それから……
「……うん」
そこらに落ちていた枝を使って、地面に数字を書いた。その文字、二十万。
思えば、長いようで、やっぱり長い日々だった。彼はこぼれそうになる涙を堪えて、そっと目元を拭った。
彼が浦島太郎のごとく、流浪の旅を始めてから、夕に20年は経った。
経ったといっても、正確な経過時間は分からない。なにぶん、時計は持っていないし、それに準ずるものも見つからなかった為だ。
一日一回。地面に数字を書く。一日経ったら、一つ足し。一日経ったら一つ足す。それを繰り返して、早20年。10、20、もしかしたら50ぐらい誤差があるかもしれないが、だいたい20年程……このよく分からないファンタジーのような馬鹿げた世界で、彼は当てもない旅をしていた。
その間に様々な困難が彼を襲った。
何日も続く寒波に文字通り冷凍されかけたり、日照りによって干物にされそうになったり、頭が二つある虎のような獣に食われそうになったり、崖から落ちたり、彼自身、よく今まで生きてこられたと疑問に思えてしまうぐらいの日々だった。
そして今日。彼は、自身が、かつての己よりもはるかに逞しく、異質なものになってしまっていることに、薄々気づいていた。
まず、自身が年を取っていないことに気付いた。
切掛けは、見つけた川で身体を洗っているときだった。
必然だが、生きている限り、必ず排泄物は出る。オーラとか吸収して生きているとか、酸素だけで生活できるとかなら話は別だが、大多数の生物と同じく、食物を食べて水分を補給し、それらを消化及び吸収を行っていれば、残るは廃棄物。
まあ、うんこだ。
文明溢れる時代のように毎日身体を洗うことなど出来ない彼の、最も手早く確実に身体を綺麗にする方法は、水浴である。
そこでいつものように身体を洗っていた時、澄んだ水ときらめく太陽光が反射する自分の裸身を見て、彼は愕然とした。当時、彼がこの世界へ来てから数年の月日が経っていたというのに、皮膚のたるみや皺など、記憶にある自身の顔とほとんど相違が無かったのである。
もちろん、ここに鏡のような自身の姿を映し出す便利なものはない。ないが、それでも小じわの一つは出てもおかしくない程度の年月は、生きてきたつもりだ。これが彼の思い違い、恐ろしく長い夢でなければの話だが。
次に、各ステータス数値の上昇……レベルアップだ。
彼は今まで、数々の果物、植物、小動物、猛獣、化け物と戦って生き延び、その血肉を食らうことで、生き延びてこられたのである。その結果、彼の肉体は体脂肪18パーセントの中背中肉だったのが、ドン・ハワース並みの肉体になっていたのである。もはや、親が見ても同一人物だと思えない姿だ。
ステータスを見れば、その違いは顕著だ。
【レベル :37 】
【体力 :178/212 】
【気力 :50/57 】
【力 :46 】
【素早さ :58 】
【耐久力 :70 +3 】
【装備・頭 :なし 】
【 ・腕 :なし 】
【 ・身体 :なし 】
【 ・足 :ジーンズ + スニーカー 】
【技能 :獣の本能・踏みとどまる 】
【スキル :洞察力 レベル20 】
【 :美感力 レベル9 】
【 :逃げ足 レベル44 】
【 :自己再生 レベル3 】
【 :毒解能力 レベル15 】
【 :フラグ 時々発動 】
【アイテム :アイテム使用 】
これである。自己再生は、負傷の治る早さだ。まあ、傷の治りが早くなったな、と思う程度。逃げ足が一番高いのは、それだけ猛獣から逃げまくったからである。
だが、決して彼を責めてはいけない。自分の10倍以上デカイ化け物に襲われれば、逃げ足ぐらいは速くなる。というより、速くならなければ食われて死ぬだけだ。
閑話休題。話がそれたので、そろそろ話を戻そう。
最初、彼が涙を流すことになった原因。それは……。
「……村が……人がいる!」
ついに零れた涙を拭いつつ、彼は鼻をすすった。
そう、ついに彼は、人を見つけることが出来たのだ。たとえそれが、葉っぱとか藁とかで出来た屋根だとか、全て木造建築どころか竪穴住居的なものだったとしても、彼には関係なかった。
それ以上に、彼は嬉しかった。自分以外の知性があるものに、飢えていた。動物に知性が無いとは言わないが、言葉を交わすことは出来ない。それが何より辛いことだった。
そして今、彼は村へと足を進めた。ある、一つの思いを胸にして。
「どうか……言葉が通じますように……」
間違っても、ウホ、ウホ、とか返されたら対応に困る。そんな、どこか間違った思考を持ってしまったのも、20年間が彼を蝕んでしまったから。
そして、村についてから40分。とりあえず、言葉は通じなかった。最悪、ウホウホ言おうかと考えていた彼だったが、彼らは独特のイントネーションがある唸り声で会話をしているようだった。どうやら、言語というものは無いらしい。
しかし、今の彼にはそんなものはどうでもよかった。
桃源郷というものを、彼は真の意味で知った。
「は、鼻血が……うう、し静まれ、む、息子よ……」
あふれ出る鼻血を手で押さえつつ、彼は痛みを訴える下腹部に手を当てて隠した。そこは邪魔をするジーンズに抗議するように、ズキン、ズキンと脈動して痛みを訴えていた。
考えてもみてほしい。時代は竪穴住居だ。まだ、言語というものが無い。それどころか、住居……に関する知識も無く、せいぜい雨風を凌げる程度の粗末なものだ。裏を返せば、それしか作れない程度の知識レベルなのである。
人数は30人程度。子供:大人の割合が2:8。男:女の割合が4:6。
……もう、勘の良い人は気付いているのかもしれない。
「……乳……尻……毛が……ふるんふるん……ふささ……」
そう、丸出しである。
もう一度言おう。丸出しだ。包み隠さない、フリーダム状態。自身の人生でも数えるぐらいしか見たことが無い神秘の姿を、彼は眼を血走らせて見ることが出来る。
それは桃源郷。それは天国。
女性……名も知らない彼女達は、まだ羞恥心というものを持っていないのか、豊かに膨らんだ胸も、涼しげに繁茂した場所も、全く隠さないのである。
しかも、彼女達の顔は多少の差はあれど、彼の美的感覚から見たら美女、美少女の範疇だ。少なくとも現代なら、それらしい服装に身を包み、男の一人や二人連れていない方がおかしいぐらいに、美しい外見だった。
そんな彼女達が、そんな彼女達が、だ。たわわに実ったものを、ふささなアレを、瑞々しい四肢が、これでもかと彼の眼前で動くのである。
おまけに、羞恥心は感じていないが、じっと見つめられることには抵抗があるらしく、時折身体を丸めるように腰を下げたりする。それがまた双山を腕でぎゅっと挟む形になり、結果的に悪循環になっていたりするのを、彼女達は知らない。
極楽はあったんだ。ここだ、ここがヴァルハラだったんだ。
そう、彼が生まれてきたことを感謝していた時、それは起こった。
このとき目にした光景を、彼は決して忘れなかった。
突如走る唸り声。
彼が顔を上げると、彼女達の奥向こう……20メートル離れたところに、いつぞやのウサギネコの群れが通ったのである。
その瞬間だった。
彼女達が一斉に腰を身体を低くし、腰を上げて前傾態勢になったのは。
「ぐはぁ!」
彼は見てしまった。というより、見ることが出来た。
彼女達の後ろ側……丁度、高く上げられたお尻を、彼は正面から見つめた。フリーダムを超えた秘密のベール。そこを垣間見た彼の取った行動は一つだった。
「ほぁぁああああ!!!!」
彼女達の唸り声と駆けだす音。
時を同じく彼も、反対側へ駆けだした。身体をくの字に曲げた、歪な姿で。
それから数週間。彼は村へ足を踏み入れなかった。
その理由は、凄まじい罪悪感と、次に目を合わせたとき、暴走してしまうかもしれないと思った為だったりする。
思いっきりセーブして書いた。後悔しかしていない。せいぜい、12Rぐらいかな。
まだ、まだエロは書けない。今書いたら、オリジナルエロだ。東方キャラを出さなきゃ、話にならん。
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