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仙水さん出会う



人通りの多いカフェテラスでブラックコーヒー(に砂糖とミルクを混ぜたもの)を飲む。砂糖が舌に心地良い。
しばらくそうしていると通りの向こうから見知った顔が来てため息をつく。奴が来て良い話しを持ちかけたことなどないのだ。

「仕事だぞ仙水」

「また殺しか?」

「いや、今回はどうやらボスのコレクションの警護らしい」

あれからヨルビオン大陸に渡った俺は念の力を生かすためにマフィアに雇われた。
最近の命令は組織を裏切った奴やボスの命を狙ってくる念能力者を殺す仕事ばかりで、別に人殺しに忌避感は無いが同じことの繰り返しに少々飽いていた。
そしてそんな俺に話しかけてきたのは俺と同時期に雇われたボスのボディーガード兼やっかいな事件担当のコレオという奴で見た目は爽やか系の金髪青年だが、優秀な念の使い手でかつては連続殺人犯として監獄暮らしをしていたところボスにその力を見込まれたらしい。
はっきし言ってどうでもよかったが割かし年の近い俺にやたらと絡んできて以上のことを延々と語るのですっかり覚えてしまったのだ。男の過去には興味が無い。

「で、それだけかい?」
こいつのことだからそれだけを伝えに態々会いに来ることもあるまい。

「……実は昨日ボスが夜俺を部屋に呼び出してな。

今日の夜のパーティーの護衛についてかと思ったがどうやら気色が違うらしい。

もっと近くに寄れと言われて近づいたら今まで部屋が暗くて気づかなかったがなんとボスは裸でいたんだ。五十近いおっさんがだぞ!その場は明日の準備がありますのでと言ってなんとか逃れたがあれは完全に俺を狙っていた目だった。間違いない!!」

「仕事を止めようにも、ボスとの契約を見捨てて犯罪者の君が再就職する場所は無いに等しい。滑稽だよ、これは」

「他人事だと思って…」

「おや、違ったかい?」
俺の言葉にグウの音もでないコレオ。
さすがに可哀そうに思えた俺は話を変えようと仕事の件についてくわしく聞く。

「さっきいったように今日の七時からマフィアのお偉いさんたちが集まるパーティがあるのはお前も知っている通りだ。
そこでボ…ボスが大事にしているベンズナイフのコレクションを自慢するんだとさ。
勿論厚さ一メートルの防弾ガラスで四方が覆われて構成員たちにもマシンガンを持たせて警備させるが、もしも念能力者が盗もうと思ったらそれは不可能じゃねぇことはお前も良く知っているだろう?

そこで用心のために仙水が陰で守ってくれたら安心だ。
まぁ、俺はおそらくボ…ボスの護衛になるんだろうけどな……」

再び落ち込むコレオ、正直見ていてウザイ。

「警備主任は君なんだろう?

だったら配置を変えればいいじゃないか。」

「クッ……その手があったか!?今からボ…ボスに掛け合ってくる!

あと警備班の集合はPM5:00にいつもの場所だそうだ。またなっ!」

急いで駆けていくコレオを横目に時計を見ると午前十時を示していた。
まだ時間はあるから念の修行でもするか。

護衛たちにあてがわれた家に帰ると地下室で練を始める。
オーラの色が聖光気の色である黄金色に未だならないのは何故なのだろうと思いながら応用技に移る。円や流は中々難しくて拾得できてないが隠は身に着けた。戦闘において隠はかなり役立つ、特ににわか念能力者は凝を怠るのでその効果は大きい。
以前も烈蹴紅球波を戦闘の中隠で隠して打ったが相手は気づかず頭を吹き飛ばした。未だ威力は原作ほど無いのでこれから修練が必要だろう。

気鋼闘衣は何故か上手く出来ない。イメージ等の修練が足りないせいかもしれないが聖光気を得てないのが原因だと思う。
いったいどうしたら聖光気を纏えるんだ?
仙水だって聖光気を纏うまでに十年近くかかったので単純に修練不足かもしれないが…


とりあえず現段階で出来るのは念の修行しかないので只ひたすらにやるのみ

系統別の修行で烈蹴紫炎弾、多数の烈蹴紅球波が襲う技のために操作系の訓練をしていたがふと時計を見ると既に四時前だったのではしごを登りシャワーを浴びて新品の服に着替える。
服は基本的にいつものやつなので選ぶ手間が省けて良い。
適当に食事を済ませると集合場所へ向かった。

移動は電車だ。俺はコレオみたいなボディーガードではなくもっぱら荒事専門なのでボスの屋敷からは少し離れたところに住んでいるのだ。
あの仙水が電車にのっていると考えるとかなりシュールで笑える絵だろう。
そんなことを考えながら混雑した電車の中で席を探したがなかなか見当たらない。電車の後方に一つだけ席が空いていたのでその席の隣にいる本を読む人物に声をかける。

「そこ、いいかな?」

「…ああ、構わない」

了承して貰えたようで安心して座るが座った瞬間に鋭い視線が飛んでくる。どうやら隣の人物からでは無く後ろの席からと向かい側の席の女性からのほうからだがマフィアの世界じゃよくあることだから気にしない。
目的地に着くまで暇なので向かい側の女性に話しかける。

「君達はどこへ行くんだい?」

「……あんたに関係ない」

どうやらご機嫌斜めのようだ。そんなに隣の人物と一緒にいたかったのだろうか?
この女性と話すことは諦めて隣の本を読む人物と話すことにする。

「君のその本もしかして『黒の章』じゃないか?」

「これを知っているのか?」

「ああ、俺が作者だ」

もちろん名前は仙水が人間を本格的に嫌悪し裁かれるべきだと考えるようになった決定打のビデオテープ『黒の章』からつけられた。人間が行ってきた罪の中で最も極悪で非道なものが何万時間という量で記憶されたそれはビスケと別れた後に書き出版された。
内容は人間が行ってきた罪を哲学的に書いた簡単なものだったが一部の熱狂的なマニアが人間に絶望して人殺しが行われたので本の発行は中止になり今ではレアな存在だ。
忍のような精神状態になった時書いたもので今でも見ると少しぞっとする。

「このページの考察についてだが…」

「ああ、ここは…」

その後は会話も弾み道中は楽しかったが目の前の女性は不機嫌そうな表情をし続けていたが後ろの席の連中は驚きと好奇の入り混じった視線を向けてくるようになった。
楽しい時間はあっという間に過ぎ電車は目的地に到着した。ホームには既にマフィア達がゴロゴロして待っていた。

「ここでどうやらお別れのようだ」

「奇遇だな。俺もここで降りる予定だ」

「そうか、またどこかで会えるといいな」

「ああ」

そういえばまだ名前を聞いてなかったな。

「俺は仙水 忍だ。君は?」

「クロロ=ルシルフルだ」

俺は動揺を必死で隠して軽く手を振る。クロロも不思議そうにはしていたが何事も無く別れた。

俺は構成員の一人が迎えに来たリムジンの中で考えた。
十中八九旅団の狙いはボスのベンズナイフコレクションだろう。少なくとも二十点はある
ということは最低でも一億ジェニー、ボスはレアもの好きだから五億はいくかもしれない。
そしておそらくクロロはベンズナイフの愛好家。

旅団が狙うはずだ。
クロロはオールバックじゃなくて額に包帯巻いていたから気づかなかった。
……ということは俺の目の前にいた女性はマチだな。後ろの方にいたのはその他の初期メンバーだろう。どうやら今日でこのファミリーは潰れるらしい

欝な気分のまま集合場所に着いたことを運転手に言われゆっくりリムジンを降りる。
マフィアが抱える戦闘部隊がそれぞれ武器を持って集合していたが旅団の連中を見た後ではゴミにしか見えない。

「遅いぞ仙水」
俺を見て声をかけるコレオ。

「まだ時間にはなってないようだが、

こんなところにいて大丈夫なのかい、ボスの護衛はどうした?」

「外してもらったんだ。」
コレオは嬉々として言う

「そうか、それは可哀そうだ」

「何でだよ!」

ボスの護衛ならまだ生き残るチャンスがあるがベンズナイフの警備ならほぼ確実に殺されるだろう。まったくもって可哀そうだ。
その後は若くして警備主任についたコレオからの戦闘員の配置といざという時のプランについての説明があったがほとんど俺は聞いてなかった。どう考えてもそのプランの中にA級首の盗賊団が襲ってきた時の対処方法が想定されているとは考えられなかったからだ。
実際出来ることは逃げることぐらいしかないが……

「コレオ、君はボスのボディガードに戻ってここから逃げたほうが良いぞ」

「やだよ。駆け落ちじゃあるまいし何故俺があんな奴と逃げなくちゃならんのだ。」

「君にとってその方がいいんだけどなぁ」

「殴るぞ仙水」

忠告はしたから後はもう知らない。

クロロ達が来たらどうしようか。まだ原作ほど強くなっていないから一対一なら勝てる自信があるが複数でかかってこられたらたぶん死ぬだろう。

考えごとをしていると時間はあっという間に過ぎパーティーは始まった。
きらびやかなドレスを着た貴婦人たちや各ファミリーの幹部たちがぞろぞろと入場し、舞台には有名なオーケストラが演奏している。小さな子どもがテーブルの上の食事を口いっぱいに詰め込み親達はワインで乾杯する中ベンズナイフを警備するために配置された構成員たちがもっているマシンガンが酷く浮く。俺はパーティー会場の中を絶で気配を消しながら移動していた。基本的に陰で怪しい者がいないかを調べ不足の事態が起きたときに対処するのが俺達の役目なので行動はあまり制限されていない。未だ客の中にも幻影旅団らしい姿はないので大丈夫だろう。
すると警備前に渡された小型の耳につけるタイプのトランシーバーから声が聞こえた。

『そっちはどうだ仙水?』

「問題ないようだ」

『そうか。引き続き警備を頼む、何かあったら連絡を入れろ』

「了解」

そのままパーティーは続いた。ボスが自らベンズナイフコレクションの前に立ち長々とこのナイフを集めるようになったきっかけやどのような経緯で手にいれたのかを招待客の前で自慢をしている様子は呆れたが概ね周りの客からは人気があった。
きっといくつもの敵対するマフィアを潰したり、欲張りな商人を逆に騙して安く買った話が同じマフィアとして関心がもてるのだろう。そして最後にコレクションの中で一番高価なものの説明を始めるころには周り中がたくさんの人で覆われているほどだった。

「では最後にこのベンズナイフについてですが……」

『皆さま、これが最後の曲です。かの有名なホルストにあやかって『木星』です。

どうぞ楽しんでお聴きください』
その間を計るようにして、いや実際計ったのだろう。
突然舞台の上の進行者がそうマイクで告げた。

「おっと、ではまたこの曲が終わった後に説明させて貰いましょう。」
もったいぶるボスのやり方に衆人は皆不満の声を漏らしたがこんなことは良くあるので仕方無いとばかりに苦笑を浮かべる。

音楽は有名だったので俺もよく知っていたがあまり聞き覚えの無い笛のような楽器の音はなんなのか分からなかった。フルートやピッコロでもない音は耳の肥えた一部の客は気づいたようだが綺麗な音だったのであまり気にしてないみたいだ。
だが曲が終わる頃に突然オーラを感じた俺は嫌な予感がしてその場の地面を強く蹴って離れる。

「戦闘演舞曲『木星』!!」

地面が揺れ、耳が大きな破壊音を捉えると同時に巨大な天体がボスとその周りにいたたくさんの招待客を圧死させる。その音がおさまると中心部は大きな穴が開いておりあたりは血まみれでもはや人は原型を留めていない有様になっていた。

「そう来たか…」

「何がだ?」

早速手に入れたベンズナイフを俺の首に突きつける幻影旅団の団長がそこにいた。



次回戦闘か!?はたまた恋愛か!?もしかするとコメディかもしれない!?

え~と……じゃあ戦闘で

また会いましょう読者の皆さん!




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