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第二話です。

まぁ、とりあえず当面は普通の人間らしく行きます。


……いつフィーバーするか分かりませんが。
ワラキアですし。
第一章~幻想入りした飲血鬼~
第二話『俺と人里と先生と』
前回のあらすじ
・気がついたら森にいた
・しかも憑依っぽい感じだった
・頑張って現状を把握しようとしてたら化け物が出た
・逃げた、ひたすらに逃げた
・腋巫女に出会った
・外見が完全にワラキアだった
・orz←今ここ





「……いつまで落ち込んでるのよ?」

 orzの体制でいたら、霊夢に話しかけられた。声色からして呆れと苛々を足して2で割らないような気分なんだろう。
 だけどさ、俺もキツいわけだよ。産まれてからずっと連れ添った俺の肉体とバイバイベイビーな状況で。

 ……いや、待てよ?
 冷静に考えたら目を開かない限りかなりの美形の顔を手に入れたと考えれば良いんじゃないか? 設定にも美形みたいに書いてあった気がするし、案外アリといえばアリかもしれないな。背も高いし。高すぎる気もするけど。
 …っと、霊夢無視したみたいになってしまったな。早く謝るか、攻撃されたら死ねる。

「すまないね。少々現状を把握するために、思考に耽ってしまった」
「あー、いいわよ。大体の外来人……アンタ人間じゃないから正しいか分からないけどそう呼ぶわよ? まぁとりあえず外来人は状況の把握が出来ないし、出来ても発狂しちゃったりするし」

 ……まぁ、普通に考えたらありえないからな。外来人は大概妖怪に食われるだろうし、運良く生き延びてもそこから先がどうしようも無いだろう。頼れる相手も、生き残る術も、何も持たないのが普通だ。
 生き残れるのはチート能力を手に入れたウハウハな奴とか、上位妖怪やら神やらに転生或いは憑依したような奴ぐらいだと思う。

 ……俺は多分後者に当てはまるはずだ。妖怪でも、ましてや神なんかでは無いが死徒とはいえ吸血鬼。
しかも死徒二十七祖の一人に数えられる程の者だ。
 先程のように逃げに徹してれば、大概の相手からは逃げ切れるだろうし、頑張れば戦えるかもしれん。……いや正直戦いたくなんかないけどね。
 だが悲しいかな此処は幻想郷、危険は常に付きまとっている。それに対する対抗手段を得れた分、幸運かもしれない。ワラキアはゲームでそれなりに使い込んだキャラだから、技も再現できるかもしれないし。

 ……あれ? そういや幻想郷にも吸血鬼が居たような気がするぞ?
 確か、見た目は幼女な中身五百歳が。そして、その妹のなんでも破壊する危険なクレイジーガールが。
しかも自身をツェペシュの末裔だなんて言っちゃってた気がする。

「どうしたの? 顔色が悪いわよ?」
「あ、あぁすまない。やはり心の整理がつかなくてね……」

 半分本当で、半分嘘だ。確かに整理はついていないが、それは対策に関してだ。……あ、そうだ、紅魔館に近寄らなければいいんだ。簡単な話じゃん。
 つか、こんなに考え事してんのによく霊夢は待っててくれるな。外来人ってのは大概そうなのかな? ……聞いてみるか。

「聞きたいのだが、外来人というのは大概、今の私のように考え事に集中してしまうものなのかね?」
「別に貴方、たいして集中してるようには見えないわよ?考え事してる時間、三十秒にも満たないもの」

 ……三十秒にも満たないだと? そんなわけは無い。明らかにもっと時間がかかっているはずだ。

「……あぁ、そういうことか」
「なにが?」
「いやなに、一人言のようなものだ」

 簡単な、酷く簡単な話だ。
 今の俺はワラキア、即ち錬金術師【ズェピア・エルトナム・オベローン】の持つ思考の妙技――高速・分割思考を使えるということだ。恐らく無自覚のうちに高速思考をしていたのだろう。
 無論、完全なものではなく精々思考速度を普段より速める程度のものだろうが。
 だがコレは大きな武器になる。思考速度が上昇するのは様々な事に応用できるし、戦闘でもかなり役に立つだろう。
 ……そう考えると本当に結構な当たりくじを引いたな。

「で、貴方この後どうするの?」
「……できれば人里まで案内してくれるかね?」
「人里? ……まぁ、人が居る場所に向かいたいのは心理として当然だけど、頼れる人がいないんじゃないの?」

 頼れる人なんか居ません、居るわけないです。だが、頼りになる人なら居る……賭けであるのは否めないけど。

「どうなるかは筋書きが無いから分からないが、この舞台における私の立場如何では誰かしら協力者が現れてくれるだろう」

 何この言い回し、意味分からん。俺は単に、『運任せ』と言いたいだけなのに。
 ……まぁ、いいか。多分霊夢にも伝わったろうし。

「そうね、貴方なら劇に関係した仕事が来るかもしれないわね」

 あっるぇー? 妙な伝わりかたしちゃってるー?
 確かにワラキアなら劇関係の仕事出来そうだけど……中身は俺だし、ただ無駄な言い回しがあるだけだし。

「まぁいいわ、とりあえず人里に向かいましょ」
「うむ、よろしく頼むよ」









…………………………
……………
……








 何事も無く人里に到着。妖怪にも妖精にも遭遇しなかったのは霊夢が居たからだろう、流石は主人公。怖れられてるぜ。

「ほら、ここが人里よ」

 霊夢の言葉を聞き、入り口らしき所に立つ……おぉ。

「賑やかな場所だな」

 そこは不思議な場所だった。現代に近い服装の人もいれば、昔着られていたような服装の人までいる。しかし誰もが共通して生き生きとした表情で、通りは賑わっていた。
 幻想郷というと現代より文化レベルが低いから長生きもしにくいと思ったが老人もいる、というか走ってる。何あの速度怖い。普通に100m15秒ぐらいで走れるんじゃないか? 老人にしてはかなりパワフルだ。

「いつもこんなもんよ?」

 いつもあんな吃驚人間が居るのかこの里は。木◯葉も吃驚だってばよ。
 ……そういや、ふと思ったんだが。

「見張りのような存在は居ないのかね?」
「必要無いのよ、人里は襲ってはいけないルールがあるから」

 あー、そういやそんな設定があったな。……それに襲われてもこの里の人なら、大概の野良妖怪なんかは撃退出来そうだ。六割マジで。

「さて、人里まで連れて来てあげたけど、どうするの?」
「フム…また願いになってしまうが、寺子屋まで案内してくれるかね?」
「寺子屋……あぁそうね、確かにあそこなら助けてくれそうな人はいるわね」

 霊夢も気がついたようだ。有名といえば有名だしな。もうしたかは分からないが、作中で弾幕勝負したこともあったはずだ。
 まぁそうでなくとも人里をある程度出入りすれば名前と噂くらい耳にするか。唯一ある寺子屋のただ一人の先生で、優しくて、綺麗で、強くて、俺自身の好きなキャラランキングでも上位にいるあの人。
 ……最後のは分かるはず無いだろうけど言っておきたかった。後悔はしていない、褒めまくったことも後悔していない、大切なことなので以下略!

「でもなんで外から来たばっかりのアンタが知ってるのよ?」
「私の固有技能によるものだと解釈してくれると嬉しい」
「またそれ? そういえば、私のこともそれで知ってたのよね?」
「そうだね。どんな技能かは少々言葉では説明し難いので割愛してもいいかな?」
「べつにいいわよ? ……あ、ここが寺子屋よ」

 危ない危ない、なんとか深く追及されずにすんだ……。
 とりあえず案外時間がかかることも無く、寺子屋にはついた。というより普通に俺達の歩く速度が速かっただけだが。霊夢なんか後半軽く浮きながら案内してたし。
 それはさておき、ここからが問題だ。なんせ当面の住居の確保をしなくてはならない、だからこそ寺子屋に来たんだが。

「失礼する」
「入るわよー」

 一応、挨拶をしながら入った俺とは違い軽いノリで入った霊夢。そしてそのまま歩き出す。
多分教室に向かっているのだろう。遅れないように慌ててついて行く。

「慧音ー、居るー?」

 ザワザワと騒がしい部屋の扉をスライドさせて入る霊夢、授業が終わったタイミングだったのだろうか、生徒らしき子供達は帰りの準備をしていた。最も、今はその手を止めてこちらを凝視しているが。
 そして目的の人物、【上白沢 慧音】はチョークを投げてきた…ってオイ!?

「危ないではないか」

 飛んできたチョークを受け止め、呟く。何故かイントネーションは余裕ありげな感じだが、そんなものまったく無い。というか受け止めれるとは思ってなかったし。
 恐らく今の発言で俺の存在に気がついたのだろう、上白沢慧音は目を丸くしていた。
 ……一々フルネームは面倒だな。でもどう呼べば良いやら。

「アンタは知ってるようだけど、あれが慧音よ。頭突きは意識が飛ぶこともあるから気をつけて」

食らったことあるのかよ。

「流石に意識は飛ばないし、お前にした覚えは無いのだが……」
「そりゃ痛そうだもの、食らいたくないわよ。意識云々はイメージね、イメージ」

 ……なんという俺様。悪びれる様子が欠片も無いな。
 俺を指差しながら霊夢が口を開く。どうやら俺を紹介してくれるらしい。

「慧音、コイツは外来人で名前は……アンタ名前は?」
「……あぁ、そういえば名乗ってなかったね」

 うっかりしていた。霊夢にも聞かれなかったし、普通に名乗ったと思ってたよ。
 フム、出来れば本名を名乗りたいがワラキアの見た目で日本人の名前は無いよなぁ……って、ん?
 本名? あれ? 俺の名前はなんだったんだ?
 クソッ、自分の名前に関わるところだけ記憶が曖昧になってやがる……。
 一緒に馬鹿やってた友達とか、育ててくれた家族とかの顔や名前は思い出せるのに自分の名前は思い出せない。そのくせ、ゲームやら漫画みたいなののキャラ名だとか技名みたいのは憶えてる。
 …………意味が分からないけど、今は仕方ない、か。

「ズェピア・エルトナム・オベローン」
「え、えっと?」
「ズェピアが名前だから、後は憶えなくて構わないよ」

 追加で言っておく。こんな長い横文字な名前、紅魔館面子以外では居ないだろうし。……メディスンとかが居たか。
 俺個人としてもファミリーネームでは呼ばれたくないしな。俺自身のじゃないからどのみち微妙だが。

「……ズェピアよ。どうやら外来人らしいから、なんとかしてあげて」
「雑すぎるぞ流石に。ほら困惑してるじゃないか? 端折ること程、説明において愚かな事は無いぞ?」
「うっさいわねー、じゃあなんて説明すればいいのよ? 正直、貴方みたいに冷静な対応をする外来人なんか会ったことないから困惑してるのよ?」

 困惑してたのか。つか、俺は全然冷静じゃないんだがね。
 ……ワラキア補正だよな、間違いなく。

「すまないがズェピア…だったかな?詳しく説明してほしいんだが。あぁ、それと私は上白沢慧音、慧音で構わない」
「ふむ、説明するのはいいのだが主に何についてだ?」

 いきなりで少し驚いたが、なんとか返す。質問なぁ…、いくつかは予想出来るんだが予想外もありえるからな、構えておこう。

「まぁ、そんなに難しい話じゃない。外来人らしいから、どういった経緯でこの世界……幻想郷に辿り着いたのかというのと、種族についてだな。出来ればここに辿り着いた経緯も知りたいが……」
「前者は寝て起きたらこの世界に居た、というのが答えだな」
「にしては、マトモな格好をしているな?」
「それについてなんだが……複雑でいて簡潔な理由があってね」

 うん、真逆の意味なのはよく理解してる。だけどこれ以外に表現する手段が無かったんだ。

「種族は元人間、現吸血鬼」
「元? 現? ……眷属のようには見えないが?」
「そこについてだが……少々嘘のような話になるが、一応真実なので信じてもらえるかね?」
「それは聞いてから判断する」


 ですよねー。
 ……仕方ない、信じてもらえることに賭けよう。下手な嘘よりはマシだろうし、それに思い浮かばない。

「では、話すとするよ。ここに来るまでのことも含めてね」

 とりあえず俺は、全てを話すことにした。
なんか色々おかしいと思いますが、そこは教えてくれると幸いです。

書いてる側だと意外と気付けないんですね…。
改めて他の作者やってる人達の凄さを知りました。


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