仙水さん仕事をする(1)
「そんな隅でチビチビとやらずにこっち来てもっと飲めっ仙水!!」
あれからしばらく旅団の仕事を手伝うようになり旅団のメンバーと親しくなった。ノブナガは酒に酔うとやたら絡んでくるという酒癖の持ち主であることも見ての通りだ。
なかなか動き出さない俺に焦れたのかノブナガは片手に『美男子』と書かれた酒瓶をもって隣の席に掛けたがあまりに勢いよく座ったのでこけそうになっていた。
「もうやめておけノブナガ」
親切心で声をかける。
「そんなことより仙水、お前さっさと旅団に入っちまえよ。団長にも言われてるんだろう?」
「またか……」
何度も断っているのでノブナガも本気で誘っている訳ではないようだが酔うと半ば決まりきったように同じセリフを繰り返すのでノブナガの相手は大変だ。
シャルナークもグラス片手に横目で見ているがあれは助ける気が無さそうなので役に立たない。他の助けを求める為に視線を走らすがフェイタン達は仕事先で捕まえた一人を拷問しながらそれをつまみに酒を飲んでいるようだし、シャルナークやボノレノフなどの傍観組みは頼りになりそうもない。ノブナガと仲の良いウボォーギンならどうにかしてくれるかと思ったが一人樽でワインを飲んでいるところを見ると他の連中と比べて役に立つとも思えなかった。
女性陣は……パクノダはまだ俺相手に怯えているようで向かいの席に座っただけで膝の震えが止まらなかったし、マチには嫌われているようで仕事以外は話しかけてもほとんどシカトだ。そこまで嫌われる覚えは無いのだが事実嫌われているのでどうしようもないだろう。
クロロに至っては言うまでも無く片手に本を持ちながら自分の世界に入っている様子なので希望は持てそうに無い。最初から希望は持ってないのだが…
現実逃避気味に他の人物に頼るのは止めにして泥酔したノブナガを担いだまま店を出ようとするとシャルナークが、
「ノブナガ送ってくれるの?」
とたずねて来たがそんなつもりはもうとうなく外の通りに置いておくつもりだと答えるとシャルナークは引き気味に笑っていた。もう外は雪がちらつき始めていて夜は氷点下を超えるであろうがそれは俺には何の関係もないことだ。おそらくノブナガは酔いを醒ますために外の冷たい空気にあたりにいってそのまま眠ってしまったのだろうと、翌朝モノ言えぬ屍となった故人を前にして旅団の連中(シャルナーク以外)はそう考えるだろう。
本当にかわいそうなことだがそれが現実なのだ。
「ヘックショーーイ、グスッ……あれ何で俺こんな所にいるんだ?」
ゆっくり起こさないように気をつけて通りに置いたところそのような反応をされたので興が冷めた。凍える中バーに戻り帰る旨をクロロに告げると貸していた本が返ってきたので感想を聞くと、なかなかだったとだけ言って再び本を読み始めた。その本を受け取り団員に軽く挨拶してホテルに帰る。
ホテルに戻り自室に入るとすかさず念の訓練に移る。来たるキメラアントとの戦いにおいて王クラスとまでは言わないが王直属の護衛であるユピー、プフ、ピトーと渡り合えるぐらいの実力はつけていなければならないしこの先原作に出てこない強敵が現れることも十分ありえるからだ。聖光気さえ纏えればそんな心配はいらないのだが未だその兆しは見えないので今は烈蹴紫炎弾の為に操作系の系統別修行を始めている。原作に描かれてなかったのでとりあえず手の平大の念弾をつくりそれを部屋の端から端へ移動させるようなことをやってみた。
口で言うのは簡単だがこの操作は予想以上に難しい。放出系と具現化系は100%の才能を持っているのだが他の系統に関してはせいぜい20%しか無いと神に言われたのはどうやら本当のようだ。のろのろとハエが止まりそうな速度で進む念弾を見てくじけそうになるが才能が無いと諦めるのはまだ早い。
強化系のネテロ会長の念能力は『百式観音』、あれは完全に具現化系と操作系が入っている。
ヒソカ風に言えばカストロのようにメモリ不足になるはずなのだがネテロの能力はそのような兆しがない。この差は純粋に念能力者としての経験の違いによるかもしれないがおそらく大部分はオーラ量の多さで説明できるだろう。つまり苦手な系統でもそれに費やすオーラ量を増やせば能力は発動できるということだ。
今度は念弾に費やすオーラを通常よりも多くしてやってみる。
すると先ほどより何倍も素早く部屋の端から端へと移動したがそのスピードを制御出来ず窓を突き破ってしまった。まだまだ練習が必要なようだが烈蹴紫炎弾の道は開けた。消費するオーラ量さえどうにかして少し制約をつければ十分実現するだろう。
続いてオーラ量を増やすために練の持続時間をのばす特訓もする。今のところ楽にできるのはせいぜい五時間までといったところでゴン達より少し長いが放出系の技はオーラそのものを飛ばすので具現化系に比べると燃費が悪い(と思う)からオーラは必要だし、オーラが多くて悪いことはない。最近はオーラが自分で見ていて分かるほど静かにそして力強くなっているように感じ、顕在オーラ量もだんだん増えていっているように思う。
このまま念の修行が順調に進めばいずれ聖光気を纏える日がくることだろう。
しばらくその調子で練をしているとドアをコンコンと叩く音がした。
誰だろう?と思いながらドアを開けると一番有り得ない人物がそこにいた。
「伝令の変更よ」
そういえばマチは指令役だったなと思い出し納得した。とりあえず詳しい話を聞こうと部屋の中に招き入れようとしたが、マチは部屋の中にさえ入る気は無いようで改めて嫌われていると実感しため息をつく。
「それで……?」
「フヴァロン家の『リトルドラゴンの琥珀』奪取、最初はあんただけで実行する予定だったけど最近腕利きの念能力者が多数雇われたらしくてね。(まぁ、ついさっきシャルナークがハンターサイトで調べた情報なんだけど…)
あんた一人じゃ無理っぽいんで団長があたしとフランクリンも連れて行くようにだって」
『リトルドラゴン』というのは三億年前に存在した体長五センチ程のトカゲのことでつい最近までそんな時代にトカゲは存在しないとしていた学者たちの発言を黙らせたのが『リトルドラゴンの琥珀』だ。その名の通り樹液の中に閉じ込められたリトルドラゴンが長い年月を於いて琥珀へと変わったものでその価格は一億とも二億とも言われている。
フヴァロン家によって保管されているそれは近年国の博物館に寄付され警備が更に頑丈になる前に頂くと言う話しだったのだが……
「なぜ情報が漏れたんだ?」
「あたしが知るわけないじゃない」
「……だろうな」
このことを知っていたのは俺を除いて団長とシャルナークだけだったはず。
二人が情報を漏らすはずが無い。となると内通者の線は薄いから誰かが情報を盗み見たとしか考えられないのだが……
まぁ考えても仕方無い。だが次からは情報をより厳重に扱わなければならないな。
マチは俺が了解した旨を伝えるとさっさと帰っていった。
明日の仕事もあることだし今日の修行はこれぐらいにしてもう寝ようかと思ったが部屋は破れたガラス窓から冷たい風が吹きこんできてカーテンは外からの風の強さを表すように激しくはためいている。さすがにこの部屋で眠る気にはなれずホテルの受付に連絡して窓の修理代を払って部屋を変えてもらった。
明日は少しマシなことがあるといいのだが
更新が遅れた理由は……クッ、言えません
なぜなら突然目の前に現れた鎖男に”律する小指の鎖”なる鎖を心臓に打たれ更新が遅れた理由の一切を話した瞬間自分の心臓が握りつぶされてしまうからなのです。
読者の皆様に真実を伝えられないことは本当に悔しいですが……
あの、すみませんでした!!次は更新を早くするよう努力します!!
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