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前話を冷静になってから読んだら妙に恥ずかしくなった。
…コレが賢者モードか。

そんな状態で書き上げました第十二話、ちょっとだけ時間が飛びます。
そしてようやくあのおかたが登場!


多少無理矢理っぽい展開もありますので、そこらは仏様ソウルでどうか…。
それではどうぞ、第十二話です。
第一章~幻想入りした飲血鬼~
第十二話『俺と向日葵と最凶と・上』
「つまり、この問題にはこの式を使えば」
「あ! 分かった!!」
「うむ、よく出来た。花丸をあげよう」

 問題を理解し、正解を書いた少年のノートに赤い花丸を描く。嬉しそうに無邪気な笑みを浮かべる少年から離れ、教壇に置いてある椅子に座り生徒達を見る。
 一心不乱に鉛筆を動かす真面目な奴もいればグースカ寝て俺のチョークの餌食になる奴もいる。鉛筆を回しながら頭を抱える器用な奴もいればこちらをチラチラ伺っては顔を赤くして伏せる奴もいる。そんな十人十色の表情を眺めながら俺は少しボーッとし始めた。








 ……時が経つのは早いもので、俺が幻想郷に来てから一ヶ月が過ぎた。何かあったか、と問われても特に何も無かったと言えよう。
 霊夢達とはあの後も暇があれば神社に通うことで何度も会ったし、妹紅や阿求も家に訪ねて来たりした。慧音は手伝いをしてるし多分だが一番会っているだろう、今でもたまに食事を作ってくれるから一緒に過ごす時間も多い気がする。
 ……そういえば、少し前に文が来たりもしたな、また俺を新聞の記事として載せる許可を得に……だが。最初はまた断ろうと思ったんだが、ポストを作ったのはコイツらしく少々断り難かった。
 何せ仕事の依頼を入れてもらったりするのに役立っているからな。仕方ないのでとりあえず一回だけ許可を与えてその記事を書いた新聞を貰い、その内容で判断することにした。正直嬉々とした表情で帰って行ったのが恐い、笑顔として見るなら可愛かったんだがあのテンションはちょっとした恐怖だった。
 後、里の人々とはまだ微妙な距離感がある、まぁそれも当然だろう。人里の何でも屋という立場にこそあるが、結局のところ今の俺は人間じゃない。人々にとっては自分を容易く殺せる、しかも信用の無い存在だ。
 そう簡単に距離感は埋めれない。慧音とよく一緒に居るからこれでも多少はマシなほうだろう、もしそうでなかったらもっと厄介なことになっていたかもしれない。
 しかし依頼が無いわけではなく、受けたりもしていた。依頼の内容は畑を耕す手伝いから薬草等の採取、妖怪退治のような危険なものまで様々。最近はいくらか安定して依頼があるぐらいになった。
 信用は無いが、信頼は多少あるといったところか?



 ピピピッ! ピピピッ! ピピピッ!



「……今日はここまで、宿題は終わらなかった分と練習問題の三番だ。頑張ってやるように」

 授業終了を告げるアラームを聞いて思考を中断、授業終了という天国と宿題という地獄を与えてから退出する。
 教室からは帰れるという喜びの声と、宿題に対する悲しみの声の二つが聞こえてくる…真面目に授業受ければ練習問題だけで済んだのだから自業自得と諦めてもらうしかない。

「お疲れ様だ、ズェピア」
「それほどでもない」

 これを言うだけの余裕が出来た、流石に一ヶ月もあれば教師業にも慣れる。……慣れただけで上手に出来てるかは分からないが。
 そこからは慧音と一緒にテストの問題作りをして、ある程度区切りのいいところまで作ったので帰ることにした。

「それじゃズェピア、これが今週の給料だ。本当にありがとうな」
「ギブアンドテイクというやつだよ、礼を言われることでは無い」
「そうは言ってもな……。そうだ、今日の夜はうどんにするんだが一緒にどうだ? 妹紅も来るし三人で食べよう」

 ポン、と手を打ってから話す慧音。うどんか……そういやずっと食べてないな。

「ではお言葉に甘えるとしようか。何時頃向かえばいいかね?」
「だいたい七時ぐらいに来てくれ、なんだったら妹紅を迎えに送るが……」
「いや流石に遠慮する、妹紅に燃やされそうだ」

 冗談抜きにこんがり焼かれ……むしろ灰にされる? どのみち死ねるな、いや死なないと思うけど。

「では、また今夜に」
「あぁ、またな」

 片付けを終わらせ外に出る。
 基本的に俺が担当する時間は午前中で、昼には終わることが多いのだが今日は久しぶりに夕方までだった。元気に走り回る子供の姿もある。
 ……今日は誰とも約束が無いし、家で晩飯までダラダラとしてよう。何か食べたり神社に行ったりするには時間が中途半端だ。
 ……あぁ、依頼があったらそれをするのもいいだろう。どうせ大した時間はかからないだろうし。

「とにもかくにも、家に帰るのは変わらないな……」

 呟き、家に向かおうとした……が。

「あ……あの……」

 ……とはいかなかった。
 見覚えのある……確か、寺子屋にも通っている女の子が目の前に立っていた。なにやら紙を手に困った様子だが……依頼か?
 勉強なら授業後にでも聞くだろうし。
 目線を合わせるためにしゃがみ、話しかける。

「どうしたのかね?依頼があるのなら受けるが?」
「あ、はい……えと、コレ……」

 おずおずと差し出された紙にはこう書かれていた。

『ひまわりがほしい』

 とてもシンプルな内容だ。……向日葵、か。
 今は季節的に春を少し過ぎた辺りだからあるか微妙だな。

「何故、向日葵が欲しいのかね?」

 俺が聞くと突然泣きそうな顔になる女の子……って待て!?
 泣かないでくれ! 俺が虐めたみたいじゃないか!!

「お母さんが病気で、元気になってほしくて……好きなお花見たら元気でると思って……」
「………………」
「お母さんはひまわりが好きなんだけど、ひまわり売ってなくて、探しに行きたいけど外に出たら危ないからダメって言われてるし……」

 成る程ね……優しい子だな。

「お金はあまり無いけど、その「引き受けよう」……ふぇ?」
「引き受けよう、その依頼を。報酬は君の笑顔、というのは如何かな?」

 うぉぉぉぉぉ! 恥ずかしいぃぃぃぃぃ!!
 死ねる、今なら間違い無く死因羞恥死が発生する!!
 なんだよ笑顔が報酬って! 馬鹿なの!? 死ぬの!?
 流石ワラキアボディ、恥ずかしいセリフまでスラスラ出てきやがるぜ畜生!!

「あ、お、おねがいします!」
「あぁ、私に任せたまえ」

 ハハハ、厄介なことになりそうだ……。









…………………………
……………
……









 さて、とりあえず里の人に聞き込みをしたところ向日葵が年中咲いている不思議な場所があるそうな。どう考えても太陽の畑です本当にありがとうございました。
 ……とか嫌々ながらも期待を裏切るわけにはいかないので、ササッとやってきました。細かい道程は慧音さんに聞いて。
 慧音さん、かなり必死で止めてくれたなぁ。別れ際にはまるで今生の別れみたいな表情してたし。
 まぁ、正直死亡フラグを自ら立てるような行動だから仕方ないとは思う。けど、けどだ。コレは無いんじゃないか神様よ?

「何を考えてるのかしら?随分と余裕ね」

 俺の前には太陽の畑近くに住む大妖怪、風見幽香が綺麗に微笑みながら立っている。微笑んでるのに怖い、不思議。
 ……どんな二次創作でも避けて通るべき存在として彼女は書かれている。
 理由は三つ、彼女は幻想郷最古参で長寿の妖怪……つまりとんでもない実力者であり、しかもかなり好戦的な性格という厄介かつ危険極まりない存在だからだ。しかも趣味は弱い者虐め、究極加虐生物、USC(アルティメットサディスティッククリーチャー)なる異名さえ持つ。
 ……えー、なにこの歩く理不尽死亡フラグ。マザーのきまいらかよアンタは。
 正直、今の俺では勝ち目は無い。あっても一桁ぐらいだ。ワラキアの能力をフルに使えればまだ善戦できるだろうが、使えるわけも無し。

「今度は無視……私を無視するなんていい度胸ね?」

 思考に耽っていたら幽香がキレていた。このままだと俺マジで死ぬな。
 ……まずは交渉といくか。十中八九無駄だろうけど。

「すまないね、少々考え事をしていた」
「やっと返事したわね?」
「本当にすまなかった、非礼を詫びよう」

 まず謝罪、コレで少しでも怒りを収めてもらいたいものだ。次は本題なんだが……。

「で、だ。私としては争うつもりは毛頭無い、ただ花を貰いに来ただけだ」
「…………花を、ねぇ?」

 痛いよ、視線に込められた殺気が滅茶苦茶痛いよ……。まさに人を殺せる視線、よく泣かないな俺。自分を拍手して称えたいぐらいだ。
 とか泣き言を言いながらも、退くわけにはいかない。一度受けた依頼だ、完遂以外に道は無いのだよワトソン君。誰だよワトソン君て。

「そう、向日葵を一つ頂戴したいのだよ」
「私にメリットが無いわね?」
「メリット? 金が必要なら支払うが……?」
「お金はいいわ」

 金はいらない? 意味の分からないことを言いながら傘をたたむ幽香……ってマズイ!!
 慌てて腕を交差させると同時に、交差させた腕に凄まじい衝撃が襲いかかる。

「クッ!」
「よく防いだわね……まぁ、このくらいは当然かしら?」

 目の前には拳を突き出した状態でさも楽しげに微笑む幽香。
 ワラキアの身体じゃなかったら骨が折れてる一撃だ。それを繰り出して微笑むなんてドSにも程がある。
 ビリビリと痺れていたが、高い回復力ですぐに引いた。本当にこの回復力は素晴らしいと思う。
 しかしなぁ……いくら回復力があっても痛いのは嫌なんだよ。

「正直、荒事は好ましくないんだがね……」

 やべ、口から出ちゃった。
 と、何故か目を細めて俺を見てくる幽香。やめろよ、ゾクゾクするじゃないか……恐怖的な意味で。

「最近妖怪をかなりの数倒してるとかいう貴方が?」

 あっるぇー? なんでバレてるのかなー?

「貴方が噂になったのは一ヶ月程前、強い吸血鬼が現れたと聞いた」

 一ヶ月と少し……? 射命丸の言っていたあの噂か!?

「その時点ではまだ興味は無かったわ。次に聞いたのは貴方が何でも屋として多くの妖怪を倒しているという噂、これが決定打ね。少なくとも一定以上の力はあると分かったんだもの」

 ……妖怪退治なんざしなけりゃよかった、かなり厄介な話になってやがる。だけど逃げるのは間違いなく不可能……と、いうより逃げたら追いかけてくるだろうしなぁ。

「フフフ……」

 うん、あの目は間違いなく追いかけてくるね。
 なんかもう、今までに感じた命の危険なんざとは比べようが無い恐怖があるけど…とりあえず構えとくか。

「あら、構えるってことは……やっとやる気を出してくれたのかしら?」
「さて、どうだろうね? 案外私の頭の中では、逃げることを考えているかもしれないよ?」

 案外も何も、殆どそれで埋め尽くされてるんですけどねー。
 ……しかし、ワラキアの口調は中々に問題だな。余裕があるような喋りかただし、また抑揚も妙に芝居がかっているせいで拍車をかけてるし。

「命に保険は掛けたかね?」

 うおぉぉぉぉいっっっ!! なんだよ、なんだよ今の!?
 あんな台詞考えて無ェぞ、つか完全にワラキアの戦闘前の台詞じゃねぇか!!

「随分と余裕そうね、貴方自身の心配はしなくていいのかしら?」
「心配? 何を心配する必要がある? 筋書きは決まっており、後は我々という役者がそれに沿いこの花畑を舞台に踊るのみ……心配する要素など無いだろう?」

 止まれ! 止まってくれマイマウス!! ほら幽香の殺気が膨れ上がってるから!!

「筋書き、ねぇ……どんな筋書きかしら?」
「なに、幼き童にも分かるぐらい簡単な筋書きだ。決まっているのは終結の形のみという、簡単すぎて呆れるような筋書きとは言えない代物……それには」

 ……え? 慌てないのかって?
 …………フッ、もう諦めたよ。

「―――君の敗北が終結の形として記されている」

 瞬間、幽香の殺気だけでなく妖力までもが膨れ上がる。正直感じたことなんか無いような妖力だ。
 ……詰んだな、コレ。

「ならその筋書き、私の手で変えてあげるわ」

 かなりの殺気と妖力を感じさせながら言い放つ幽香。
 ……帰っていいかな? 多分いいよね? ……!!

「クッ!!」

 体を捻り、いつの間にか接近していた幽香の拳を避ける。……いつの間にかっていうか、間違いなく考え事をしていた間だろうけどな。

「シッ!」

 とりあえず横薙ぎに爪を振るう。だが幽香は後ろに退くことで簡単に回避する。
 大概の妖怪はこれで切り裂いて終わったんだが、流石に大妖怪なだけある。笑顔を保っているあたり、まだまだ速度を上げれるのだろう。
 ……正直嫌だが仕方ない、本気で腹をくくるとしよう。最早逃げは無く、敗北も無く、ただ勝つのみ、確実な勝利のために思考を費やし、身体を動かすとしよう。

「では……開幕といこうか」
「そうね……じゃあ、いくわよ!!」

互いに走り出し、戦闘は始まった……。
主人公ゆうかりんと遭遇、次回は久々にマトモなバトルか虐めか。
戦闘描写苦手だけど…まぁ頑張りますので見てやってください。


誤字脱字、こうしたらもっと良くなる等のアドバイスがありましたらお願いします。


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