更新が遅くなったのはテストのせいです。決してネトゲをやってたわけではありません!!
仙水さん看破する
クルタ族を襲う準備が出来ると直ぐにルクソ地方へ向けて出発した。準備というのはクルタ族の緋の眼を奪った後に浸けるホルマリン液と専用の瓶、いくつかのキャンプ用品だ。
緋の眼は原作時には36対しかなかったが、実際少数民族とは言え少なくとも100人はいるだろうから何人か緋の眼になる前に殺されたり、蒐集家の手によって今も隠されていると考えると60対ぐらいが実際手に入る数だろう。さすがにその量のホルマリンを直接運ぶのは安全面と利便面からも賛成出来ないので、クルタ族とトリッパーに気づかれないよう走って三日の距離まで旅団の飛行船で移動する。
クルタ族の襲撃を終えるまでそこでシャルナークに待機させて、終わり次第ホルマリン等を積んでいる飛行船に迎えに来て貰う予定だ
ちなみにメンバーはクロロ、ウボォーギン、ノブナガ、フェイタン、フィンクス、フランクリン、パクノダ、マチ、シャルナークの旅団結成時のメンバーと俺、ヨナ、マリアだ
マリアは念能力に必要な全員分の血液パックやら、医療道具やらで非常に重そうだったが本人は平気な顔で持ち歩いていた。怪我人が出るまでは近くに絶で隠れてもらうつもりだったが、この様子では働いてもらった方がいいのかもしれない
クルタ族の集落の直ぐ近くまで移動するとチベットの民族衣装のような服を身に着けたクルタ族と明らかにそれとは顔立ちも服装も違い、何かを警戒しているような連中が数十人ほどいた。
おそらくあれがトリッパーだろう。よくよく見ると何処かで見た三姉妹もその中にいる
一応警告らしきものはしていた筈だがあの様子では懲りてないのだろう
「おいおい、クルタ族以外の念能力者がいるとは聞いてねぇぞ」
「どうした。怖気ついたか?」
「バカッ! 楽しみなんだよ~~!!」
「五月蝿いね。ばれる前に静かにしな」
決行は夜。クルタ族の連中が寝静まった頃に狩る。皮肉にもこれがハンター初任務ということになるのだろうか?
そんなどうでもいいことを考えていると側のヨナにトントンと膝を叩かれて注意を促される。クロロは全員の準備が整ったのを確認すると指でサインを出した。いよいよ作戦開始だ
まず邪魔なトリッパー集団を潰して、後はなるべくクルタ族を刺激し緋の眼に変わってから殺す。作戦はそれだけだ
たださすがにあのトリッパー達は念能力を覚えているようでまともに相手しても殺れるとは思うが、前世の記憶がある分より嫌らしい能力を持っているのに違いないだろう。ここは囮を立てた方が堅実だな
ヨナを指差して、焚火の周りに集まっているトリッパー集団の方向へ向かわせるジェスチャーをクロロに送ると了解の意図が帰ってきた
ヨナも了解と頷いて、茂みから出ると絶を解いてトリッパー集団の元へ近づきだした。言わずもがなヨナを向かわせたのは奴らに顔を覚えられていない唯一の人間だからだ
「こんばんは~♪」
いきなりのヨナの登場に驚くトリッパーたち。普通山奥でこんな夜に少女が出歩くわけがないからな。ヨナが注意を惹いているその間にも俺達は奴らを狩るのに一番のポイントに移動する
「止まれっ!! そこを動くな」
「魔獣かもしれないぞ」
「落ち着きなさい、この辺には人に化ける魔獣なんていないでしょ。見たところ闘えそうにも見えないし、クルタ族の子かもしれないわね」
幻影旅団でさえ騙したヨナの実力に気づく様子は全く無く、ゆっくり警戒を解いて近づいていくトリッパー。その一瞬を見逃すはずも無く、麦わら帽子を被った男に接近するとヨナから貰ったベンズナイフで頚動脈を掻き切る。偶然それを見つけた女が悲鳴を上げる前にフィンクスが首を捻じ切って、残りの連中も次々と現れて音も無く一人ずつ殺していく
ヨナは囮にされたせいで人を殺せなかったのが気にいらない様子で拗ねていたがマチとパクノダに頭を撫でられると直ぐに機嫌を取り戻した
それにしてもこのベンズナイフの切れ味はかなりいいな。ほとんど撫でる積もりで振るったはずだが豆腐のようにあっさり斬れた
血糊もまったく付いていないどころか、人を斬ってより鋭さが増しているようにも思える
「気に入った?」
ニコニコと楽しそうにこちらを見上げるヨナ
「ああ。だがこのナイフは使い手を選ぶな」
「大なり小なりベンズナイフはそんなものだよ♪ その魔力で心が壊れちゃった人もいるし、用は持ち手の心次第だね。忍お兄ちゃんなら大丈夫だろうけど…」
気をつけるとしよう。武器はあくまで使いこなさないと意味がないからな
「――良し、片付いたみたいだな。まだ他にも能力者がいるだろうから、ツーマンセルで周囲を警戒しながらクルタ族の眼を奪え。各自凝を怠るなよ」
ベンズナイフを軽く手で弄びながら一軒の家屋にお邪魔しようとした所で、派手な破壊音と共に遠くの家の半分が吹き飛ぶのを見た。
あれはウボォーギンのビックバンインパクトだな。今まで忍んだ意味が全く無いような攻撃をするあたりらしいと言えばらしいのだが、もうちょっと空気を読んで欲しいと思うのは贅沢な望みなんだろうか?
その音を聞きつけて今正に入ろうとした家屋からガタイの良い男が飛び出してくる。男は俺達を一目見て堅気ではないと判断したのか、近くに立てかけてあった木の棒をこちらへ構える。
「貴様らっ、何者だ――うっ!?」
言い終わる前にヨナがベンズナイフをブスブスと腹に突き刺して、ゴッという鈍い音と共に崩れ落ちた
「ヨナ。緋の眼になる前に殺しちゃダメだろう?」
「久しぶりに人を殺せると思ったら舞い上がっちゃって♪」
気を取り直して男が出てきた家屋の中に入ると、ぐっすり眠っている男の子と深夜の客に驚いている様子の女がいた。おそらくさっき殺した男の妻なのだろう、女はヨナの手に握られている血塗れたベンズナイフに気づき顔を蒼白にする
「わ、私はどんなことをされても構いませんからどうかこの子だけは……」
ヨナは聞く耳を持たず、粘着質な泡で覆われたバスケットボール大のテントウムシを具現化して女の体内へ侵入させると、いきなり女が狂ったように暴れだした。白目を剥いて口の端から涎がタラタラと流れているが女はまったく気にした様子もなく、いや気づいてもないのだろう、しばらく暴れ続けると瞳が段々鮮やかな緋の色に染まってきた。
ヨナの能力“孤独で蟲毒な蹂躙劇<トラウマメイカー>”は相変わらずエグイ。
今回の任務に新参のヨナが入った理由はこの能力に因る所が大きいだろう
唯一の問題はやり過ぎると精神が麻痺してせっかくの緋の眼が元の眼に戻ってしまうということだ。ヨナにもそれは十分言い聞かせてあるので眼が緋色の内にベンズナイフで眼球を傷つけないようにくり抜いている
母親の悲鳴でようやく目を覚ました子供にも同様に行い次々と別の家を訪れる
俺はヨナが黙々と眼を奪っていく中周囲の警戒をしていたが、聞こえるのは他の団員によって殺されていく者たちの悲鳴や戦闘音ばかりで、ひっそりと眼を奪っているこちらに注意を払う者はいないようだ
ヨナの作業が終わるまで血や糞尿の臭いの篭った家の中から退散しようと外に出てみたが、外は血の臭いこそ薄くなっているものの家や人の焼ける臭いで中とたいして変わらなかった。
「まぁ風がある分、中よりはマシだろう」
燃え上がるクルタ族の集落を見てこれからどうしようとボンヤリ考えた。まさかこの世界でクロロたちと知り合いになるとは思っていなかったからここまで原作と関わることになるとは……
別に関係ないと言ってしまってはそこでお終いだが、ここまで原作と似たような展開が続くとは運命を感じるな。
「!?」
ふいにヨナのいる家の中から轟という音の後にガラスが割れる音が
直ぐに家の中に駆け込むと、荒い息を吐いて体中をナイフで傷つけられたヨナの姿があった。幸いなことに傷自体は浅いようだが傷の数が多いので床にも少なくない量の血が溜まっている。
当のヨナはおそらく襲撃者が去ったであろう破られた窓の先を警戒していたが、もう安全だと分かると殺気を霧散させた。
ヨナにここまでの怪我を負わせるとは襲撃者も中々の腕だ
「ヨナ。直ぐにオーラで止血しろ」
言われる前にヨナは止血していたが既に随分な量の血を流している。ここは事前に採血しておいた血でマリアに傷を治して貰って、ついでに輸血もしてもらったほうがいいのかもしれない
案の定ヨナは少し顔が青白くなっている。体重がないので失血の影響も大きいだろう
さすがにこれ以上の任務続行はキツイ
「ヨナ。マリアのもとへ行くぞ。その出血ではもう任務の続行は無理だ」
「え!? でも…」
困惑の表情でこちらを見るヨナ。まだまだ斬り足りないのは分かるがここで帰さなければ後で責任をとらされるのは俺だ。主にマチやパクノダに……
普段よりいっそうわざとらしく落ち込む振りをするヨナを守りながら、2kmほど離れた位置に設置されたマリアの救護所まで連れて行くと直ぐに
「まぁ!? ヨナちゃん怪我してるじゃないの!? ……あんたがついといて何ヨナちゃんに怪我させとるんじゃ! コラッ!!」
「……すまない」
すっかりヨナに甘々のマリアにバリバリのヤクザ言葉で切れられた。その変貌振りにヨナ自身も心なしかビクビクしているように見える
とはいえマリアも俺に説教するよりかはヨナの治療を優先したらしく、ヨナの傷に毒などが入ってないことを充分確認した後自分の手首にナイフを当てて血を流すと血液パックに入っているヨナの血と混ぜてオーラでクリーム状にした物を傷に塗っていく。
ヨナの傷は見る間に治っていく…………と思われたが何一つ変わった様子はない
確か一度見たときはあっという間に傷が塞がった筈だがどういう訳だ?
「これは……たぶんよっぽど性質の悪い念能力が掛かっているわね。そうでもないと私が治せないはずないもの。仕方ないから当分は応急処置で我慢してねヨナちゃん」
能力者を下手に倒すと死後念が強くなる可能性もある。とりあえずヨナのことは医学に関してだけ心配できるマリアに任せるとしよう
再びクルタ族の集落に戻った時には既に家屋のほとんどに火が点けられて、轟々と燃え盛る家屋の火の粉があたりを明るく照らし出し、人々の憩いの場であっただろう集落の中央広場には山のように死体が積み重なっている
その死体に今また一つ新たな死体を投げ込んだフランクリンに手を上げて軽く挨拶しあう
全身血の色で染まったフランクリンの顔はいつも以上に厳しい
「よう仙水。ヨナはどうした?」
「すこし負傷をしてな。さっきマリアの所へ運んでいったところだ」
「そうか……こっちも何人か怪我人が出た。体術自体はたいしたことないがあいつら奇妙な念能力使いやがる。クルタ族の戦士連中は勿論のこと強かったがな」
そのまま雑談に花を咲かせていると遠くの空からブーンブーンという低い音と共にシャルナークが操縦する飛行船がやって来た。それをきっかけにして次々と他の連中も広場に集まってくる
確かにフランクリンの言うとおりフィンクスやウボォーギンが血を流しながらこっちへ向かってきたが本人は至って平気そうなので心配ないだろう
問題はクロロに支えられながら歩くマチだ。腹部を酷く打ったのかお腹を押さえて痛みに耐えている様子からよっぽどいいものを貰ったのだろう
「仙水、ノブナガ、パクノダは生き残りの掃討。残りの連中は眼を保管する作業をしておけ」
クロロの言葉に一瞬の迷いもなく反応する旅団連中。皆クロロに従うことがこの場での最善手であることを知っているからだ
「生き残りの中にやっかいな能力者がいる。他人に化ける能力者だ」
「旅団<クモ>の姿に変わっても俺らには直ぐ分かるはずじゃねぇのか、団長?」
ノブナガの言うとおり、付き合いが長いってこともあるがちょっとした歩き方の癖や、その人特有の匂い、強さなんかで直ぐそれがその人物じゃないかそうでないかはハッキリと分かるはずだ。特に強さなんかはマネしようがないからな
「でもそんな能力だったら心を読めるあたしが残党狩りに参加するはずないでしょ。おそらく本人かどうかも分からないぐらい完璧な真似。考えただけで恐ろしいわね」
「正確に言うと完璧な真似ではなく、真似ている最中他人はその人物に違和感を抱かないという心理的効果がある念のようだ。化けられていた本人を見るとそいつが偽者だとわかるようだがな。マチも俺の姿に化けた奴に騙されていたらしい。残念ながらローブを被っていて俺も奴の姿は良く見えなかった」
「しかし、それだとパクノダの念でも本人か偽者かの区別がつかないのでは?」
いくらパクノダの念が心(正確には記憶)を読むといっても、もしパクノダ自体が相手の念の影響で違和感を抱かなければ本人かどうかなんて分かりはしない
「そこがまだよく分かってない所だ。記憶を読むのだからパクノダの能力がそいつの能力より優先されるか、そいつの能力のほうが優先されてパクノダが気づけないかは試して見るほかないな」
「……いや、まだ一つ手がある」
† † † †
潜入に成功した。
最初マチを騙せた時は内心ガッツポーズをしてしまった程嬉しかった。まぁ、バレナイように能力を作ったからマチでも騙せるのは当然なんだけど、重要人物に化ける時は今でもドキドキする。特に今回はクロロだったから前世でいろいろとクロロとの妄想を膨らましていた甲斐もあって我ながら完璧だと思っていたんだけど途中で本人が乱入して来るのだから驚いた。
ちゃんと足止め連中働けよ~
大枚はたいているんだからさ
こっちの能力は本人の姿見えたらおじゃんだからそれが痛い! そうでもしないと能力作れなかったから仕方無いんだけどねw
まぁ何だかんだあってヨナって名前の旅団の子。たぶんトリッパーじゃなくて原作に出てない元8番か4番の子なんだろう。相手を気絶させるガスを発生させる相方に手伝って貰って気絶させ直ぐにヨナって子に化けるのは成功した。外にいる仙水さんに疑われないように今さっき戦闘があったように体をナイフで傷つけておく。バレナイとは分かっているが細部まで拘っておくのが元劇団員としての譲れない点だ
今回の任務はこの先邪魔になりそうな仙水さんとこのヨナって子の抹殺。ちゃんと原作という台本どおりに進まないといい作品は出来上がらないのだよ、ウン! あとクラピーの命の恩人ってポジションは美味すぎるからね♪ あの美形が私のことをジット見つめて愛の告白を……ウキャー! テンション上がってきた!!
仙水さんに連れてこられたのは救護所みたいなとこ。変なオカマみたいな人が傷ついた私を見て男言葉になって仙水さんを怒鳴りつけた。ヒャ~怖いよ、ヤクザ言葉で怒鳴るのは勘弁です!!
オカマさんはいきなり自分の手首を軽く切って、血液パックの血と混ぜるとドロッとしたクリーム状のものに変えていきなり傷口へと塗りつけた。
ちょっ!? それはどうなの?
バッチイよ!!
ところが不思議そうな顔をする仙水さんとオカマ。あれ? ひょっとしなくても念能力だった? しかも本人じゃないと意味がないタイプの能力?
不味いなぁ~とヒヤヒヤしたが、偽者だと気づかないオカマさんは敵の能力と都合よく勘違いしてくれて仙水さんもどっかへ行ってしまった。
チャ~~ンス! 油断してるこのオカマさんも原作関係なさそうだから殺して埋めとこう
その為には絶好のチャンスを待たなければ。この先旅団に侵入して仙水さんも殺さなければならないし、ここでヘマをする訳にはいかない
ヨナって子は私が化けるために死んでもらっちゃ困るから全てが終わった後に殺すとしよう。今頃仲間が何処かへ運んでいる最中だろうから見つかる心配はないしね♪
オカマさんは私の怪我を素早く縫い繕うと、血が出来るためにレバー料理を作り出した。なんでも相手の念能力がどういう効果をもたらすか分からないから輸血は止めにしたらしい。本当に考えを改めてくれて助かる! ヨナって子と私の血液型が違ったら血液固まっちゃうよ!
「ちょっと待っててねヨナちゃ~ん♪ 今出来上がるからね」
ウゲッ、思わず吐き気がしそうな甘ったるい声と料理の臭い。
ちょうど今料理に集中して背中を向けているこの隙に殺してしまおう。私はヨナって子が持っていたベンズナイフを音もなくとりだし筋肉質なオカマの首へと振り下ろそうとした所で、
ブゥーーン
という機械音と共に上空の飛行船に取り付けてある巨大なモニターの電源がついた。
なんとそのモニターには全旅団の顔が映し出されているではないか!?
たとえ写真だとしても私の化けの皮をはがすには全く問題ない。
「あれ何かしらヨナちゃん? って!? あんた誰よ!」
ヤバイヤバイ! とりあえず逃げなくては…
「何処へ行く気かな?」
目の前の茂みからは眠ったままのヨナって子を抱えた仙水さんの姿が
輸送班はもうこの地から脱出したはずじゃぁ……
「さぁ、ゆっくり話し合おうじゃないか」
そ、そんな。こんな筈ではなかったのに
私の目の前は比喩なんかじゃなく真っ暗になった
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