相続・贈与税も払うのにも、新たに株式を買い取るにも、巨額の資金が必要だ。事実上不可能な金額になってきたが、それでも経営権は維持したい。多くの財閥は2代目オーナーから3代目への代替わりに差し掛かっており、深刻な問題だ。
それでも変わらない「会社は家族のもの」という意識
だからあの手この手を考える。よくある手は、新会社を設立することだ。オーナーと子供が出資して会社を設立する。グループの関連企業がこの会社に業務を集中的に発注する。あっという間に売上高は何千億、何兆ウォンに達する。もちろん利益率も高い。上場してどかんと株式売却益を上げる。この資金で別の有力グループ企業の株式を買い入れるわけだ。
こうした手口が、背任や横領になって有罪になった財閥総帥は何人もいる。分かっていてもやめられないのは、これだけ経営権の継承が難しくなっているにもかかわらず、「会社は自分の家族のもの」という考え方に全然変化がないからだ。
露骨な違法行為を避けようとすれば、支配構造はどんどん複雑になる。事業規模がどんどん大きくなるから、さらにややこしい。その結果が、「地下鉄路線」以上に見にくい図になってしまった。
財閥の支配構造やオーナー支配に反対する市民団体などは、「本来あり得ない3世への継承が堂々と進んでいる」と強く批判する。
財閥側は、公取委がこれほどまでに詳細な発表をしたことを警戒している。公取委は今回の発表だけではなく、今後は随時支配構造などの現況を公表する方針だ。
公取委は、グループ内部での株式持ち合いの中でも、特に「循環出資」を問題だとして是正を呼びかけている。一部の財閥は、持ち株会社制度への移行などを通して、「循環出資」についてはかなり解消しつつある。それでも、「循環出資」がオーナーのグループ支配に欠かせないグループもあり、なかなか進まないのが現状だ。
財閥の支配構造にメスが入る可能性も
公取委の発表が新聞紙面を賑わした7月2日は、国会の召集日にあたった。年末の大統領選挙を控え、新たに選ばれた国会議員は、与野党を問わず何らかの形での「財閥改革」を主張している。
韓国の大手紙デスクは「循環出資の解消は第一歩に過ぎない。グループ内での持ち合い比率の異常な高さや、さらに無理な3代継承を問題視する声が与野党を問わず強まっている」と語る。
「財閥抜きでは韓国経済は成長できない」という声の下で放置されてきたいびつな支配構造にメスが入る可能性も十分に出てきた。
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