“電力が足りなくなる”と進められた原発再稼動。 しかし本当にそれでよいのか、自らの経験から懸念する人がいます。 【大飯原発前の市民】 「再稼働反対!」 原発の再稼働反対を訴える人々で、おおい町が騒然とする中… 「制御棒マニュアルに切り替えてください、操作開始します」 「起動操作開始しました!」 7月1日午後9時、大飯原発3号機が再起動され、2日午前6時、核分裂が連続して起こる「臨界」に達しました。 安全対策に不安を持ちながらも夏の電力不足を避けるため、事実上再稼働を容認した関西の自治体の首長は複雑な心境を打ち明けます。 【滋賀県・嘉田由紀子知事】 「まだまだ危機管理体制、避難体制などが不十分ですのであくまで限定稼働でお願いしたい。」 【京都府・山田啓二知事】 「安心安全にもっとやりたかった。しかし時期が来てしまったというのは残念です。問題が先送りされて、なし崩し的に問題がすすんでいることに危惧を覚える」 【橋下徹・大阪市長】 「大都市大阪・関西圏は助かったので大飯再稼働には感謝しないといけないが、あくまでも暫定的な安全判断であるという事で大飯の再稼働問題は厳しくチェックしていかないといけない。原発に頼りすぎの(関西電力の)経営は考えないといけない」 原発が再稼働しても電力は十分とは言えませんが、少し安堵するのが医療関係者です。 【八幡中央病院(医聖会)・真鍋克次郎理事長】 「停電になったらお手上げ。たくさんの死者が出る」 この病院は計画停電の対象から除外されていますが突然のトラブルなどで大規模停電になれば深刻な状況になります。 病院では非常用電源を設置していますが2時間しか持ちません。 それも人工呼吸器など生命にかかわる装置と照明に限られていて、理事長は「電力を確保するために原発再稼働はやむを得ない」と話します。 【八幡中央病院(医聖会)・真鍋克次郎理事長】 「理屈よりも患者の命が大事。原発も事故が起きれば危険な装置ですが、いますぐに原発をやめるのは今の社会の電力需要にあっていないと思う」
福島県からは電力が足りないからと原発を動かすことに懸念する声があがっています。 放射性物質を帯びたがれきの山。 今も町の至るところで除染作業が行われています。 「福島の教訓が生かされていない」と警鐘を鳴らすのは、原子力ムラと闘った知事として知られる福島県の佐藤栄佐久前知事です。 【佐藤栄佐久・福島県前知事】 「(電気が)必要だから(原発は)安全なんだ、という理論は福島が起きたから展開しないと思っていたが、大飯を見ていたら大変なんだ、病院で電気がとまったらどうするということになっていつの間にか安全という話になっている」 【東京電力・南直哉社長(当時)】 「お詫び申し上げます」 10年前、東京電力で起きた福島第一原発などのトラブル隠し問題で検査のため東電管内の全ての原発が止まりました。 最大限の安全対策をすべきと訴える佐藤前知事に対し、「東京が大停電する、経済が破綻する」とマスコミからのバッシングが起きたといいます。 さらに国からは「安全対策」は十分できていると猛反論されました。 国によって作られた「安全神話」。 結果として福島第一原発の事故が起きました。 福島のように「再稼働ありき」ではなかったかと、佐藤前知事は訴えます。 【佐藤栄佐久・福島県前知事】 「国の方で脅しをかけてきた。『知事が言うことじゃない、国が安全を確保してやってるいんだから』と。結果として嘘だった。前の体質が今度の大飯の場合になかったのか、みなさんが検証した方がいい」 他の電力会社よりも原子力に依存しているために深刻な電力不足に陥った関西電力管内。 福島の教訓を今後どう活かすのか、もう一度一人一人が考えなければなりません。