職業名が、フリーランス、である。スマートフォンを片手にツイッターなどのソーシャルメディアを駆使して、自分の発想やアイデアを発信し、複数の肩書で複数の仕事を形作っていくのだという。そして実際に、安藤さんの仕事相手には大手企業の名が並んでいる。この働き方を若い人の一過性の現象と見るか、何か新しい胎動と考えるか、時代を見つめる目が問われるところだろう。
だが、組織を離れて仕事をしたいという欲求は、何も若い世代に限ったことではない。
見方を変えれば、それを実現できる新しいシステムと個人意識が根付いてきたとも言えるのではないか。
安藤さんは、厳しい出版の世界で7年間のキャリアを積んできた人だ。この多くの時間で、発想や発信の基礎をしっかりと身に着けた。だが組織の中では諦めなければならないこともあったそうだ。
「私がやりたいと思うこと、絶対にいけると確信する企画が通らない。また、精神的に疲労する営業がつらかった。私の発案をいいね、と喜んでくれる相手と自由に仕事をする人生にしようと、自分自身で決めたのです」
従来のフリーランスと違うのは、組織の発注を受けるのではなく、自由に仕事をし合うということ。この働き方の形態は、「ノマド(遊牧民)」と名付けられているが、安藤さんは「サテライト(衛星)」と定義している。
「組織という本体から離れて存在するという意味で使っています。住む場所も仕事も自分に合わせて、居たい所に居る(笑)。自由だけど、流されない覚悟の働き方」
祖母や母が、家族のために、本当はやりたかった自分の希望を諦める姿を見てきた。なぜできないのか。自由に生きるとは何か。10代の頃からその答えを探し求め、49カ国を旅して広い価値観に触れてきた安藤さんだ。
「いま、ソーシャルメディアを得て、私は私らしい生き方への思いが噴き出している」(笑)
確信的な挑戦者である。
(3月12日掲載、文:田中美絵・写真:南條良明)
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