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  東方典型録 作者:葛城
へ( 罪)へ   紫様に添い寝される夢を見たぜヒャッハー!
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※ ちょっとフェチ色強いかも
番外編:八雲紫の朝は早い(パロディ注意)
 八雲紫の朝は早い。

 日が昇り始めると同時に、紫は起きる。夏も終わり、季節はすっかり冬を眼前に迎え、動物に砕かれる霜の音が時折耳に入る。
 八雲紫の朝は、貴重な時間であり、まず、隣で寝ている彼の観察から始まる。
 身体中に感じる彼の名残に身震いしつつ、紫は張り出した膨らみを彼の右肩に押し付けて、そっと片手で彼の頭を抱きかかえる。
敏感な部分が触れた拍子に走った快感に、思わず息が漏れる。
 それを誤魔化すように、静かに鼻先を彼の頭に近づければ、濃厚な汗の臭いと、自分の臭いと、性の臭いが鼻についた。
それだけで、昨夜の燃え立つような両胸の尖りが、残照を楽しむかのようにピクンと震えた。

 ――なんだか、息が荒いのですが、紫様?

 紫の向かい側……彼を挟んだ反対にて、左腕を抱きしめて横になっていた女、八雲藍は、主人である八雲紫の突然の行動に、半眼になった。
さらりと流れる金髪が、ゆるやかに広がる。100人中、99人が振り返りそうな美人だ。

「ここを疎かにすると、一日を通して張りが出てこないのよ……だから、一瞬の気の緩みも許されないわ。藍もそう思うでしょ?」
 ――否定はしません。あと、何気なく人の心読まないでください。九尾の狐である私もビックリです。
「あなた、妖怪でしょ。それに、深呼吸しているだけよ。一瞬の気の緩みが命取り。今のうちに色々堪能しておかないと……藍もどう?」
 ――昨日あれだけ腰を振ったせいで、もうお腹いっぱいです。喋るのだって億劫です。
「ふふふ、喋れないのは、喉が枯れるまでしゃぶったからでしょうに……」

 そう言うと、紫は彼の黒髪に顔を埋めて、最後の一息とばかりに大きく深呼吸をした。
スーッと空気が紫の肺に吸い込まれていく。同時に蕩けていく表情に、傍で見ていた狐の妖怪、八雲藍は一つ欠伸をした。
 障子越しに届く僅かな日光が、紫の豊満な膨らみを淡く照らす。白くも、体温の温かさが感じられる淡い紅潮の肌には、いくつもの行為の名残が見え隠れしている。
いったい、どれだけの量を出したのだろうか、胸の谷間にはこびり付いた雄が幾重にも重なって渇いていた。
 そんな主人の姿を見て、藍は同性でありながら、眼の前で彼の頭を抱きしめている女に見惚れた。
勝てない、と思った。顔の造形だとか、身体の作りだとか、好みだとか、そういうものではなく、存在に負けているということを思い知った。
 もちろん、藍自身、自分の身体には自信がある。顔の造形とて、かつては一国の王を虜にし、国を傾かせた傾国の美女とまで謳われた自負がある。
 なのに、藍には、眼の前の女性に女として勝てる自信がまるで無かった。例え一国の王に愛されても、一国の王よりも金を持つ男に愛されても、
一国の王よりも金を持つ男を嫉妬させた美男子に愛されたとしても、藍は八雲紫という存在に、膝をつく以外の選択肢を選べそうにないと思った。
 その姿はあまりに神々しい。それでいて、あまりに官能的。もし、自分が男であったならば、きっと恋焦がれて、恋焦がれて、
それで、指一つ触れる勇気すら出せずにその姿を見つめる。そんな自分を想像させてしまう、何かが紫にはあるのだと、藍は思った。

 ――紫様、そろそろ。

 見惚れていた自分を叱咤し、藍は心の中で念じた。わざわざ心の中を読むなんて面倒なことをしたのである。どうせ、今日一日はこんな話し方をしろということなのだろう。
 その藍の推測を肯定するかのように、紫はうさんくさそうな笑みを浮かべると、静かに彼の頭を放した。
 その所作一つ一つに感じられる確かな愛情に、藍はふと、自分の考察に納得した。

「……さて、着替えましょう」
 ――ええ、あの祟り神が来る前に。

 結界をぶち破ろうとしている気配を感じた紫は、スッと手を上げると、指をパチンと鳴らした。途端、音も無く彼女達の眼前が切り開かれた。
 慌てて立ち上がろうとして、その場にへたり込んだ。昨夜の名残から、まるで足腰に力が入らなかった。
 顔を紅くして恥じらう藍を見て、紫は慣れた様子で切り開かれた空間のスキマに手を入れて、従者と自分の衣服を取り出した。
さらにスキマは無音のまま3人の身体を上から潜るように通り抜けて、閉じた。
 後に残ったのは、名残一つ残っていない、玉の素肌だけであった。
 雪こそ降らないものの、もはや寒さは冬といっていい。
布団から出なくとも張りつめた冷たさは手足を凍えさえ、布団から出れば刺すような冷気が肌にまとわりついていた温もりを一瞬で奪い去った。
 八雲紫はいまだ眠り続けている彼にひとつキスをすると、昨夜脱ぎ散らかした彼の衣服を大切にスキマの中に仕舞った。

「さあ、彼の臭いが染み付いた褌はしまっちゃおうねぇ~」

 諏訪子は寝起きの脇の味、美鈴は毎朝の一番搾りによる飲尿が健康の秘訣というけれど、私はやっぱりこれね。
 そう話す紫の目は、童女のように穢れない輝きがあった。

 ――空しいと感じた時って、あるんですか?

 藍の言葉に、紫はピタリと動きを止めた。そして、寂しそうに微笑んだ。

「この性癖はねえ……新人の入れ変わりが激しいのよ。たいていは罪悪感を覚えて途中で違う性癖に目覚めたり、または中身に目を向けるあまり本質を疎かにしたり……ねえ。30年もこの道を続けている私から言わせれば、我慢が足りない、の一言だけどね」

 でも、そう語る紫様は、どこか寂しそうだ。そう、藍は思った。
 紫は、さらに続けてこう言った。

「この性癖を続けていく際、何より気をつけなければならないのは、無茶をしないことよ。我慢が足りないで脱ぎたてを手に入れようとして、その都度お仕置きされて脇フェチに逃げた悲しい神もいたわ」

 その瞬間、紫の脳裏には懐かしい光景が映し出された。見ていて震えてしまいそうなぐらい御柱に潰された祟り神を前に、言い仕事をしたと言わんばかりに額の汗を拭う軍神の姿。さりげなく戦利品を履く美鈴を見て、戦慄を覚えたのは言うまでも無い。

 ――フェチというものがどういうものか分かりませんが、凄いものなんですね。南蛮の言葉ですか?
「うふふ、そうよ……次に気を付けるのは、スリルを求め過ぎるということかしらね。下着フェチとしての勘が試されるわ」

 基本的に彼の使用済みならば満足するけど、その時の気分に応じた生じゃないと完全には満足してくれないのが、ベテランの悲しい辛さだけどね。そう語る紫の眼には、臭い職人としての誇りが見え隠れしていた。

 ――下着フェチとして大成するにも、相応の苦しみがあるのですね……でも、辛くないのですか?

 言われなくても分かっている。そう言いたげな表情を、紫は浮かべていた。

「……そうね……最初は誇りだとかそういうのが抵抗していたけど、一回、二回とやっていくうちに、これが大好きになっちゃったわ」

 そう言いながら、紫は再びスキマを開くと、褌を取り出した。一部の無駄も無い、清流のごとく、流れるような所作で褌の香りを嗅ぐと、速やかにスキマの中へ戻した。
 常人なら裏返したり生地を伸ばしたりといった動作が、紫にはまるで見られない。取り出すと同時に当てる位置を合わせる。手なれたその動作には、確かな技術があり、何気ない動作に職人の技が光る。

「好きで始めたことだから……自分で選んだ道だもの。後悔はしていないし、止めたいと思ったことはないわ」
 ――下着フェチの灯火は弱い……でも、とても輝いている。そういうことですね、紫様。

 結界をぶち破った諏訪子が轟音と共に乱入してくるのは、藍がそう言い終えた直後であった。


 ――今までにも何度か見ましたが、いつも今日みたいな日に集めているのですか?

 目つきが怖い諏訪子に受けた傷を手当しながら、藍は主人に尋ねた。激怒した神奈子と共に引きずられていった諏訪子の悲鳴が、耳に新しい。
 どさくさにまぎれて下着を美鈴に奪われてしまった紫は、気にした様子も無く、質問に答えた。

「今日だけじゃないわよ。彼に気付かれないように下着を交換したり、服を取り換えたりもするわ。ご飯を食べているときとか、眠気でウトウトしているときとかが狙い目ね」

 ああ、でも、前者は素人にはお勧めしないわ。スキマを応用した技だし、完全に会得するまでに5年は掛ったから。
 そう話す紫は、美鈴から奪い取った黄色い液体を一口飲んだ。わずかに感じるアンモニア臭に、藍は、身を引き締めた。

 ――紫様ともなれば飲むことも出来るようになるのですね。私はまだ、そこまでには至っておりません……お恥ずかしい限りです。

 俯く従者に、クスリと笑うと、紫は目を細めた。まるで、昔の自分を見ているようで、不思議な気恥ずかしさを覚えた。

「大丈夫よ。だって、あなたは私の式……もっと自分に誇りを持ちなさい。世界中を探したって、私の式は貴方以外いないのだから」
 ――はい。

 涙がこぼれそうになった自分を、藍は叱咤したくなった。未熟な自分を褒められることに、未熟者ながらのプライドと、嬉しさがせめぎ合い、言葉が出てこなかった。
 それすらも紫にとっては想定内のことで、ただただ俯いて涙を堪える藍を見て、紫は最後の一口を飲み干した。

「……うふふ」

 紫の指が空を切る。指が通った後に出現するスキマから、紫は諏訪子の猛攻から守り抜いた褌を手に取る。時間が経過しているので温もりは無くなっているが、顔を近づければまだ十分な香りを内装していた。

「藍」

 呼ばれて、藍は顔をあげた。鼻先は紅くなっており、目じりに溜まった涙が、いかに彼女が激情に耐えていたのかが優に想像出来た。

「ほら」

 折りたたまれた褌が、藍の顔を覆う。突然のことに、藍は反射的に褌を手で押さえた。
 同時に、鼻孔を通って肺を満たす芳醇な香りに、藍は痺れるような快感が背筋を走っていくのを実感した。
 脱ぎたては良い。一度この味を知れば、確かにそれ以外で満足出来なくなるのは同意だ。
 なるほど、幾人もの先人達が危険性を恐れて別の欲望に逃げたのが良く分かる。これは……。

「大丈夫」

 我に帰る。褌から顔を上げれば、慈愛に満ちた主人の視線が向けられていた。

 ――紫様。
「今はまだ、色々なモノが邪魔をして、素直に楽しめないでしょう。でも、それも時間が解決するわ。そのときが、貴方が一つ、妖怪としても、女としても、成長したときよ」
 ――……はい!
「ふふふ、それじゃ、もうしばらくそれは貴方に預けるわ」
 ――え、いいんですか?
「いいのよ。まだ72枚のコレクションがあるから」
 ――紫様……一生付いています。
「嫌と言っても、貴方が一人前になるまでは、引きずってでも来てもらうわよ」

 そう語る紫の横顔は、まさしく職人のそれであった。
 今日もまた、紫は藍へ己の全てを教えていく。それは明日も、明後日も、変わらないだろう。従者が、彼女にとって一人前になったと思えるまで。
 そう、八雲紫の朝は早い。
私が変態だって?

HAHAHAHAHA、そんなバカな話があるわけがない。


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