ込むための適切な姿勢を保持すること
- 理学療法などの専門家のアドバイスの下に、口の周りの運動機能訓練を行うことは有効
- 義歯の状態を適切にしておくこと
―といった注意喚起を行っている。
また、誤嚥の原因となりやすい食品として、日本では餅やこんにゃくゼリーなどがよく知られているが(関連記事)、消費者庁などには、高齢者では「ご飯、野菜・果物、パン、菓子、総菜、寿司」のほか、嚥下(えんげ)機能が低下した人向けの流動食まで、一般の人が普段口にしたことがないものはないくらいの種類が挙げられている。さらに、乳幼児では「ベビー用のおやつ」による事例の報告もある。
オーストラリアの当局が発行する、子供の安全概要書(ファクトシート)「kidsafe」などによると、欧米圏では、子供の窒息事故の原因となった食品として、ニンジンなど生のカット野菜、リンゴ、鶏や魚の骨、ソーセージやポップコーン、ブドウ、コーンチップスなどが挙げられている。
平成20年度厚生労働科学特別研究事業「食品による窒息の要因分析」調査(主任研究者=昭和大学歯学部・向井美恵教授)では、乳幼児、高齢者ともに窒息事故発生時の応急処置(背部叩打法=図)について、一般の人や施設職員の認識が徹底されていないことが指摘されている。消費者庁は「食べ物での窒息事故を起こさないよう予防と応急手当ての方法を知っておくことが大切」と呼び掛けている。

(編集部)