【対談】勝間和代・安藤美冬「自分の仕事は周囲が決める?」
2012.07.02
人生をかけて成し遂げたいことはない?
――安藤さんは「ソーシャルメディア」「ノマド」「フリーランス」「セルフブランディング」をキーワードに、新しいワーキングスタイルなどについて、積極的に情報発信されていますね。
安藤 私はもともと「これをやらないと死ねない」というような、「人生をかけて成し遂げたいこと」を持っていない人間なんです。例えば「本を書きたい」「世界一周したい」「勝間さんに会いたい」「ノマド手帳をつくりたい」とか、そういう小さな夢や願望はたくさんあるんですけどね。そこで29歳の誕生日に──その時はまだ会社員だったのですが──「30歳になったら自分の名前で仕事しよう」「31歳になったら会社を立ち上げよう」と、先にビジョンや目標だけ決めてみたんです。では、何をやるのか?という「What」をずっと探し続けたのですが、なかなか見つからなかったんです。カフェを開くとかゲストハウスを経営するとか、いろいろ興味はあるけど、そのことだけ、自分の人生をかけてやりたいかと問われると、ちょっと考えてしまう。安藤美冬氏
勝間 ノマドカフェを経営してみたいとか?
安藤 はい、事務所、会議室、打ち合わせスペースなどを共有しながら、独立した仕事を行う「共働スペース」=「コワーキングスペース」的に便利に使えるようなカフェとか、確かに興味はあります。そして今の自分が置かれている環境なら、企画書をつくって、営業活動なども含めて真剣に動けば、おそらく実現できるのではとも思います。でも、やりません。単純に、ちょっと面倒臭いというのもあるし、そこまでの情熱が持てないんですよ。ただ、今回の対談もそうですけど、「ぜひに」と請われたことに関しては一生懸命応えたい、というタイプです。例えば、ソーシャルメディアでの発信によって、さまざまな依頼を引き寄せて、まずはそれらに誠実に応えていけばいいんじゃないか......というのが、さんざん悩み抜いた末にたどり着いた、現在のスタンスなんです。
勝間 なるほど。市場ニーズが向こうから自分のもとにやってくるから、それに対してひとつひとつ応えていけばいい、という考え方ですね。
依頼を引き寄せる仕掛け
安藤 そうです。それがソーシャルメディアで発信を始めたきっかけです。これだ!と没頭できるような「たったひとつのやりたいこと」がないから、まずは依頼していただいたことに丁寧にお応えしていこう、と。そして、そんな依頼を引き寄せる仕掛けをつくるためにソーシャルメディアを活用した、と。最初は細々と、知人のメルマガやスクールの立ち上げ、企画のお手伝いなどをしたりしながら半年くらい過ごして、そうこうしているうちに、出版社の編集部からPR全般を任せていただいたり、社会人や学生向けのセミナーで講義させていただいたり、コワーキングスペースのアドバイザリーをさせていただいたりと、仕事の幅が徐々に広がっていった感じです。発信を始めて芽が出始めたのが半年くらいなので、2011年の春あたりからですね、はっきりとしたかたちで仕事が来るようになったのは。
勝間 漠然としながらも、ある程度は自分のエリアは意識していこう。そのエリア内で発信をして、仕事をしていけば、自分に合いそうな役割を市場が見つけてくれるだろう......っていう発想ですよね。仕事が仕事を呼ぶようなかたちで。
安藤 はい。そして、その市場に見つけていただくためにも、発信は継続的に続けていなければならない。だから、例えばツイッターは1日に10〜20回つぶやくとか、フェイスブックは2~3日に1回、このような内容のことを投稿するとか、頻度から内容からすべて決めて実行していきました。プロフィールも、何十回も書き直しましたし。で、自分の「タグ」となるキーワードを「ノマド」「フリーランス」「ソーシャルメディア」「セルフブランディング」と定めて、それに沿った発言を中心を発信するようにしたわけです。
勝間 自分のポジションを定めて、そこでブランディングを確立していく。そうして周囲の人々から「こういうことできますか?」と問い合わせをしてもらうスタイルですよね。