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今回だいぶ難産でした。
しばらく戦闘シーンは書きたくないな~

仙水さん仕事をする(3)


マチの後を追うのは思ったより簡単だった。
細かく刻まれた人の死体が道しるべのように廊下に転がっていたからだ。念糸を格子状にして“隠”でオーラを限りなく見えないようにし、敵をかたづけたんだろう。
相変わらず良い趣味している。

そのまましばらく先に進むと一つ少しだけ開かれているドアを見つけた。さも入ってくださいと言わんばかりの様子で、罠の可能性も高かったが、他にマチの手がかりが無かったので進む。
片手でゆっくりドアノブを掴み中を覗きこむが暗くてよく見えない。
意を決してドアを勢いよく開き出来た隙間に飛び込む。勿論罠を考え“堅”の状態でだ。

暗闇の中に人の気配がするのを感じるので油断は出来ず、身構えていると暗闇の奥のほうから声が聞こえてきた。

「そう警戒するな。くだらない罠は仕掛けちゃいない」

その謎の人物の声の後に照明がパッと点き辺りの様子が分かるようになる。
どうやらここは何かの劇場のようで、俺はその客席の中にいるみたいだ。

劇場の舞台の上でスポットライトを浴びている人物を見て驚かされた!

「コレオ!? 何故ここに?」

以前一緒に働いていた金髪の美青年コレオがそこにいたのだ!
甘いマスクで油断してはいけない。マフィアのボスのボディガードを務め、旅団のメンバーから逃れきるほどの念能力者なのだ。旅団のメンバーから逃げ出せれたのはおそらく何かの能力を使ってだとは思うが……
久しぶりに見たコレオはサングラスを掛けていること以外、以前と変わっていないみたいだった。

「久しぶりだな仙水

いいたいことはたくさんあるが、まずはこれを見てくれ」

コレオが指を軽く鳴らすとスポットライトが舞台の下を照らす。
その先には血まみれになって今にも生命の灯が消えそうな……マチの…姿があった。
俺は憎悪と侮蔑のこもった眼でコレオを睨みつける。

「おいおい、そんなキツイ眼でこっち見んなよ!

裏切られたのはこっちの方なんだぜ。お前がそんな眼でこっちを見る権限なんかないだろう」

まるで覚えの悪い子どもに諭すように話すコレオが酷く憎い。コレオはそんな俺の様子に気づきながらわざと無視して続ける。

「まさかお前があの悪名高い幻影旅団とグルだったんだとはな。

あの襲撃もお前が手引きしたんだろう。
おかげで俺はここの雇い主に出会うまで文字通り泥水を啜って生きてきたんだ!!」

「言い残すことはそれだけか?」

全力で殺気を飛ばすと今まで平静を保っていたコレオも耐え切れず、ジリジリと後ずさりし始める。

「今の俺じゃあお前に勝てない。

だからとっておきを用意したぜ。じゃあな!」

コレオはそういい残し舞台脇から逃れようとしたがそうはさせじと追いかける。
……が、その行く手を突然現れた何者かに塞がれた。

回り込んだ人物は中華風の服を着た老人で白髪を逆立て、胸のあたりから『一日一殺』と書かれた布が垂れ下がっている。見るからに怪しい人物だ。

というかゼノ=ゾルディックだった。コレオの雇い主はゾルティック家を雇うまで『リトルドラゴンの琥珀』にご執心らしい。いったいいくら払ったんだろう?
『リトルドラゴンの琥珀』よりも高いかもしれない。

「やれやれ、今回の雇い主は人使いが荒い」

おそらく、いや確実にマチを相手にしたのはゼノだろう。溢れ出すオーラの質がそこらの能力者とは比べ物にならない。オーラ量では俺が勝るかもしれないが実力、経験共に完全に向こうに分がある。ゼノが相手では『リトルドラゴンの琥珀』を盗み出すことと、コレオを追いかけて殺すことは不可能に近いだろう。

理想は今すぐマチを連れ出してここから逃げ出すことなのだが……

「さて、そろそろ殺ろうかの」

どうやらそうはさせてくれそうにないみたいだ。
ゼノはそう言うと俺の後ろに移動し蹴りを放った。心臓の位置を狙った良い蹴りをかわした後は、三発の蹴りと手刀を交えて攻撃してくる。
さすがに全部はかわしきれずわき腹にいいのを貰ってしまった。

ゼノ相手に出し惜しみはキツイ。いったん距離をとってオーラを爆発させる勢いで練をする。正真正銘、俺の全力だ。

「ほほう、まだオーラ量が上がるか

それに上手く隠しておるが変わった拳法を使うの。自己流か?」

ゼノは身構えて、そう聞く。

「元々は烈蹴拳だ」

そう言うとゼノは初めて少し驚いた表情になる。やはり烈蹴拳は珍しいのか?
格闘技に詳しいビスケでさえ気づかなかったので、この世界には烈蹴拳は存在しないのかと思っていたんだが……

「確かジジイが昔言っておったな、肉弾系格闘技では間違いなく史上最強だと。伝承者が消えもはやなくなったと聞いておったが……

元々とはどういうことじゃ?」

「つまり、これからはオリジナルということだ!」

言うと同時に周囲に数十の念弾をつくる。ゼノはそれに気づき急いで止めようとするが会話の間で既に準備は整っている。数十の念弾を一ヶ所にまとめゼノ目がけて蹴りだす。

「烈蹴ー紫炎弾っ!!」

蹴りの勢いで一度集まった念弾が散弾銃のようになりゼノ目がけて飛来する。ゼノは最初の念弾たちを危なげなくかわすが烈蹴紫炎弾の本領はここからだ。念弾はまるでそれ自体が意思を持つかのように再びゼノ目がけてあらゆる方向から襲っていく。

「ちっ、面倒臭いのう」

ゼノはそういいつつ、こちらに接近してきた。おそらく術者に近寄れば術者自身も念弾の餌食になると考えてのことだろう。だが甘い

「グッ!?」

近寄ってきたゼノは真横から来る念弾の気配に気づくのが遅れ、頬に赤い筋が浮かぶ。

「遠隔操作は出来ないとでも?」

本当は頚動脈を狙った一発だったが見事にかわされた。一応隠を使ったんだが空気の流れで分かったらしい。さすがかの有名な暗殺一家の一人だ。
それに比べて今の俺はさっきの念弾の遠隔操作でオーラを大分使ってしまった。やはり操作系に才能がないだけあってオーラの消費も半端ない。クロロがゼノとシルバ相手に闘ったと考えると改めてその凄さを思い知る。

「確かに少し厄介じゃが、制約はおそらくその場所から移動できる範囲が限られておるという物じゃろう。

遠隔操作にだけ気をつければそう恐れることはない」

たいした洞察眼だ。正確には烈蹴紫炎弾を使う時は半径2メートル以内から動けない。
いずれ操作系をもっと修行すればこの制約の範囲もマシになってくるとは思うが、それでも制約を知られたのは痛いので烈蹴紫炎弾の発動を止めた。するとゼノもこちらの意図を理解したのか肉弾戦の構えにはいる。


「ハアアアッ!!」

「カアアアッ!!」

互いに気迫の声をあげてぶつかりあった。
出された蹴りを、手刀を、上半身をそらしてかわし、手で受け流す。さすがに全てを捌ききることは出来ずガードするがその攻撃の重さは尋常じゃない。油断すればガードごと吹き飛んでいきそうなほどだ。
とはいえ防戦一方はジリ貧でいずれゼノが勝ちを取るだろう。少々の危険は覚悟の上で行かなければ……

「もらった!!」

鋭い手刀が右腕を切り裂き、鮮血が舞う。何年も付き合って傷だらけの腕が宙に浮かんでいるのはかなりの違和感を感じたが、そんなことを考えている間に出血多量で死にかねないので凝でオーラを集め、出血を防ぐ。

「まだだっ!!」

「何っ!?」

片腕をゼノの顔面目がけて蹴りだし、余った左腕で怯んだ様子のゼノの片腕を掴み腹部に膝蹴りをする。ゼノの肋骨が悲痛な叫びをあげて一本か二本ほど折れた。

ところがゼノの動きに目立った痛みは無い様子だ。片腕を犠牲にしてそれだけとはいささか卑怯だと訴えたい。

「……ワシもまだまだじゃのう」

ゼノが感慨深そうに言うと再び練をする。今までとは比べようもないオーラ量だ。

「今まで本気ではなかったのか……」

「まだまだ若造相手に負けられんわい」

ゾルディック家の異常さにため息をこぼすと同時にドォォーーンという爆音が背後からした。そこから拳大の瓦礫がマシンガンのように辺りを襲うが八割は蹴り落として、残りの二割は反射的にかわす。
できればゼノは巻き沿いになって欲しかったが、当然のようにかわして非常におもしろくない思いだ。

突然の乱入者にゼノは怪訝な表情を浮かべていたが、俺としては非常に助かった。あのままやっていたら十中八九負けていただろう。

「何だ? まだやってんのか仙水。
ブツは頂いたからさっさとずらかるぞ」

突然の乱入者、フランクリンはその大穴から片手にオレンジ程の大きさの琥珀を抱えて現れるとそんな暢気な事を言う。だがフランクリンが来たことで勝機が見えた。
ゼノ相手に二人してかかれば5%ほど勝機が上がる。たった5%だがそれでも随分マシになるだろう。

気分を入れ替えて戦闘態勢に入るがゼノは対照的に戦闘態勢を解いて服についた埃を振り払い、見るからに戦闘意志は無さそうだ。

「やらないのか?」

「ワシの仕事はそれ・・が盗られるまでという契約じゃからのう。」

そう言うとゼノは何の未練もなさそうに帰って行った。
俺は体が疲労で今にも倒れそうな中、マチと千切れた腕を拾う。
マチの血で背中がベトベトする感触が昔死体を運んだ嫌なことを思い出させるが、マチの心音は確かにまだある。千切れた腕の方はどうなるか分からないが、マチの体力は常人のそれとは比べ物にならないので腕の良い裏の医者に見てもらえばなんとかなるだろう。



後、フランクリンが今更俺とマチの状態に気づいて騒ぎ出したが無視しよう。



次回から仙水さんを強化していきます

聖光気もそろそろでちゃうかもしれないwww

読者の皆さんには本当に感謝しています


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