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読んで字の如くな番外編です。
本編書けや、という意見もあると思いますが、我慢出来ず…あまり時間かけれなかったので出来はあっふふふん。

時間軸的には紅魔郷終了後の冬です。

菩薩のように広く、暖かい心でお読みください。
第二章~東方紅魔郷編~
番外編『俺とクリスマスと幸せと』
 12月25日……幻想郷に来てから早くも半年と少しが経とうとしている今日。俺は室内に居るというのに、寒さから白くなる息を吐きながら呟いた。

「ふむ……今日はクリスマス、か……」

 そう、クリスマス。独り身にはなんとも辛く、相手がいる人を妬ましく思ってしまう日である。
 俺だって親しくなっている人は多数いるが、付き合っている人はいない。ワラキアの見た目はイケメンだが、如何せん中身は俺だ。箱は仰々しく丁寧な梱包なのに、中身はタオルだったみたいな(それも安っぽい)肩透かし、当然、モテない。
 故に、なんとなくケーキを手作りしながら時間を潰そうと考え、実行している。今は焼けたスポンジを冷やしている途中……最早完成間近だ。

『シングルヘル、といったところか……』
「黙りたまえ、君もそう変わらないではないか」
『いやいや、人であった頃は妻帯者であったからね……恐らく充実していたよ』

 恐らく、というのは引っ掛かるが、どのみち腹立たしい。プンスカを通り越す勢いだ。

『そこで、君にも充実したクリスマスを過ごしてもらおうと思う』
「……何を世迷い事を」
『む? 今の人々はクリスマスにはプレゼントを送ると聞いたから、用意したのだが…?』
「その意味が分からない、更に言えばそれが充実と何故繋がるのか……という意味なのだが」

 ワラキアに突っ込みを入れながら、ケーキに乗せる為の苺を水洗いしていく。冷たいので辛いが……まぁ、耐えれる程度だ。
 ……と、無駄に本気を出して、作る為に準備を進めていると


 ―――トン、トン、トン、トン


 ゆっくり、静かにノックされた。この寒い日に誰だろうか、と首を傾げながらも玄関に向かい、開ける。
 そこには

「こ、こんにちは……ズェピアさん」
「……阿求?」

 阿求が暖かそうなマフラーと上着を身に纏い、少し震えながら立っていた。





…………………………
……………
………





 一先ず、阿求を家に招き入れ炬燵まで案内した。ちなみに、炬燵は炬燵でも掘り炬燵である、流石に普通の炬燵は無いらしい……まぁかなり暖まるから重宝しているが。

「……はふぅ……」

 阿求もこの通り、息を吐きながら緩みきっている、可愛い、可愛い。重要なことなので二回言いました、むしろもっと言いたいです。
 ……第一思考遮断、第二思考に切り替え。

「さて阿求、今日はどのような件で来たのかね?」

 変な方向に走り始めた思考から例のごとく切り替え、気になることについて聞く。考えてみれば、幻想郷にクリスマスという文化は無いだろうし、態々こんな寒い日に理由も無く訪ねてくることは無いだろうからだ。

「あ……はい、今日はクリスマスなのは……ご存知ですよね。何でも、親しい人同士で過ごす日だそうなので、一緒に過ごそうかと思いまして」

 俺に話しかけられ、意識が戻ったのか背筋を伸ばした阿求が答える。成る程、誰から聞いたのかは分からないが……外来人の誰かが、幻想郷の誰かに教えたのだろう。
 合っているとは言えない、むしろ間違った知識だが……まぁ、情報源を先の通りだと考えれば妥当なところか。

「一応、クリスマス、という日がどういうものかは正しく理解していますが、最近ではそういった意味合いもあると先日この手紙で知りました」
「手紙?」

 なんだ、本当はどんな日か理解してるのか。しかし、最近では……というのを知らせた手紙というのが分からない。
 外来人では無いと分かったし、そうなると……



 ―――『そこで、君にも充実したクリスマスを過ごしてもらおうと思う』



 ……まさか?

『さて、私は今日は早めに休息を取るとしようか。君は、楽しみたまえよ』

 ワラキアァァァァ! 予想外だ、予想外に素晴らしいプレゼントだ!! 歓喜のあまり名前叫ぶぐらいに素晴らしい、ありがとう、本当に……!
 ……と、待てワラキア、去り際の言葉に含みを感じるぞ? 気のせいか?

「ズェピアさん?」
「む、すまない……少し考え事をしていた。」

 不安そうに、俺に話しかける阿求。大丈夫だから、何も問題無いから。

「……と、忘れていた。阿求、ケーキは食べるかね?」
「ケーキ、ですか?」
「うむ、ケーキだ」

 言いながら台所のほうに向かう。興味があるのか、阿求がゆっくりと炬燵から抜け出て着いてくる。
 俺はそれをなんだか嬉しく思いながら、冷やしていたケーキのスポンジを取り出した。

「今からこのスポンジにクリームを塗ったり、飾り付け等をしていくのだが……どうかね?」
「手作りなんですか!?」
「うむ、料理はあまり得意ではないが……菓子作りは別でね、今のところ良い出来だよ」

 はー……と、どこか放心したように見つめる阿求。やはり予想外だったのだろう、俺も不思議だが……割と好きなんだよな、作るの。
 俺が苦笑しながら考えていると、阿求が思い付いたように口を開いた。

「何か、お手伝い出来ることはありますか?」
「手伝いかね?」
「はい、ケーキ作りは初めてですが、料理は教わっていますので……」
「…ふむ、ではお願いするとしよう。私より、君のほうが可愛らしく仕上げれるだろうしね」

 感謝の意味を込めて、頭を撫でてあげながら材料の入ったボウルを取り出す。それと泡立て器……機械ではなく、普通に手で混ぜるものと一緒に阿求に手渡す。

「ではこれを混ぜてくれるかね? 私は果物を洗っておくよ」
「はい、任せてください!」

 なんとも気合いの入った返事を受けながら、俺は苺の続きを洗いだし、ついでに葉の部分を切り落としていく。やはり水は冷たいが、先程とは違い二人での作業……精神的には段違いだ。

「……………………」

 無言で混ぜていく阿求、そんな真面目にやることは無いのだが……しかし手慣れた手付きではある。成る程、教わっているという腕は確からしい。

「……ふむ、苺はこんなところか……」

 思考しながら切っていると、あっさりと必要分の苺を用意し終えてしまった。本当にあっさり……阿求はどうかな?

「阿求、クリームの具合はどうかね?」
「あ、はい、幾らか出来てきたと思います」
「ふむ、そうか」

 確認の為に、また阿求のほうを向……く……。

「……阿求、クリームが付いているよ」
「え? ……あ……す、少し集中しすぎました……」

 慌てたように拭き取る阿求。……少し、エロく見えてしまった俺はアウトだろう、間違いなく。

「ズェピアさん、どのくらいまで混ぜれば良いのですか?」
「あぁ、そのぐらいでいいよ。後はクリームを塗り、苺を乗せるだけだ」

 少し慌てたが、なんとか返事をして葉を切った苺とスポンジを阿求のほうに近付ける。クリームを塗る為の道具も忘れずに。

「では、後は仕上げだが……お願いしていいかね?」
「わ、私でよければ……頑張ります」
「うむ、ではお願いしよう」

 俺がやるより、恐らく綺麗に仕上げてくれるだろう。そう思い、阿求に任せてみることにした。










 だが、失敗であった。

「うぅ……何故……」

 ……俺の目の前には、申し訳なさそうに俯き、呟く阿求。そして、クリームがあまり均等にならず、逆に均等に綺麗に並んだ苺が見事にアンバランスでシュールなショートケーキが存在した。
 ……おかしいな、手付きからはこんな完成形になりそうもなかったんだが。
 まぁ、いい、とりあえず阿求を慰めないと……。

「阿求、そう気にすることはないよ。初めて塗ったにしては上出来だ」
「ですが……申し訳ないです……」

 未だ落ち込んだままの阿求…どうするかな。先ず、安心させるためにケーキを切り分け、フォークで口に運ぶ。
 ……うん、美味い、何より。

「阿求が頑張ってくれた味がするね」
「ズェピアさん……」

 素直な感想を口にし、褒めてみる。効果はあったらしく、潤んだ瞳で此方を見てくる。優しく頭を撫で、その後ケーキの乗った皿と小皿を持ち炬燵のある部屋に移動する。

「さぁ、ここは冷える……炬燵で暖まりながらゆっくり食べようではないか」
「……はい!」

 先程のように着いてくる阿求を微笑ましく思いながら、炬燵に向かう。……と

「ズェピア、邪魔するよ」
「こら妹紅、ノックと挨拶をちゃんとしろ……あぁ、ズェピア、すまない」
「なに、気にしないであがってくれ」

 急な来客、妹紅と慧音に驚きながらも迎え入れる。手には酒や料理……まさか?

「君達も手紙を?」
「あぁ、誰かは分からないが…何故か信じれてね、あやかってみることにしたよ」

 何故か……魔術か何かだろうか? まぁいいか、感謝こそすれ他に思いは無い。

「ケーキが出来たところだよ、一緒に食べようではないか」

 自然と笑みを浮かべながら、二人も炬燵のある部屋まで案内する。
 ……うん、とても良いクリスマスになってきたな。

「け、慧音さん!? 妹紅さんも!?」
「あ、阿求!? な、何故ここに…?」
「なっ……まさかズェピアの奴……?」

 阿求が驚きの声をあげ、また、妹紅と慧音も(妹紅は後で殴る)驚いた様子……そういや言ってなかったな。その様子を少し笑いながら見ていたが、妹紅に睨まれたので顔を逸らす。
 ふと、気になったので窓から外を見ればちらほらと雪が降り始めている。……いやまさか、三人の女性とともにホワイトクリスマスを過ごせるとは…ワラキアには本当に感謝しないとな。
 ケーキをそれぞれの皿に乗せて渡し、酒……何故かワインまであるが、それもあけて注ぐ。
 四人だけでの、静かで、小さな宴。しかし、幸せを噛み締めるのにはこの上なく……素晴らしいものだ。
 ゆっくりと、会話でも楽しみながら……

「「「「メリークリスマス」」」」

 祝おう、互いの出会いを。







「ズェピアー、邪魔するぜー」
「同じく、お邪魔するわね」
「お邪魔するわ、ズェピア」
「シャンハーイ!」
「ホウラーイ!」

 などと、静かに幸せな結末を迎えようとしても。そうは問屋が卸さない、得てして、幻想郷の宴とは騒がしく、規模が大きくなるものである。



 完全に余談ではあるが、後日、レミリアに会ってみると何故来なかったのか、と問い詰められた。そもそもキリストの生誕を祝う日だというのに、レミリアが何故祝いたいのか。
 聞いてみると「相対する者の生誕さえ祝う余裕がある、ということよ。吸血鬼たるもの当然ね」と、ドヤ顔で返された。
 カリスマというより、カリヌマだった、とズェピアは語る。



 終われ
とても駆け足な内容でしたが、如何だったでしょうか。
二時間少々で、しかも携帯なので読みにくい部分もあったとは思いますが…。

……それではまた次回、頑張って書き上げますのでどうぞよしなに。


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