金曜日ごとの首相官邸前の抗議集会に参加している。6月29日で4回目なのだが、回を重ねるごとに人数が増えている(警察発表が1万7000人、主催者発表が15〜20万人。笑っちゃうくらいに差があるが、少なくとも、どんどん増えていることはまちがいない)。ようやく、テレビや新聞などが報道しはじめたが、この再稼働ハンタイの声は鎮静化することはないだろう。
最初に参加したとき(主催者発表で4500人参加のとき)にもすでに気づいたことだが、日頃の抗議集会などの顔つき、ファッションとかなりちがう。ベビーカーや、キャリーバンドに赤ちゃんを抱いている母親、子どもの手をひく若いお父さん、会社帰りの男女、私のようなシニア、さらにはもっと高齢の夫婦(ペアールックの素敵な男女が、たまたま私の前にいた)……、そのなかにTシャツの若者が交じる。太鼓をたたく、カスタネット(?)などの音曲も入る。踊っているものもいる。29日は横断幕をもった外国人も目立った。
もうひとつ気づいたことがある。参加者が手にしているプラカードである。素朴である。手作り感にあふれている。自作のイラストも多い。ムンクのパクリですといって笑った青年がいた。手書きの横断幕を掲げる女性もいた。そこには寄せ書きのように、いろいろな抗議文が並んでいる。見た目もかなりバラバラである。組織を誇示するような幟はほとんどない。個人個人が勝手に集まっている。
もうひとつ驚いたことがある。参加者の大半がスマートフォンを掲げ、抗議集会の様子を撮影していることだ。「大飯原発、再稼働ハンタイ」と叫びながら、撮影している。これも不思議な光景だった。カメラとiPad(かなり多かった)を合わせると、膨大な動画が残される。持ち帰り、おそらく誰かに見せるのだろうが、こういった波及効果は想像を絶する。情報は広範囲に拡大しているのではないだろうか。
「アラブの春」とか、「ジャスミン革命」などと、みな「したり顔」で語るが、こと反原発にかぎり、現在の新聞・テレビの情報を信用していないことから起きていることのような気がしてならない。
学生時代(すでに40数年以上の前である)の抗議集会やデモの経験でいえば、・・・・・続きを読む
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- 鷲尾賢也(わしお・けんや)
1944年、東京生まれ。評論家。慶応義塾大学経済学部卒業。講談社入社。講談社現代新書編集長、学芸局長、取締役などを歴任。現代新書編集のほか、「選書メチエ」創刊をはじめ「現代思想の冒険者たち」「日本の歴史」など多くの書籍シリーズ企画を立ち上げる。退社後、出版・編集関係の評論活動に従事。著書に、『編集とはどのような仕事なのか――企画発想から人間交際まで』(トランスビュー)など。なお、歌人・小高賢はもう一つの顔である。小高賢の著書として『老いの歌――新しく生きる時間へ』(岩波新書)など。
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