今回急に時間が飛びます。後今更だけど最初の部分は前回に入れておけばよかったと反省ww
仙水さん進化する
ヨナにその件を伝えるのは予想以上に自分の中に残っていた良心を削られるものだった
「ヨナ、お前はここで死んだ。そういうことにしてくれないか?」
自分でも相当無茶を言っているのは分かっている。当然のようにマリアはハァ!? と聞き返した後、意味を掴めたのか烈火のごとく怒りだす。
ヨナもしばらくは悩んでいたが言っている意味を理解すると、
「いいですよ♪」
と笑いながら言った。
さすがに驚きを隠しきれずに提案者である自身が思わず呆然としてしまうのは仕方無いだろう。否定や困惑が返ってくるのは予想していたが、そんな肯定的な答えが返ってくるとは全くの想定外だった。
「ちょっと待ってヨナちゃん。このバカ野朗が言っている意味がちゃんと分かっているの?」
いつの間にバカ野朗へと格下げになったかは知らないが、マリアの言う事も尤もだ。俺が求めているのは存在の抹消。時が来るまで旅団に会えない事は勿論、ヨナの大好きな人殺しもほとんど出来ないだろう。ヨナの存在はトリッパー連中の誤算であり、最大の武器でもあるのだからそれを有効活用しない手はないのだが、本人がどうしても無理だというようなら諦める考えだった。だがこうしてあっさり肯定されると本当にその意味を理解しているのか不安にならざるを得ない
「分かっているよマリアさん♪ 旅団の人、マチさんやパクノダさん、お父さんに会えないのは少し寂しいけど忍お兄ちゃんがそれを必要としているのなら別に良いんだ♪」
ヨナは本当に平気そうにニコニコ笑う。俺へのこの執着はきっとヨナの過去に何か関係があるのだろうが、とにかく今は感謝するばかりだ
「な、何て健気なの~~!! ……おい仙水っ!! この子を泣かしたら承知しねぇからな!!」
「勿論だ」
そういう流れでクロロに偽者のヨナの死体を見せて事情を説明すると、ヨナの葬儀が行われる事になった。本人は今頃マリアと一緒に何処かのホテルで過ごしていると思うが、勿論旅団はそれを知る由がない。
皆ヨナの死を悲しんでいるようだが実際ヨナが死んでないことを知っている俺はどうもこの空気に入れない。クロロはそんな俺が平気なフリを装っていると感じたようで酒に付き合わされた
マチからの視線を感じる中飲むワインは緊張で全く味がしなかった
† † † †
ブーブーブー
あれから2年後。クロロとちょうど昼食をとっていた俺の携帯のバイブレーションが店内に鳴り響く。クロロに断りを入れて店の外に出て着信に答えると
『久しぶりだな』
電話口からは低めの声。急いでいたので相手を確認していなかったのだがまさかこの人物から掛かってくるとは
「こちらこそと言うべきかなムクロ」
『そうなるな。あまり長話は好きじゃないんで手短に聞くぞ』
ったくどの口が言うんだが。おしゃべりが好きなのは飛行船で十分理解させられたよ
『お前うちに入らないか?』
「これでいったい何度目の催促だ?」
『茶化すなよ』
「はぁ……。こちらもいろいろとあってな、実際そんな暇はない」
『……そうか。最近うちの奴等がシマを荒らされたってお前等幻影旅団に不満を持ち初めてな。しばらく後にそっちに戦争を仕掛ける予定だそうだ』
「随分いきなりだな。それにこっちはそちらのシマを荒らすような真似はしてないはずだが……」
『奴等はそっち(盗賊稼業)まで手を伸ばしたいんだろう。犯罪組織としてあらゆる分野を網羅することが自分達の使命だと思っているバカな奴もいるってことだ』
「その長がなんとか出来ないのか?」
『無理だな。組織の末端でさえ数千人いるんだ、それを今まで放っておいたからもはや幹部でさえ好き勝手やっている。まぁ、奴等の行動の根源はオレへの崇拝に基づいているから直接オレが言えばなんとかならんこともない』
「――だったら」
『その為のさっきの提案だったのさ。もしお前があそこで頷いていたら戦争は起きなかっただろう。それに前からお前と本気で殺り合いたかったというのもあるし、オレにとってはちょうどいい暇つぶしと言うわけだ』
これは不味いことになった。俺だけならまだしも旅団を巻き込む事になろうとは
早速携帯を切り、クロロの待つ店内へと急ぐと騒がしくした俺を咎めるような視線をクロロから受けたが事情を説明すると直ぐに携帯で旅団全員に電話し始める
夜号の総員は一万人以上。その全員が能力者ではないだろうが3~5割は堅い
いつも通り真っ向勝負が出来るほど簡単な相手ではないだろう
これはこちらも総力を結集しなければ……
五日後、ヨナの抜けた穴に入った8番と不在だった4番をクロロが補充した全旅団とマリア、そして以前アン・ストッパブルで出くわしたスナイパー、ハギリを集めた総勢16名が集まった。こういう時ヨナの戦力があればと思うのだが、死んだことになっているのでそれも出来ない。まぁ、無い物ねだりはやめよう
ハギリは目元がキリリとした高校生で若かりし頃の自分を思い出す青年だった。ハンターサイトで個人情報を調べてからラブコールを送り続け昨日、未だ会ったことのない兄を探すという条件付きで仲間になってくれた。一応気になったのでハンターサイトでそれも調べたのだがハギリの両親の名前はなんと俺を捨てた両親の名前と一緒だった。安心したまえ、君の願いは既に叶っている
4番と8番は髭面の男とやたら露出度の高い女だ。どちらも実力はあるのだろうが、旅団結成時のメンバーに比べるとどうしても見劣りしてしまう。シルバやヒソカに殺られるのも頷けるな
「既に連絡が行っているとは思うが今回の仕事、いや戦争はこれまで以上に激しいものだろう。相手はあの夜号だ」
クロロの言葉に一同は無言で頷く。裏を生きる者なら夜号の名を知らない者はいないだろう。それは幻影旅団も同じなのだが、勢力では比べるまでもない
だが今回の戦争で一つだけ分からないことがある。
何時? どこで?
もう既にこちらに夜号が向かっているとしたらゾッとするな
するとポケットの携帯が再び鳴り始めた。着信先はムクロ。このタイミングの良さ、もしかしてネテロ並の地獄耳なのか?
『そっちの準備は済んだみたいだな。戦争は一週間後、場所はシバ大陸の小都市クァンセンだ』
シバ大陸。6大陸のうちの一つでアイジェン大陸の南に位置する大陸だ
「確かシバ大陸はそちらの本拠地ではなかったかな? しかも場所がそちらの指定とはそいささか不公平だと思うのだが」
『安心しろ。昨日買ったばかりの都市だし、こちらにも地の利はない。場所を指定したのは警察や一般人に邪魔されたくなかったからだ。無論トラップを仕掛けるようなマネはオレがさせねぇ』
都市って買えるものなのか? と少し気になったがそこはムクロだと思って諦めよう
「だがそちらが一方的に決めたのだからこちらにも何か決める権利はあるはずでは?」
『どうせ人数制限だろう? さすがの幻影旅団でも一万人が相手では多勢に無勢、それじゃ面白くないからこっちも最初から戦うのはオレと直属の77人だけだと決めている。それでいいか?』
「願ってもないな」
電話を切ると、盗聴していたフェイタンが全員に携帯で同時中継で流していたらしく説明する手間が省けたのはいいのだが、やたらノブナガがニヤニヤしているのが気に食わない
小指をピンと立てて、コレかと聞いてきた時は頭突きをしてやった
先ほどの会話の何処にそのような要素があったというのだろうか? バカの脳内がどうなっているのかさっぱり分からないし、分かりたくないものだな
戦争の方はどうやら当初の予想より楽になりそうだが、よく考えると夜号の精鋭77人は連携の取れていない一万人よりよっぽど強敵のように思える。妥協しているように思わせたムクロの口車にまんまと乗せられてしまったというわけか
「最後のあれはいらなかったな。もう少し粘れば相手も譲歩したはずだ」
案の定クロロもそう思ったらしく苦言を頂く。
「ああ自覚してる。その分精一杯働かせてもらうよ」
決戦は一週間後
ブーンブーン
飛行船のプロペラが奏でる重低音は船内の心地よい揺れも合わさって今にも睡魔に襲われそうになる。あと数時間で戦争だというのこの状態は不味いと眠気覚ましに飛行船のキッチンへコーヒーを注ぎへ向かう途中、展望台でボンヤリ雲を眺めるハギリの姿を見つけた。
その顔は緊張のせいか少し青白くなり、さすがにこの状態のまま放っておいて死なれても困るので声をかける。血の繋がりがあると言っても、両親が俺を捨てた後に出来た弟なのでまったく実感がないし、その程度の意識だ
「どうしたハギリ?」
「ああ……あんたか」
「緊張してるのか?」
「いや、実は乗り物に弱くてな。あんた達とアン・ストッパブルで戦った時も結構きつかった」
「ほう。では今回の実力はあの時以上だと期待してもいいのかな?」
「ああ。足を引っ張らないでくれよ」
「ククッ、期待しておこう」
緊張なんて欠片もしてないじゃないか。さすが俺と同じ血が流れているだけはある
少し上機嫌になりながら当初の目的を果たそうとキッチンへ向かえばそこにはパクノダ、マチ、フィンクス、ノブナガがコーヒー片手に雑談しているところだった
「随分余裕だな」
「ったりめぇだ。夜号相手だろうと何だろうと気負った奴から死んでいくからな」
「その通りだな」
フィンクスのそのいつもどおりの荒い口調に苦笑すると、パクノダが変な物でも見たような顔をする。
「随分機嫌が良さそうね。例の彼女と仲直りしたの?」
「ムクロとはそんな関係じゃない……と言っても聞いてくれないんだろうな」
「あら? もしかして拗ねちゃった? お詫びにコーヒーをご馳走するわ」
「頼む」
パクノダから渡されたカップを手に取りほとんど一気飲みするとようやく頭の隅まで冴えてきた。口の中に残る苦味を舌で拭う俺に珍しくマチが気を利かして二杯目のコーヒーを持ってくる。実際そんなにいらなかったが断るのも悪い気がして受け取ると、ノブナガがまたニヤニヤとうざい顔を見せたが俺がそれを嗜める前にパクノダがノブナガの頭に拳骨を振り下ろす。しばらくノブナガは床の上で痛みを訴え転げまわっていたが当然誰一人として助けようとはしない
唯一フィンクスだけは「危なかったぜ。もう少しノブナガが遅かったら今頃俺は……」と謎めいた独り言を呟いていたがそれはどうでもいいことだろう
数時間後飛行船が着いたのは都市クァンセンのあるビルの屋上。
さすが都市というだけあってヨークシン程ではないが広く、高層ビルが立ち並んでいる。だが普段は地上を埋め尽くしているであろう人の姿は無く、どの建物にも人影は無い。まるでゴーストタウンのような光景だった
かといって廃都市というわけではなく、ビルも新しく、近くの公園にはつい先ほどまで子供が遊んでいたかのようにスコップが転がっていた。
確かムクロはおよそ一週間前にこの都市を買ったといっていたな。ということはたった一週間でこの都市に住む人間を全て何処か別の場所に移したのか、それとも…………まぁ俺にはどうでもいいことだ
「オッ? あそこのビルの上に人が立っているぜ!」
ウボォーギンがそう言った方向には確かにこちらのビルとは比べ物にならないほどの大きさのビルは見えたが、その上に立っている人の姿なんか凝をしたって見えるわけが無い。さすが強化系を極めた男だと内心、感心しながら双眼鏡を覗くと確かにビルの上に全身包帯姿のムクロとそれを守るように囲んでいる多数の精鋭たちの姿。
双眼鏡越しにムクロの濁った目と目が合うと突然指をこちらへ突きつけた。それが合図だったのか、ムクロの周りに数人残して精鋭がビルの上を飛び移って一斉にこちらへ向かってくる
「来たぞ! 各自左右に展開して撃退しろ」
当初の作戦通りクロロ、ハギリ、コルトピと俺を残して左右に展開する。
ハギリはスコープを付けた重機関銃を用意し、ビルの上に立つムクロを狙うとドドドドッと止む事のない銃弾の嵐を叩き込んだ。
だがムクロたちのいるビルの前にそこらのビルを軽く越す大きさの壁が現れ銃弾を楽に防ぐ。4番の男が悔しげに舌打ちすると同時に他の旅団員と夜号の連中との争いが始まったようで爆音が鳴り響いたり、ビルが崩れたりで忙しい。
ムクロを狙撃して速効殺すという当初の目的が崩れた今やるべきことは一つしかない
クロロに目線をやると無言で頷いたので早速実行に移すとしよう。あのムクロに勝つ唯一の勝機はこれぐらいしかないのだから
「開<アンテ>!」
瞬間、辺りが光に包まれた。そして陳腐な言い方だが体中に力が満ち満ちて来る。
細胞一つ一つが確固たる意識を持っているかのように、宿主を次の段階の生物へと押し上げていく
成長ではなく進化
自分と言う存在は今ここで生まれたのも同然だと魂から実感できた
眩しさから遠ざけていた目を開けると紫色の濃密なオーラが自分を中心に3メートル展開されていた。まだ纏しかしていないはずなのに、既に円になってしまっているではないか
「ククッ、ハッハッハーー!!」
思わず笑いが零れる。先ほどまでの自分と比べると圧倒的だ。もはや比べるのもおこがましいほどの力
近くにいたハギリは数メートル吹き飛ばされていたが、クロロは練で耐えていたのでその場から動いていない。さすがだ
そういえば久しく練をしていない。確か呪念錠をつけたのが3年前だから三年振りということか、感覚が鈍っていないか確かめるために一度やっておいた方がいいだろう
しかし纏でこれなのだから練はいったいどうなることやら?
高ぶってくる気持ちをどうにか押さえ、精神を集中し既に湧き上がってしょうがないオーラを体内に止め、体の内側に限界まで溜めて一気に放出する!
再び目を開けた時直ぐにそれがそれだと分かった。纏のオーラは濁った紫色のオーラだったが、今目の前で燃え盛っているオーラの色は金色。神聖で清らか、それでいて周囲の空気を押しのけるような圧倒的な力を持つこの金色のオーラに俺は一つだけ心当たりがある
聖光気だ
気になるところで終わってしまいましたことを深くお詫びします。
これから戦闘シーンに移る予定なんで戦闘描写に欠ける作者はしばし武術を極める旅に出かけます
⊂二( ^ω^)⊃ ブーン
まずは梁山泊だな……
+注意+
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