対美鈴戦、やってまいりました。
作品ごとにキャラが地味に変わる美鈴、まぁそんな奇抜な子にはなりませんと予め。
では美鈴ですので、飲茶片手にどうぞ。
第二章~東方紅魔郷編~
第二十話『紅魔郷第三幕・紅魔館の門番』
―――紅魔郷Stage3【華人小娘 紅 美鈴】
テクテクと、ゆっくりとしたペースで紅魔館へと歩いていく。なんだかんだ一回も弾幕ごっこをすることもなく、ここまで来てしまった。
しかも、今では妖精達も―――ここの危険性を察知してか―――ロクに居ない始末だ。なんというか、このような異変解決の道程はそう無いのではないだろうか?
ルーミアは食い物で釣り、チルノはおだててあっさり流してクリア。地味というか、平和的この上無い。
でもまぁ、地味だがいいことか。何も弾幕ごっこは無理してすることでもないし、本来男がするには無粋らしいからな。
……と、妙な思考はさて置き、次ばかりはそうもいかないだろう。何せ、次の相手は紅魔館の門番……紅美鈴。
よく中国だとか、美鈴ではなく美鈴や美鈴などと呼ばれ、酷いものでは紅美鈴、紅美鈴というふうにフルネームを言われてしまう彼女。
しかし、その実力は高い。紅魔館の門番を勤めるだけあり、格闘に関しては人のソレを遥かに凌駕し、突出した要素は無いが弱点も無い。弾幕ごっこでは目立たないし、やや地味ではあるが確かな強者なのである。
正直、勝てるかと問われれば……否だ。ワラキアが出てくれれば、まだ話は別だが、そう毎回頼ってもられない。前にも言ってたが、出るのは制限時間があるらしいからなぁ…今も魔力回復の為とかで引っ込んでいるし。
……チルノの時にも思ったが、ワラキア抜きでも戦えるようにならないと、そのうち本当に死ぬな。武器か何かを調達でもしないと……。
「……ふむ、武器、か」
足を止めて、呟く。考えてみれば、魔術しか使ってはいけない、なんて縛りは無いんだし、まだいい手段だな。
と、なると……試してみるか?
「……投影魔術……」
む、いかんな、また口に出た。独り言なんて悪癖、治したいんだがなぁ……。
まぁいい、とりあえず必要なのは投影魔術についての知識だ。確か……イメージが自分の中で完璧にすることで可能となり、強度も自己のイメージ通りのものとなる。で、生み出した奴の知識が本物に近ければ近いほど幻想ではなく、現実に存在するものとして完璧に出来上がる。
しかしイメージに綻びができると存在強度を失い、霧散する。
…………驚く程スッと知識が出てきたのは置いといて……酷く効率が悪い魔術だなぁ。見た目として、出してる姿はとても格好良いから憧れるが、いざ出来る可能性が出てくると選択したくなくなる。
「……まさか、隠れているのに気付くとは思いませんでした、気配は消していたのですが……」
「まぁ……難しいが手段が無いわけではない」
衛宮士郎のような投影魔術はまず無理だ、そもそも厳密には別物……仮称でしかない。と、なると、やはりタタリを用いるしかないか?
あれなら情報を操ってるわけだがら中身まで理解出来るだろう……ちゃんとイメージ出来るかとか、俺にタタリが扱えるかとかは置いといて。今のところバッドニュースしか使えないし、将来の伸びに期待、かなぁ……。
「成る程、先程呟いていた単語はその手段に関わるものなわけですね」
まぁ、そうだ……って、あれ?
なんか話しかけられてるな、考え事に集中してて気付か……なかった……。
「黙り、ですか…まぁ当然詳しくは教えてはくれませんよね」
……美鈴……だと!?
いつの間に……って、俺が考え事している間か。いくら高速思考とはいえ、俺の不完全なのじゃ、あれだけ長い思考は短縮しきれないみたいだな。
状況的にも、そう待ってはもらえないだろうし……さっさと思考を切り替えて、なんとかしないと……。
「ですが、この質問には答えていただきます。どういった理由で、この紅魔館に近付いたのですか?」
至極真面目に、射抜くような目付きで美鈴は問い掛けてくる。
……理由なんて一つしかないんだが……「この赤い霧を止めに」等と、馬鹿正直に答えれば間違いなく止められる。それどころか、戦闘になるのは明らかだ。
と、なると。
「……少しばかり、ここの主に用があってね」
「用……?」
「うむ、私はとある誘いを受けたことがあってね。その時は断ったのだが……今になってどんな人物かが気になったのだよ」
7割ぐらいは本当のことだ。違うのは来た理由だけ、嘘というほどのものではない。
「…………成程。しかし、今日のところはお引き取り願います」
……うん、まぁ、そらそうだね。いくら色んなところで間抜けっぽく書かれていても、あのレミリアが選んだ門番なんだし、警戒して当然。というか、普通に考えて門番なら当たり前な反応だ。
しかしなぁ、流石に戦闘は避けたいし……よし。
「なら世間話などは?」
「はい?」
疑問符を浮かべながら、首を傾げる美鈴。急な提案だし、やはりこれも当然だろう。
「なに、ここまで来てあっさりと帰れるほど私はのんびりはしてないのでね。かといって、無理に通ろうとは思わない……君を倒すとなると、私では些か、ね」
「貴方の噂から考えれば、私ぐらいはどうにかなると思いますが?」
「噂は誇張されて伝わるものだよ、どのようなものかは知らないが……いやはや、私などでは、とてもとても……」
喉を鳴らすように笑いながら話す。ある種恒例ともなっているこの語り方にはツッコミを入れたいところだが、まぁそう悪い内容でもないし放置しておく。まだ死亡フラグというレベルでもないからな。
「何をお考えかは分かりませんが……それで諦めて帰ってくださるのですね?」
「勿論だとも、約束しよう」
「分かりました、では他に侵入しようという輩が現れるまではお付き合い致します」
警戒はしている様子だが、なんとか乗ってくれた。さて、とくに話したいことがあるわけじゃないけど、一先ず世間話でもしながら策を寝るか……。
…………………………
……………
………
会話を始めて十数分、どうしてこうなった。
「それでですね、咲夜さんったら酷いんですよ! ナイフですよ、ナイフを思い切りザクッと額に刺してきたんです!」
「ふむ、それはまた恐ろしい」
「恐ろしいなんてもんじゃないです……あれは悪魔です、悪魔の所業と言う他ありません!」
目元に涙を溜めながら、身振り手振りを交えて愚痴を吐き出す美鈴の姿が、そこにはあった。
よくもまぁ、ここまで叱られたり、お仕置きをされた話が出てくるものだと思いながら俺はそれを聞いている。
「他にも、凄く機嫌悪そうにしてた日があって……流石に拙いと思って真面目に門番してたんです。そしたら急に来て……」
「ふむ」
「私の胸にナイフを添えてきて、驚いて叫びながら飛び退ったら『あら、やたら大きい饅頭があるから切ってお嬢様にお出ししようかと思ったのに……』って、カニバリズム反対ですよ! いや私妖怪ですけど、その上お嬢様吸血鬼ですけど!」
うん、カニバリズムというには間違ってるね、人間じゃないし。というか本当に何が原因なんだ……声真似の再現度が高すぎて、俺もかなり恐怖したぞ。直接聞いたら多分泣くレベルだ。
「この一週間は、異変に備えてってことでご飯も沢山くれましたが、普段は寝てると減らされたり、酷いと抜かれたり……後でお嬢様がクッキーくれたりしますけど、血の味の」
「ほう、彼女は嗜好品にも血を入れるのかね」
「えぇ、フレーバーだかなんだかとして入れてます。……えっとですね、そのくれたクッキーを食べたりするとですね、物凄い数のナイフが襲ってくるんです……お嬢様が去った後に」
「あぁ、親愛する自分の主から施しを受ける君が妬ましいのだろう。従者としては仕方ない話なのでは?」
「刺さるんですよ! 痛いんですよ! 仕方ないで済ましたくないんです!」
涙目で俺に迫りながら叫ぶ美鈴、まぁナイフだからそりゃ刺さるし、痛いだろう。それに原作での設定を見る限り、切れ味は相当だと予想出来るし。
てか近いなぁ、こんなに近いと胸が当たげふんげふん。
「しかし、それは根本的に門番をしているのに寝る君が悪いのでは?」
「……それに関しては言い返せませんが、暇なんですよ。元々人が多く来ない場所ですし、そこらの妖怪はお嬢様の気配があるってだけでまずこの館に近付きませんし……」
「暇なのは門番としては喜ぶことだと思うのだが」
「確かに忙しいよりずっと良いですが、異変の準備をするまでの長い間一度も侵入者が居なかったんですよ? ここまでくると流石に辛いです」
うわぁ……どんぐらいかは分からないが、この酷く沈んだ顔を見るからに、相当長い期間だったんだろうなぁ。話してる分には結構真面目そうに感じるし……こっち来てから暇すぎて昼寝をするようになってしまったって感じなのかな。
少なくとも、会った瞬間の俺への殺気は幽香程ではないが、かなりのものだったし、警戒もかなりしていた。レミリアが門番に採用するぐらいだから当たり前なんだろうけど。
「ふむ、しかし門番の仕事はそれだけではないだろう? 例えば、来客を通す時も」
「来客なんて、以前に一人来たことがあるだけです。しかも、門を通ったりせず直接お嬢様の目の前に現れたとかで……侵入者にしろ、来客にしろ館内に直接移動されては仕事も無いですよ……」
館内に直接、ということは八雲紫、か? 他に来そうなのは居ないし、幻想郷に来たから何か話すことがあったのかな……管理者って立場なんだし、今みたいな勝手をされちゃ困るだろう。いやされちゃってるけど。
「確かに門を介さず中に入り込まれては打つ手は無い、か」
「はい、そういう意味では貴方が初の来客となりますね。やっと仕事が出来てます……愚痴聞いてもらってる状態ですが」
「気にしないでいいよ、こういうのはどこかで吐き出さないといつか限界が来てしまうからね」
苦笑しながら言っておく、美鈴の話し方というか、身振り手振りのおかげで愚痴の割には楽しく聞けた。それに仲も良くなった……と思う、来客って言ってくれてるから、多分そうだろう。
……しかし、来客か。今ぐらい仲が良くなってれば
「あぁそうだ、すまないが君の主に用があってね……通してくれるかな?」
なんて言ったら通してくれてるんだろうなぁ、今は異変中だから
「あ、はいすいません無駄に時間を取らせてしまって……どうぞ、お通りください」
無理だろ……………………え?
「……いやなに、先にも言ったが気にすることはないよ。今度来た時は何か差し入れでも持ってくるとしよう」
「ありがとうございます、楽しみにしてますね」
良い笑顔の美鈴の横を通り、門を潜る。流石に広く、館の中に入る扉は少し距離があるが……いやそういうのは置いといて、まさか通れるとは……。
実は話してたら浦島太郎みたいに時間が滅茶苦茶経ってるとかじゃ、ないよなぁ……うん、霊夢たちも来てないし、無い。
「…………って、待ってください! 通しちゃ駄目なんですってば!!」
あ、やべ気付いた。いや、むしろ当然か、気付かなかったら色々やばい子だ。
しかしこのままじゃ戦闘か、なんとかしたいな……。
「ふむ、まぁ気になるのは分かるが……それよりだね」
「なんですか、これ以上は何も聞く耳持ちませんよ」
構え、気なのだろうか腕に光を溜めてこちらを睨みつける美鈴。先程の警戒する時のに比べ、遥かに強い殺気を感じる……が。
「後ろから来ているよ、気を付けたまえ」
「え?」
―――魔符【スターダストレヴァリエ】
「きゃああああああ!?」
叫ぶ美鈴に、色取り取りの魔力で構成された星が襲いかかる。
不意打ちにも関わらず全弾直撃はせずに躱す辺り流石である、が……なんのためらいも無くいきなりスペルカード宣言した魔理沙も凄まじい。主に外道っぷりが。
「ちぇっ……ズェピアの奴め、忠告のせいで決め損なったじゃないか」
聞こえてる、聞こえてるよ魔理沙さん。完全に悪役の所業だよそれ、自機キャラの主人公とは思えない発言だよ。
「くぅっ、次から次へと、来るのは分かっていてもこんな同時に来るなんて」
「私がこのタイミングで来れたのは偶然だけどな」
私が……ん、おかしいな。となると霊夢はどうしたんだ? まさか来ないわけじゃないだろうし……後から来るのか?
まぁいいや、向こうは弾幕ごっこ始めるみたいだし、こっちはこっちで勝手に入らせてもらいますか。
扉を開き、背後から聞こえる美鈴の叫び声らしきものを無視しながら俺は館内に入ることに成功した。
爆発音凄いけど気にしない、気にしない。
かっこいい美鈴かと思った?
残念! かわいそうな美鈴ちゃんでした!!
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