はいはい、テンプレテンプレ。みなさん予想通りのあの方が登場です。
日本新話編:明けない夜はない
終わらない今日はない。誰かの言葉。
どれだけ足もがいても、どれだけ泣き叫んでも、明日は平等にやってくる。
永い、永い時間が流れた。
最初にやってきたのは、蒸し返すような熱波だった。衝突した岩石と岩石、そのエネルギーの一部が熱に代わり、膨大な熱波が地上を覆った。灰色の空なのに、大地は灼熱のごとく暑く。生物達の苦難の時代の訪れだった。
次に訪れたのは、雨だった。熱せられ、蒸発した海水が雨水となり、何日も、何日も降り注ぐ豪雨が、あらゆるものを舐めつくし、あらゆるものを洗い流す。人も、恐竜も、猛獣も、文明も……命も。
次に来たのは、凍えるような寒波だった。あの暑さが嘘のようにどこかへ行き、あらゆるものを凍らせてしまう、氷河時代の始まりだった。
最初に力尽きたのは、恐竜達だった。変温動物である彼らは、恒温動物と比べて体温を一定に保つ力に欠けており、急激な気候の変化に耐えきれなかった。
恐竜達が地上から姿を消し始めた頃、大型の肉食猛獣もその後を追った。彼らは常に一定以上の体温を保つ為に、大量の食糧が必要であった。気候の急激な変化によって激減した草食恐竜の影響が、彼らを絶滅まで追いやった。
植物も例外ではなかった。さすがに一気に全滅してしまうことはなく、中には適応するものもあったが、それでも絶対数があまりにも少なすぎた。ただでさえ少なくなったうえに、植物を求める生物によって食い荒らされてしまい、絶対数が増加することはなかった。
生き残ったのは、それらの植物を食べる小さな生物と、氷河時代に適応した新しい生物、新たに知能を手にした人の祖先。
そして、その中に、彼の姿はあった。
…………永い、想像すら出来ない時間が流れた。
終わらない今日はない。誰かの言葉。そう、終わらない今は、ない。
一万年。これは彼が後ほど知ったことなのだが、地球がその凍った身体をゆっくり温め始めたのは、あの隕石衝突からおおよそ一万年以上の時間が経過していた。
彼が永かった極寒の時代が終わりを迎えたことを知ったのは、珍しく吹雪が止んだお昼のことだった。
お昼と言っても、それはあくまで感覚の話だ。隙間なく満たされた分厚い雪雲が、宇宙から注がれる光を遮っていたあの時代。夜はもちろんのこと、昼間も薄暗く、すこし岩陰に隠れると、それだけで手元すら見えない程度の明るさだ。
彼はその日も食糧を求め、歩き続けていた。身に付けているのは、マンモスから切り出した毛皮だけ。あの頃身に着けていたものは当の昔に捨ててしまった。
彼は死に物狂いで生きた。木の根を齧り、虫を噛みしめ、動物の生き血も啜って、今日まで生き延びた。そして、件の日、彼はふと、地面に広がった光に目をやった。
……なんだ、これは……雪が、光っている……なぜ…………!?
顔を上げる。そのときの光景を、後々彼はこう語っていた。
あの瞬間のことは、実はよく覚えていないんだ。それが綺麗だったのか、それとも大したものでもなかったのか、あるいは忘れてしまったのか、今でも思い出せない。
ただ……なんていうのか、不思議な感覚があった。それと、これだけは覚えているんだ。ああ、この光景を彼女に見せたかったって。
……でも、思うんだ。この光景は、もし、この光景をもう一度見ることが出来たとしても、あの時のようには思えないだろうって。
なんて言うのかな……多分、あの時だけだと思う。あのときを生きて、あの大地を歩いて、あの瞬間に立ち会えたものだけが、あの感覚を感じられるのかな……って、そう思うんだ。
そして今日。彼はしぶとく生き残っていた。今日もいつもとおなじく、狩ってきたイノシシの肉を適当な木枝に刺し、焚火の火が直接当たらない位置に突き刺した。
その数、10本。一本一本の量は多く、一人4~5本も食べれば腹いっぱいになれる量が用意された。
もちろん、肉は既に血抜きはしてある。これをする、しないでは、驚くくらい肉の味が変わってくるのである。
「………………」
パチパチと、飛び散る火花に気を付けつつ、彼は肉を見つめた。
秋の肌寒い北風が、彼の身体を吹き付けた。ブルリと身体を震わせて、彼は服の袂を合わせた。落ち葉の臭いと、肉の焼ける良い匂いが辺りを漂う。本当なら匂いに釣られた猛獣の襲来を警戒しなければならないが、ここにはまず猛獣が来ることは無い。
赤いイノシシ肉が、じっくりと色を変えていく。表面全体の色が変わったのを目で確認してから、火傷しないようにそっと枝を取り外した。
「……よし、焼けた……食べよう」
肉を味見して、十分に火が通ったのを確認した彼は、赤く燃える焚火に新しく薪をくべた。下火になっていた炎は薪の表面を舐めるように覆っていく。ゆっくりと全体を覆うと、その下で燻っていた熱灰の火力を受けて、瞬く間に炎を吹き上げた。
彼はさらに火を強める為、木の枝を加工した作った木筒で炎の根元に息を吹き込んだ。
一回、二回、三回。ぼう、ぼう、ぼう、と燃えあがる炎を見て、彼は木筒を手元に置いた。
ふう、ふう、と肉に息を吹きかける。白い蒸気がふわっと焚火の上を通った。
「………………」
ふと、彼は肉から顔を上げて、振り返った。
「肉、焼けたぞ」
その言葉に、縁側に座っていた少女が顔をあげた。彼よりも頭一つ分以上小さい少女は、軽やかに庭に降り立った。黄金色の髪を持つ、その少女は、個性的な帽子を被りなおして、大きく欠伸をした。
さらに、両手を上に伸ばして伸びを一つ。そんな彼女が、実は近隣どころか大陸で恐れられている存在だと誰が思うだろう。
事実、過去に一度戦った彼も、いまだに彼女のことを恐ろしいとは思えなかった。それが、たとえ自分よりもはるかに強い相手だとしても、だ。
「……いらんか?」
「いるよ」
少女は慌てて彼の傍へ腰を下ろすと、彼へ手を差し出した。
どうやら、自分で取る気はないらしい。彼は、別の枝に刺さった焼き肉を差し出した。
「ほら」
「あいよ」
「熱いぞ」
「知ってる」
「そういって火傷したのは誰だ」
「誰の話さ? 私は知らんね」
ふう、ふう、と小さな口を尖らして肉を冷ます少女を見て、彼は改めて思った。
俺、どうしてこいつと一緒に飯を食べているんだろう。そんな仲良くなるようなことした覚えはないのに。
なんか、前にも似たようなことを考えたような気がする。あれは……。
「こら」
ブスッと、少女の地獄突きが炸裂した。
いくら鍛えられた肉体を持つ彼とて、急所は急所。不意を突かれれば苦しいものは苦しいし、何より少女の力は見た目とは裏腹だ。
思わず、彼はせき込んだ。持っていた肉を落とさなかったのは、せめてもの意地だった。
「ぜぇ、ぜぇ、な、何を……」
「こんな美少女が傍にいるっていうのに、何をまあ、他の女のことを考えているのさ」
「……美少女? 幼女の間違いじゃないのか?」
「おっと、手が滑った」
少女の言葉が言い終わると同時に背後へ迫る何か。彼は腕だけをそちらへ向けて、衝撃波を放った。
一瞬後、土が爆発する音と共に、気配が消えた。彼は頬に流れた冷や汗を拭いつつ、肉にかぶりついている少女を睨んだ。
「……諏訪子よう……」
「何さ?」
「……いきなり祟るのはどうかと思うのだが」
「ふんだ。どうせ衝撃波で吹き飛ばすんだ。男ならこれぐらいで愚痴を吐くんじゃないよ」
そう言って二本目の枝に手を伸ばす少女、諏訪子を見て、彼はため息を零した。
はたして、この食い意地のはった少女が、土地神の頂点と同時にミシャグジ信仰を束ねる祟り神、諏訪子神だと、誰が思うだろうか。
きっと思わないだろうな。俺だって思わないもの。
そう考えた彼の喉へ、今日二回目の地獄突きが炸裂したのは、もうまもなくのことであった。
はい、ケロちゃん登場です。この話のケロちゃんは、あんまり神様らしくないのかもしれません。なにせ、私自身が東方ゲームを持っていないからです。
持っているのはえーりんさんが出るやつだけだったり。
いや、テンプレは話を作るのが楽で助かる。
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