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今回造語や自己解釈があります。
いきなり外伝を書いた理由としては、今まであまり団員との絡みを書いて無かったので書きたい! とい単純な考えだったりしますww

しばらく続くと思いますがどうぞよろしく!
外伝 仙水さんと仲間たち(1)
外伝


当初、今回の仕事は珍しく殺しを伴わない平和な仕事だった。クロロから渡された細長い筒と交換に、ある相手からその品を受け取ってくるだけという子供のお遣い程度の仕事だ。

しかし、突如その相手は交換場所から姿を消し、更には飛行船の荷物受け取りセンターでその筒の入ったアタッシュケースの中身だけ盗まれてしまった。ほとんど警戒してなかったとはいえ、盗賊が逆に盗まれるとはなかなか笑えない。

「……という訳だがどうするクロロ?」

『わかった。そっちにフェイタンとパクノダを送る。それから先は自分の考えで奴等を使って構わない』

了解とだけ言って、電話を切った。
しばらく待合室で流れてくるアナウンスをBGMに読書を続けていると、そこから約三時間後にいつもと同じ姿のフェイタンとスーツ姿で若干緊張気味のパクノダが現れた。

「とんだヘマしたね仙水。笑えるよ」

「今回ばかりは何も言い返せないな」

フェイタンと会話している最中もパクノダはこちらを見てはビクッと反応する。俺(忍)の記憶を見てからは視界に入ることさえ避けていた時に比べれば随分マシになったが、それでもやはりまだ怯えているようだ。
そのこともあって今まで仕事を共にしたことは片手で数える程度しかないことに加え、仕事ではノブナガやシャルナークが上手く間を取り持っていたので、直接命令を下すのは今回が初めてと言ってもいいだろう。

「パクノダ。早速だがこのアタッシュケースの記憶を見てくれ」

「……分かったわ」

パクノダの能力は人や物体に触れ、そこに残された記憶を読み取るというものだ。ならば筒だけを奪った犯人も必ずアタッシュケースに触れているので、特定は容易いだろう。

案の定パクノダは直ぐに顔を特定し、簡単な似顔絵を書いてもらった。それをシャルナークに送り、過去の犯罪歴から犯人を洗い出すという方式だ。おそらく足がつかないように運び屋を何人か経由しているだろうが、こちらは順次運び屋の記憶を辿っていけばいい。
いつか取引相手に追いつくまで……

『見つかったよ! そいつの名前はコルマ、スリの常習犯らしくて運び屋としては素人だね。住所はそこから南西に十キロ先のゾール市のアパート。詳しい場所はメールで送るからそれを参照に!』

電話を切ると直ぐに詳細な地図情報が添付されたメールが届いた。

「十キロなら走ったほうが早いだろう?」

「余裕ね」

「了解」



着いた先はボロボロのアパートだった。郵便受けに詰まっている新聞や、部屋の中に電球がともってなければ、人が住んでいるのを疑うようなそんなアパートだ。
シャルナークによると対象者はここの二階の一番奥の部屋に住んでいるらしい。

二回へと続く階段も踏むたびにギシギシと怪しい音が鳴り、鉄の手すりもすっかり錆びてしまっているのでなるべく触れないよう進む。
目的の部屋に着き、中を窺うが人の気配は感じない。インターホンを押しても返事はないし電気メーターも廻っている様子はない。

「どうやらいないようだな」

「本当ね。逃げたのかしら?」

「どうせ金欲しさで気軽に受けたのだろうだからそこまで用意はしてないだろう。帰ってくるまで待つとするか」

「待つんだたら外より中ね」

フェイタンはドアを強く引いて鍵ごと壊すと中に入る。こういう行為にすっかり慣れてしまった自分はこちらの世界に属していると改めて痛感させられる。まぁ、幼少時代からまともな仕事はしてなかったが……
とりあえず空腹だったので何かつくろう(もちろんこの家の中で)と思ったが、その様子を見たパクノダが自分がつくると言い出した。
今までの人生で出会った女性は(主にエリとマチ、ビスケ)料理が全くと言っていいほど出来なかったのであまり良い予感はしなかったが、パクノダはどうしてもと言うので素直に任せてみた。きっとパクノダなりに気まずかった関係をどうにかしようという試みなのだろう。


ジュージューといい音を聞きながらフェイタンと一緒にテレビを見る。くだらないバラエティ番組だったがある程度笑えた。そんなことをしている間に狭いキッチンからいい香りが漂ってくる。

「む、出来たみたね」

食卓に運ばれてきたのはオイルサーディンのパスタとサラダだった。部屋はボロだがここだけ有名レストランのように思えてくる味だ。
正直俺より料理が上手い。

「味はどう?」

「……君を少し甘くみていたみたいだな」

「そう。それはよかった」

「まぁまぁね」

遅めの昼食をとって五時間後、男は帰ってきた。辺りはすっかり暗くなり、更に男は泥酔しているようで物陰に潜む俺達に気づかない。例え素面でも絶をしているので気づかないだろう。

フェイタンは天井から男の後ろに音も無く下りて喉に刀をあて拘束する。パクノダもそれを見て暗闇から姿を現し、俺もそれに続く。
男は自分が置かれている状況に気づいたのか顔を青く染め、酔いもすっかり醒めたようだ。

「ひぃい!」

「これから不用意に喋ったり動くと指を一本ずつ切り取るね」

男は無言で首肯する。

「早速聞かせてもらうけど、今日あなたは飛行船の荷物を誰に届けたのかしら?」

手を男の肩に置いてパクノダは問う。

「し、知らねぇ」

「あら嘘はお勧めしないわよ。あなたの妹さん、リコさんが大事じゃないのかしら?」

「な、何故それを!?」

相変わらず趣味がいい。フェイタンもこれからの拷問を想像してニヤニヤ笑っているが今回はそんなに時間がないので手短にしてもらおう。

男から情報を得るとシャルナークに連絡してまた新たな運び屋を追うこと十数回、やっとのことで今回の取引相手の居場所を突き止めた。
フェイタンの拷問が無ければもっと早くに見つかったはずだが過ぎた事を言うのはよそう。

「それにしても“止まらない飛行船”<アン・ストッパブル>に乗るとは考えたわね」

アン・ストッパブルはその名の通り止まることのない飛行船だ。燃料も給油用の飛行船が並列して飛びながら給油するという徹底振りで、めくると飛行船の技術が確立された百年前から空を飛んでいるらしい。
乗るのも下りるのも移動しながら並列する飛行船に乗り換えねばならないが、飛行船でありながら世界十大ホテルの内の一つでもあり乗船は十年先まで予約で一杯だ。そして船外の警備は軍用ヘリが、船内の警備はハンター協会の選りすぐりで構成されている、なにやらきな臭い噂が絶えない有名な飛行船だ。

「なんとか乗車券は手に入れたけど取引相手がどこの部屋にいるかは分からないよ。
逆ハックされかけたからね。相当ハッカー対策されているんだな」

現在、事態の悪化に援護としてシャルナークも到着して俺、パクノダ、フェイタンと共に現在アン・ストッパブル行きの飛行船へ乗船している最中だ。

「そいう所に限て、人の警備はたいしたこと無いのが常よ」

「油断は禁物だよフェイタン。乗客の賞金首を狙って不法に侵入したブラックリストハンターが何人殺されたか知ってる? 三十五人だよ」

「ビビてるかシャルナーク?」

二人の間に殺気がぶつかる。団員同士のマジギレは禁止なので間に入って止める。
今からこんなで無事仕事は終わるのだろうか?


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