ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
  東方典型録 作者:葛城
ある読者の感想で、目が覚めました。
いかに自分がおっぱいに洗脳されていたということに。おっぱいを書くことに満足し、真の目的であるハーレムエロスの追及を蔑ろにしていました。
ただのおっぱいでは意味が無いのです。ただエロいだけではだめなのです。
重要なのは、エロス。おっぱいにも、エロスが必要なのです。目から鱗、いや、めからおっぱい、いや、目からエロスとは、このことか!
幻想の果てで
 酔っ払いというものは、何時の時代も手が掛かる。泣き上戸、笑い上戸ぐらいならば放っておけばよいのだが、絡み酒になると、そうもいかない。
 とくに、屋台のような逃げるに逃げられない状況だと、さらにうっとうしいことこの上ない。たとえ彼にとって初対面だろうとも、それは変わらない。

「よう、知っているか?」

 赤ら顔の初老の男の問いかけに、彼は首を振った。何がおかしいのか、締まりのない笑みを浮かべて、こちらへもたれ掛ってくる。知っているか、知らないかの主語の無い質問だから、知っている方がおかしいのだが、それをいちいち指摘するのは無粋だし、酒の席だ。気持ちよく酔っている相手に合わせるのも、大人の対応というやつだろう。

「へへへ、そうか、知らないか、へへへ」
「気味の悪い笑い方だな。冷やかしなら、俺は帰るぞ」

 「へい、お待ち」。席を立とうとした彼の眼前に、おでんが置かれた。狙ってやったとしか思えないタイミングに、店主を睨む。
 しかし、そんなことは日常茶飯事なのだろう。服の上からでも分かる、筋肉隆々の彼の視線にも、どこ吹く風と言わんばかりに菜箸で具材を突いていた。しばらく睨み続けるも、効果が無いと悟った彼は、目の前に置かれたおでんへと視線を下ろした。
 ほのかに湯気が立つそれは、なんともいえない美味そうな香りを放ち、彼の食欲をくすぐる。「そうだった」、と、既に注文していたことを思い出す。まだ手を付けていないので、突っ返すことも出来るが、せっかく用意されたのだ。食べないのは礼儀に反するだろう。
 これまたタイミングよく、酒の入ったコップがおでんの横に置かれる。何から何まで、店主の掌の内……か。まあ、今日はそういう日かな、と彼は思い、おでんに箸を付けた。

「それで、おっさんの知っていることって、いったいなんだい?」
「へへ、ひっく、へ、知りたいか?」
「はいはい、知りたいよ。すごく知りたい。このまま勿体ぶられたんじゃ、今日は心地よく眠れないだろうね。俺の安眠の為にも、きっちり教えてほしいかな」

 彼の懇願が、よほど心地よいのだろう。喉を潤す為か、右手に握っていたコップに口づけて、傾ける。中に入っていた酒を音を立てて飲み干すと、またもや音を立ててコップを置いた。

「そんなに知りたいなら教えてやるよ。へへへ、耳の穴をよく掃除してから聞きな」

 やっぱ、面倒だから聞きたくない。そう言いそうになるのを、彼は寸でのところで呑み込んだ。

「実はな、ここでの話……『妖怪』って、本当に実在するんだよ」

 久しぶりに聞いた言葉に、思わず肩が跳ねた。幸いにも、店主も男も、それに気づいた様子は無い。それまで、黙って大根を突いていた店主が、口を開いた。

「妖怪、か。俺がガキの頃、よくお袋から言われたなあ。河童と相撲を取るな、尻子玉を抜かれるぞってな」
「おっ? オヤジも信じている口か?」

 男の目に喜びの色が浮かぶ。あんまり、賛同を得られないと思っていたのか、唇の端が弧を描いている。
 自然と、彼の視線が店主へ向けられた。あんまり注目していなかったので分からなかったが、目元に刻まれた皺は思いのほか深い。指先の具合を見て、もしかしたら初老の男よりも歳が上なのかも、と彼は思った。

「信じている……ていうものでもないよ。ただ、今にして思えば、あれは妖怪の仕業だったんじゃないかな、って思えることがあっただけさ」
「へえ、いったい何があったんだい?」
「大したもんじゃないよ」
「それを決めるのは、俺とこの兄ちゃんだ、なあ、兄ちゃんもそう思うだろ?」

 同意を求めてくる男の言葉に、彼は頷いて答えた。別に話が聞きたいわけではないが、断ったら騒ぎそうなので、とりあえず賛成しておいた。
 「弱ったなあ。本当に、大した話じゃないんだよな」、と呟く店主だが、店主の顔には『話したい』と書いてあるのを、初老の男は見逃さなかった。

「まあまあ。ここで出会ったのも客の縁。ここで兄ちゃんとこんな話を始めたのも酒の縁。ここいらで、三つ目の縁でも作ろうじゃないか、なあ」
「どうせなら、俺は金の縁がいいなあ」
「それなら俺だって欲しいぜ」

 店主と男の笑い声が、夜の屋台に響いた。



「ガキの頃の話なんだが、俺の田舎は今でいう、農村ってやつでな。今みたいに電車も走っていないし、電気もそれほど通っていない。毎年、田植えの時期が来ると、住人こぞって田植えをするような、田舎だった」

 大根と竹輪を皿に乗せて、差し出された。それを黙って受け取りつつ、彼は備え付けられたカラシを皿の橋にこすり付けた。もはや食べる気はないのか、初老の男はひたすら、水と酒を交互に口にしていた。

「そのときは、コンビニとか、そんな店は全然無くてな。夜になれば、それこそ一寸先は闇ってやつさ。足元はおろか、手元すら見えないぐらいに真っ暗だ。おかげで、毎年のように、人魂を見たとか、幽霊を見たとか、そんな話が途切れることはなかった」
「店主は、人魂やら幽霊を見たことあるのかい?」

 テーブルに肘をついていた男の言葉に、店主はからからと笑った。

「あるって言えばある。無いって言えば、無い。なんていうか、見間違いかもしれない、って思えるぐらいだったし、俺にもあれが本物かよく分からん」
「それ以外なら?」
「聞いて驚け……狸だよ」
 「ほほう、狸と来たか! こりゃ、参ったなあ」と、初老の男が服を巻くって、弛んだ腹を掌で叩いた。思いのほか響く乾いた音に、店主もつられて笑った。
 けれども、彼には笑うことが出来なかった。ほんの数百年前に、それが実在していたことを、知っていたからだ。
 あの日、諏訪子たちと別れてから、早200年強。狭い日本の西から東。北から南。短くて一年。長くて10年を目安に住居を変え、見た目が変わらない自分を、周囲から誤魔化し続けてきた。
 諏訪子たちが、あの後どのようにして過ごしていたのか、彼は知らない。一時は人伝を頼りに息災を祈っていたが、第二次世界大戦のドサクサに紛れて、消息が分からなくなった。
 諏訪神社にも爆弾が落とされ、神社が焼野原になったとき、彼は太平洋戦争の真っ只中にいた。ようやく諏訪神社の件を知ったのは、日本がポツダム宣言を受け入れた日と、同じ日であった。
 跡地を見ようにも、かつて神社があった場所には集合団地が立ち並んでいて、公的記録も残されていない。知っている信者に確認を取ろうにも、全員が戦争で亡くなっていた。
 そのほかにも、著名な神社を渡り歩いて探し続けたり、インターネットを利用して探したりもしたが、足取りは掴めていない。
 それでも探した。幸いにも、戦火を免れた諏訪湖を見たとき、彼は人目を憚らず、泣いた。そして、そこにテントを置いて、諏訪子たちを待った。
 春が来て、夏が来て、秋が来て、冬が来て。一年を過ぎた頃、彼は待つのを辞めた。辞めることでしか、彼は自分を納得させられなかった。
 いつしか、探すのを辞めたのは何時だったか。死んだものと思い、諦めたのか何時だったか、彼は覚えていない。
 その後は、激動の日々だった。戦争孤児という形で、新しく戸籍を用意してもらった。学というものは自身が無かったが、それでも何とかなったのは、肉体に自信があったおかげか。
 かつての妖怪にはまるで歯が立たなかったが、人間を相手にするには十分すぎるほど鍛えられた、その肉体。幻想が無くなった今では、かつてのような衝撃波は出せないし、出せても人一人殺せるがどうかの威力しかないが、意外とその方が役に立った。高度経済成長期というやつは、多少の不可思議には目を瞑ってくれる寛大さがあった。
 警備会社に就職したり、裏稼業のやつらのボディガードを務めたりして、金を稼いで過ごしてから、早四半世紀。
 酒、女、賭け事、そのどれにも興味が湧かなかった彼は、ただ金を稼いだ。周囲が湯水のように金を使うのをしり目に、彼はただお金を溜め続けた。そしてバブルが弾けても、気にせず働いた。護衛としての腕は一流なおかげで、就職口には困らなかった。
 でも、空しかった。かつての知り合いは、もういない。神様も、妖怪も、親友も、この世にはいない。ただただ、惰性に過ぎ去っていく日々に、彼は流され続けていた。



 屋台を離れ、家路に急ぐ。近頃めっきり見なくなった屋台に心惹かれたはいいが、長居をし過ぎた。あんまり遅くなれば、彼女を心配させてしまう。
 初夏の夜は、熱くもなく、寒くもない、心地よい夜だ。のんびり歩いたところで、環境に急かされることはない……が、今は少し事情が違うので、その限りではなかった。
 人通りが無くなった住宅街を走る。高く上った月に見降ろされながら、彼女が待つ自宅へと急ぐ。「別に、約束しているわけじゃないから、気にしなくていいわよ」と彼女は言うが、一人待たせるのは心苦しい。
 出会いは一方的で、半分押し掛けに近い同棲状態だが、一人に慣れた彼の心には温かく染み入る。それなりに時間も経ち、情も移った今となっては、彼女は惰性の中に光る明日だと、彼は思っている。
 見えてくるマンションに、彼は歩みを止めた。駅から少し離れた、少しグリーン色にデザインされた大きなマンション。息を整えつつ、エントランスのオートロックを解除して中に入ると、昼の明るさとは違う派手な明かりに、彼は目を細めた。
 『801』のポストに取り付けられた鍵を外して、中を見ると、チラシが一枚入っていた。『60分18000円』という見出しに、彼は苦笑した。子供の目に入らないように丸めてから、ポスト下に用意されたゴミ箱へ放る。
 うっかり持ち帰ったが最後、彼女の機嫌が悪くなるのは想像するまでもない。
 『ただのチラシだって分かっているし、それを使うために持ち帰ったわけでもないことは、分かっているわ。でも、それでも嫌なのよ。あなたが、私以外の裸に目が移ってしまうのが』。以前、新聞の間に挟まれたそれに気づかず持ち帰った際、彼女が口にした言葉。
 「別に、男の肌の一つや二つぐらい見たことあるだろ」と言えば、力いっぱい頬を抓られる形で返事をされた。『……ばか』と言ったのは空耳か、現実か。
 エレベータを下りて、『801』を目指す。黒く映る窓ガラスの中に一つだけ、薄暗くもほのかに光る窓ガラスを見て、彼は足を止めた。顔を上げれば、『801』。時刻は10時30分過ぎ。
 彼は何か上手い言い訳でも考えようかとも思ったが、小細工など彼女に通用しないと思い出し、さっさと鍵を開けた。



 廊下を通ってリビングに入ると、金髪の女性が、ソファーに腰を下ろしてテレビを見ていた。「ただいま、メリー」、と声をかけると、女性の青い瞳が向けられた。

「おかえりなさい、遅かったわね」

 メリーというのは愛称である。本名は、マエリベリー・ハーン。他人からは呼びにくい為、短くメリーと彼は呼んでいる。
 客観的に見ても、美女の範疇に収まる彼女に、絵本から抜け出してきたかのような可愛らしくもフェミニンな印象をいつも覚える。ソファーに備え付けられたクッションを抱きかかえると、彼女はそこに顔を埋めた。少し機嫌のよくないときの、彼女の癖だ。
 よかった、この程度で。今日は機嫌の良い日なのかもしれない。内心は安堵のため息を吐きながらも、彼は洗面所にて、うがい手洗いをした。同棲した当初の頃から口酸っぱく言われてきただけあって、今ではこれをしないと気持ちが悪くて仕方がない。
 ついでに顔を洗っている彼の耳に「遅くまでどこへ行っていたの?」という彼女の質問がリビングから響いた。このマンションはそれなりに防音がしっかりしているので、ちょっとぐらい大声を出したところで全く響かない。なので、彼は水をはらってから声を張り上げた。

「屋台だよ」
「屋台?」
「そう、おでんの屋台。久しぶりに見かけたから、懐かしさも相まって、少し遊んでた……ご飯食べた?」

 タオルで顔を拭きながら、リビングに入る。そっと、メリーが隣を空けて、そこを叩いた。回りくどいやり方に、彼は笑みを浮かべて、その場所に腰を下ろした。

「とっくに済ませたわよ。でも、おでんの屋台なんて、この時期に物好きな人もいるのね」

 メリーは彼の右腕を抱え込むように抱きしめると、肩に頭を預けた。彼女の豊満な感触と体温が伝わってくる。服越しからでも分かる気持ちのよい柔らかさに、自然と力が抜けた。

「だから、こんな時間まで待たせてしまうことになった……ごめん、次からは、一言連絡するよ」
「いいわよ。連絡しなくて。こういう日がないと、私もあなたも、息が詰まっちゃうわ」

 そう口にするメリーではあったが、少しへそを曲げていることは彼には分かっていた。しかし、それを指摘すると今度こそ機嫌を損ねてしまうのも分かっていたので、もう一度謝るだけに留めた。意地っ張りな彼女を持つと、気苦労も多い。
 メリーにならって、テレビを見る。画面には、最近高視聴率を記録している人気バラエティ番組が映っていた。毎回色々なゲームをするようなのだが、彼はテレビを見ないので、どこが違うのかよく分からない。美人な芸能人も、不細工な芸能人も、皆、一様に笑っていた。

「面白いか?」

 誰に言うでもなく、呟く。と言っても、この場には彼とメリーしかいないので、必然とメリーに問うのと同じことなのだが、彼もメリーも気にした様子はない。

「面白いわよ」

 セリフとは裏腹に、彼女の頬は一ミリも動いていなかった。

「そうか、俺にはよくわからん」
「あら、知らないの? 笑い声って、この世で最もポピュラーなBGMなのよ」
「……本当に面白いのか、これ?」

 納得いかないと首を傾げる彼をよそに、メリーは彼の右腕を力強く抱きしめた。まくり上がった紫色ベースのドレスのおかげで、股に挟まれている掌には彼女の体温が直接伝わってくる。その温かさに、彼は思わず右手に力が入った。
 かすかな笑い声が隣から聞こえるのを、彼は憮然とした態度で誤魔化した。口でやりあうにも、京都の有名大学に所属する彼女相手では、あまりに分が悪い。屁理屈捏ねるにも、相手は理を詰めてくるので、最近の彼は、こういった所作に対して沈黙で反撃することにしている。

「ねえ?」

 甘えるような声色ではない、同じ学部の知り合いに話しかけるような気軽さに、彼は右へ顔を向けた。
 目の前に、メリーの顔が迫ってきていた。彼が反応するよりも早く、メリーは彼の唇に自らの唇を重ねた。
 柔らかい。男には出せない、瑞々しい柔らかさが唇から伝わってきた。と、思ったら、すぐに離れた。わずかに頬を紅潮させたメリーの艶やかさに、目を奪われる。「口、開けて……」と、請われるまま唇を開くと、滑り込むようにメリーの小さな舌が入ってきた。
 一分、二分。繋がった口内が、卑猥な水温を立てる。目を白黒していた彼が、ようやく事態を呑み込み始めた頃、メリーの方から唇を離した。二人の間に銀色の橋が繋がって、切れるのを見て、メリーは恥ずかしそうに視線を落とした。

「おでんの味がしたわ」
「……まあ、おでん食べてきたし」
「おまけに、お酒の味も、ね。ところで、あなた、ちょっと酒臭いわよ。けっこう飲んできたみたいね」

 メリーの言葉に、彼は衣服の胸元を摘み上げて、臭いを嗅いだ。いまいち、よく分からなかった。
 メリーは淫行の名残を払拭するかのように、彼の右腕を引っ張って立ち上がった。彼の方が背が高いとはいえ、座った状態では彼女の方が高い。つられて立ち上がると、彼女は晴れやかな笑みを浮かべた。

「お風呂湧いているから、入りましょう。そんなに酒の臭いをさせられたら、こっちの具合が悪くなっちゃうわ」

 そういうと、メリーはお風呂場へと彼の腕を引っ張った。正直もう寝たかったが、それは口にはしなかった。



 男女の汗の臭いが、室内にこもる。彼を抱きしめる形で、彼の下敷きになったメリーは、体の奥深くに残る快楽の残照に、息を荒げていた。乱れてしまった呼吸を整えようとするも、奥深くに押し入れられた熱源のせいで上手くいかない。
 あまりの激しさに我を忘れて蹴飛ばした掛布団が、視界の端に転がっていた。初夏の夜とはいえ、布団を被らないで寝るには肌寒い。けれども、体中に感じる彼の熱さと、体内に染み入ってくる粘液の感触に、メリーは身震いするほど体が火照っていた。
 噛みつくように吸い付いた痕が残る彼の首筋を見て、妙な気恥ずかしさを覚える。もはや数えきれないぐらいの回数をこなしたとはいえ、何気ない場所に自らの乱れた証が目に入るのは、少し居心地が悪い。
 最中は全く気にしなかったが、いざ事を終えた後となると、背中に感じる皺のよったシーツの感触が、少しだけ気持ち悪い。
 腰の下に敷いたタオルは、水に浸したかのように濡れている。比較的濡れやすいメリーにとって、どうしても毎回布団に水たまりを作ってしまう。せめてもの対応策ではあったが、今回もタオルの吸水量を上回ったみたいだった。

「ねえ?」

 メリーがようやくしゃべれる程度にまで回復してきたのに対し、彼はメリーの体が落ち着くのをゆるやかに待っていた。
 そんなところが、憎らしいと思いつつも、そんな彼を拒めないぐらいに骨抜きにされてしまった自分に、メリーは唇を噛んだ。

「今度、蓮子と一緒に神社巡りしようか?」
「……どうしたんだ、急に?」

 彼はメリーの言葉に、体を起こした。メリーの、プリンのように跳ねる二つの乳房が重力に逆らうように天井へ向く。まだ収縮を続けている体内を、意図せず抉られ、思わずメリーは喘いだ。

「あ、すまん」
「――っ!! もう、急に動かないでよ。今は敏感なんだから、動かれると辛いのよ」
「すまん。それで、どうして急にそんなことを?」

 蓮子というのは、メリーの親友である女性である。かなり頭の切れる女性らしく、彼もメリーの話でしか聞いていなかったが、ボーイッシュな美人であることは、知っていた。

「あなた、よく昔の話だって言うけど、本当は全然吹っ切れていないんでしょ。あなたがどれぐらい昔から生きているのかは知らないけれど、そんなの、地球が爆発する最後の時まで生きたって、ずっとモヤモヤした気持ちを抱えて生きることになるわよ……生きているのか、死んでいるのか分からない。どっちにしても、何かしらの答えを出さないと、あなた、いつまで経っても前に進めないわ」

 メリーの指先が、彼の頬を撫でる。汗で濡れる頬を拭うと、メリーはからからと笑った。
 自分には勿体ない女性だ。今日のように、彼女と一つになるたび、いつも彼はそう思った。いつまでも同じところで頭を悩ませ、昔のことに思いを馳せている彼を慰め、時には尻を蹴飛ばしてくれる彼女に出会えたことに、彼はいつも今はいない神様に感謝の念を捧げた。
 そっと、彼は指先を伸ばして、メリーの目じりをなぞる。濁りのない美しい青い瞳が、彼へ向けられる。布団に広がった金髪が、窓からわずかに入ってくる月明かりに、妖しくきらめいた。

「もう、いいわよ」

 メリーの合図に、彼は顔をメリーへ近づけた。合わせるようにメリーが首を伸ばし、軽い音を立ててお互いの唇がついばまれた。
 行為の終わりに必ず行う合図。過敏になってしまったメリーが、体内から抜いても大丈夫という意味合いを込めたものだ。無理に抜くことも出来るが、刺激が強すぎて気持ち悪くなるとのことなので、行為の最後はメリーの合図が出るまで、ずっとそのままでいなくてはならなかったりする。
 もっとも、女性として成熟したメリーの四肢は、どこもかしこも柔らかく、5分10分抱いたところで飽きは来ない。彼としては喜んでいいのか、悲しんでいいのか、いまいち判断が付かなかったりする。
 彼が腰を引くと、メリーの眉根がしかめられた。首を伸ばして、ごくりと音を立てて細い首筋が脈動する。細い腰回りから手を離して、シーツを掻き抱いている小さな手を摩ると、素早くメリーの手と彼の手が組み合った。
 ため息がメリーの唇から零れる。いくら落ち着いたとは言っても、敏感な部分に変わりない。刺激しないように、ゆっくり引き抜くと、傘に掻き出された粘液が粘着質な音と共に艶やかな肌を伝わって流れ落ちた。

「いっぱい出たな」
「気持ちよかった?」
「凄く良かった。メリーは?」
「私も。深過ぎちゃって、腰が気怠いわ」

 枕元に置かれたティッシュに手を伸ばして、数枚手に取る。メリーに目線で確認すると、頷いて両足を開いた。露わになったそこは、お風呂上りのように茹っていた。粘液が脈動する彼女に呼応するかのように噴出していて、赤く充血した部分が行為の激しさを物語っていた。
 「自分の恥ずかしいところを、愛しい人に優しく介抱されるのが嬉しい」と語っていたのは先日のことだったか。まさに口にしていた通り、気恥ずかしい様子を見せながらも、メリーは自らへ伸ばされた彼の手を、愛おしそうに見つめていた。

ハーレムかと思ったか? 残念! メリーちゃんでした!

たぶん、これぐらいがR-15の限界かな……いや、まだやれる。まだ、俺はやれるぞ!


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。