仙水さん闘う
黒塗りのリムジンの中から見る星空は都会のビルからもれる人工光に大幅に力負けしているが綺麗であることに変わりない。車は高速を変わらない速度で飛ばす。
「君はいったい何者なんだい?」
「…その質問は俺がさせてもらおう」
助手席に座っているクロロがそう言うと後部座席にいる俺を右隣にいるマチが念糸を首に当てて脅すようにするが脳内ではどう逃げようかという考えしかなかったのであまり気にはならなかった。しかし左隣にはボノレノフが、そしてその左にはリムジン内を窮屈そうな表情をしているウボォーギン、ウボォーギンが頭に手を伸ばしてくるのを嫌そうにするシャルナークがいたのでどうやらこの場での脱出は不可能らしい。
俺はあきらめて答えるとした。
「君が知ってのとおり俺はただの『黒の章』の作者さ」
「まぁ、今はそれだけでいい。直に全てが分かる」
クロロの発言から推測するとこの車はパクノダのいる場所に向かっているようだ。でなければそんなことを言うはずがない。
しかしだとしたらヤバイな。記憶を探られ原作を知っていることをパクノダに知られると非常に不味いことになる。
「……俺以外にあの場から逃げたしたものはいないのかい?」
「一人念能力者が逃げ出したようだよ。
何か特別な能力があるのか追いつけなかった。あんたの友達かい?」
「さぁどうだろうね」
「団長!!何でこいつだけ生かして連れてきたんだ?」
ウボォーギンが俺の態度と車内を更に狭くしている俺にいらついたのか大声で叫ぶ。
「ちょっ、ウボォー!こんな近くで大声出さないでよ。鼓膜が破れるかと思った」
「すまねえ。で、何でだ団長?」
「そいつはパーティーで何が起こるのかを知っていた。」
「それはこの人の念能力なんじゃない?」
「バカ言えシャル!そいつは俺らと一緒の戦闘狂だぜ。血の匂いがプンプンする」
「俺は戦闘狂じゃないから一緒にしないで欲しいんだけど……」
呆れたように言うシャルナーク。
「ま、でもそいつはたぶんそんな念能力じゃないと思うね。」
「勘か?」
クロロが助手席から聞く。
「勘だよ」
高速から降りた車は廃墟と化したビルの前に止まりさっさと降りろとばかりにマチに押されたが危なげなく着地する。どうやらヨークシンでアジトにしていたような所らしくビルの中も夜の冷たい隙間風が吹いていて住み心地が悪そうだ。マチに両手を後ろで組まされた後念糸で拘束されながら奥へ奥へと進む。しばらく進むとどうやら目的地である開けた部屋にパクノダとノブナガ、フランクリン、フェイタン、フィンクスの初期メンバーがいた。
「よう、遅かったじゃねぇか。
って誰だそいつは……?ボノレノフに次ぐ新メンバーか?」
ノブナガがそう言う。
「そういえばこいつ見覚えあるね。たしか電車に乗てたよ」
「団長直々の推薦か?」
「んなわけないでしょう。団長の気まぐれで連れてきたの」
「パクノダ、こいつの記憶を見ろ。」
団長はやはりそう言う。どこか逃げ出す方法は無いかと探したが入り口の扉はウボォーキンが塞ぎその隣にはノブナガが刀に軽く手をあていつでも斬れるよう準備をしている。おまけにすぐ近くには団長がいるような状態だ。到底抜け出せない。
パクノダがゆっくり頭を掴もうと手を伸ばしてついに頭に触れる。
「じっとしてなさい直ぐ終わるから。あなたの隠したいことは何?」
頭の中を読み取られていく感覚がすると同時にスイッチが入ったような感覚がした。
「ヒイイッッッ!!何でっ!?……こ……こんな!!??」
「どうしたパクっ!?貴様っパクに何をした?」
ノブナガは俺の首に刀を当て動揺した様子で止めるよう促すが一番動揺したのは俺だ。念も何も使ってないというのに目の前の人間がいきなり叫びだして驚かない奴などいないだろう。それほどまでにこの世界が漫画の世界だというのに驚いたのだろうか?それともいまだ知らない何かが起こったのか?
謎は深まる。
しばらくして動揺が収まった様子のパクノダだがこちらを見る目は完全に恐怖して顔も青ざめている。
「何があったパクノダ、最初から話せ」
「はい団長。しかし最初に言っておきますがこいつは危険です。
今すぐ釈放したほうがいいかと」
パクノダのその発言に俺は勿論驚いたがそれ以上に団長であるクロロを除く旅団のメンバー全員が信じられないような顔をする。マチやノブナガはその訳を問いただそうと口を開きかけるが団長が手で制止をかけたので二人とも黙り込む。
「それは俺が判断する。話せ」
「私がこいつの記憶を見たところ最初はここからどう脱出するかについて考えていましたがすぐに、まるで人格が入れ替わったように記憶が変わりました。
『皆殺しだ』『全ての人に墓を掘る』『俺達二人で墓を掘る』という言葉と共に異常なほどの殺意に溢れた記憶は吐き気を催すほどに強く私は耐え切れずに手を離したんです。
今考えてもゾクゾクします。あれほどの殺意はありえないわ」
間違いない。忍だ
エリの一件以来目覚めた人格が俺の中で眠っていたようだがパクノダの記憶を読み取る能力に感化され出てきたというのがおそらく正しいだろう。忍と俺はかなり近しい存在だが俺は忍ほどの殺人衝動を持ってないのが唯一の違いだろう。
「……それは旅団員であるお前を震え上がらせるほどの殺気というわけか」
「はい」
クロロは何か思案事でもあるのか黙る。またしばらくして一言
「ウボォーギン、こいつと闘え。殺しても構わん」
「待ってたぜ団長!!」
ウボォーギンはそう言うと一足早く部屋から出て行った。パクノダに記憶を読まれなかったことは良かったのだが人生とはそう上手くはいかないものだなとため息まじりに後をつづく。
外は少し肌寒かったが体を動かす分には申し分ない。
ビルの上からは旅団員達が戦いの様子を見るために集まっていたがその動機は不純なものらしい。
「あたしは十秒以内に終わるに10万ジェニー」
「俺はそうは思わないな。あの人強そうだし三十秒は持つんじゃない?
ノブナガはどう思う?」
「そうだな奴もなかなかの腕前だがウボォー相手に一分もつか持たないかだな」
「動きいいね。でも一分以内に終わるに百万かけるよ」
「じゃあ俺は二分」
「俺も二分だな」
外野が随分騒がしいな。
「じゃ、そろそろ行くぜっ!!」
ウボォーギンはそう言うと念で強化されたせいか足下のアスファルトを砕きながらすさまじいスピードでこちらへ向かってきた。強化系を極めたウボォーギンの攻撃は練をしてても一発くらうと相当やばいがそう簡単には受けない。
「喰らえっ!!」
大振りのアッパーが俺を狙うがそのような攻撃が俺に当たるはずも無く、その後に出された普通では見えないはずの蹴りも上体を反らすことで軽くかわす。そして必殺の一撃がかわされたことでバランスを崩したウボォーギンの顔を蹴り飛ばす。
一瞬の出来事がショックで地面に伏せたウボォーギンはまだ自分が何をされたか良く分かってないようだ。
「確かウボォーギンとか言ったね。
……君のパワーを10とすると俺は4と5の間くらいだろう。スピード、バネ、スタミナ全て君が上だろうな。
君のほうが俺を上回っているのに勝てない……何故かわかるか?」
「ほざけっ!!」
冷静さを失った様子のウボォーギンは動きが荒くなり、隙を見せたところを再び蹴り飛ばしたが頬から少し血が出ているぐらいであまり大きな怪我はしてない。
距離をおいて少し油断しているウボォーギンの姿を見て俺は手のひら大の大きさの念球をつくる。そしてできあがったそれをウボォーギン目がけて蹴りだした。
「烈蹴紅球波っ!!」
「ぐうっ!!」
ふいをつかれたウボォーギンの腹に見事命中するとそのまま三メートルほど宙を舞った後痛ましい声を上げる。
観客はまさかウボォーギンにあれほどのダメージを与えるとは思ってなかったらしくフィンクスは賞賛の口笛を吹く。
ウボォーギンがよろよろと起き上がる様子からどうやらあばらが折れたらしい。
「降参するかね?」
「誰がっ!」
さすがタフが売りな強化系らしく動きに衰えが見えない。むしろどんどん速くなって行く。
上体だけで攻撃をかわすのもしんどくなりその場を離れるためにバックステップする。
するとウボォーギンはそれを待っていたかのような笑みを浮かべた。
「くらえっ、破岩弾ん!!」
その声と共にアスファルトの塊が飛んでくる。全ていなしたが目の前には既にウボォーギンはいなかった。後ろに気配を感じて振り向いたがもうウボォーギンの予備動作は済んでおり顎のあたりを殴られ空へと打ち出される。
「終わったな。やっぱウボォーギンの勝ちだ」
「つまらないね。結果わかてたよ」
が、飛ばされた先の建物を蹴った反動で再び隣接して攻撃に入る。
「「「「「「なっ!?」」」」」」
ウボォーギンも反応して一撃目を防いだのは敬意に値するが二撃目からは反応できずいいようにされアスファルトに強く体を打ち付けられる。
「君が勝てない理由その一、俺には君の攻撃がなんとなく読める。」
「どういうことだ?説明しやがれ!!」
「つまりキャリアさ。幼い時から魔獣と戦ってきた戦歴。
さっきみたいに不意をつかれ攻撃をくらっても
戦いの勘ってやつが反射神経よりも俺を動かし致命傷をさける」
実際はそれに流も会わせて使っているのだが自覚がないのでよく分からない。
再び片手に念球を俺はつくりだす。
「打たせるかよっ!!」
突っ込んでくるウボォーギンの蹴りや拳を片手で捌きながら後ろへ跳ぶとそれに合わす様に前へ跳び再び攻撃をするウボォーギン。一度大きく後ろへ跳びウボォーギンが近寄ってくる前に念球を構えて蹴りだすモーションに入るがそれをさせじと念で更に足を強化し、放つ前の念球を潰せるタイミングをつかまれる。
そしてウボォーギンが潰そうとした念球は目の前で消える。
俺が放とうとした念球を自ら消したことに驚いたウボォーギンはまだ念球を蹴ろうとした俺の足が生きていることに直前で気づいたようだが時既に遅し。
ウボォーギンはそのまま首を蹴り飛ばされ打ち所が悪かったのかピクピク痙攣している。
心配したのかシャルナークがビルの三階から飛び降りて確認した。
「大丈夫、気絶しているだけだよ!」
重そうに気絶したウボォーギンに引きずられて部屋に戻ると様々な視線が飛んできたが大部分は好意的なものだった。
「お前の次の相手は俺な」
「フィンクス、止せ。お前は着いて来い」
その後はクロロの案内に従って建物の中を移動した。案内された部屋は何かの動物の毛皮が敷いてあってその上に椅子が二脚並んでいる。
早速クロロに勧められて座ってみるとひじ掛けがピッタリ合い我が家にも一つ欲しいものだと考えた。
「最初電車で会った時何か核心めいたものを感じた」
クロロは向かい側の席に座るとそう語りだす。
「お前と俺はどこか似ていると。」
「『黒の章』にしたってあの考えは殺人を日常のものにしている者の考えだ。違うか?」
「要するに君は俺に何を求めているんだ?」
「幻影旅団に入れ」
「……それは心引かれる提案だが君達と俺は求めているものが違う。」
少し迷ったがもうこの意思は固まっている。
「いったい何を求めているんだ?」
「人の粛清だよ。」
忍とは違った方法で俺は人を粛清する。それが例え偽善だろうと悪であろうと……
「……そうか」
「だがクロロの友人なら俺は受け入れよう」
「……友人か、そんな便利な利害関係があったとはな。」
「本心だよ」
「知っているさ」
仙水とクロロ、二人は仲良しっ!!
てな感じで終わった今回ですが以前からこの二人は良く似ているな~と思い仙水は誰かの下につくようなタイプではないと思ったのでこのようなことになりました。
どうぞこれからもよろしくです!!
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。