ソフトウェア開発環境展に行ってきました。システム開発の生産性を向上させるツールや内部統制関連のソリューションを中心に見学をして参りました。東京ドーム何個分と言われる広い会場を色々と見て回ったのですが、他のものを忘れてしまうほどシャチハタの電子印鑑システム「パソコン決済」が気に入ってしまいました。

オルタナティブブログでも川上さんが捺印をワークフローで実現するのは難しいと言っておられました。

また、日本は捺印文化です。はんこの赤くて丸い印影の威力は健在です。はんこのない書類をシステムが保障しているとはいえ、それをきちんと見える形で表現するのは難しいことです。

以前ワークフローシステムの構築に携わった経験からすると、まずこの「はんこが無くなる」というところはなかなか抵抗が多いところです。強権を発動して無くしてみれば何の問題もないことがわかるのですが、「はんこ文化」という壁は厚いように思います。

また、稟議等を電子化する場合には各ユーザに書類が渡る毎にデータの完全性(改ざん等がないこと)を確保する事が重要であると感じます。Aさんが起票し、Bさんが承認し、Cさんが私見を加筆の上で承認し、Dさんが決裁を行うような場合を考えると、Dさんが決裁を行う際にはAさんが書いた内容とCさんが書いた内容をそれぞれ区別して認識できる必要があると思います。途中で誰がどう直したり加筆したりしたかわからないまま承認・決裁を行うことは問題があるからです。

例えば決裁後に書類に何か書き込めてしまうようだと、Dさんが決裁をした後にBさんが「個人的には危険だと思います」とコメントを書き入れるなどして責任逃れの手を打っておくというようなことができてしまいます。もっと危険なところでは途中の承認者が予算の金額を増やたり減らしたりしてしまうような事が考えられます。

Excel上で『電子印鑑っぽい画像を貼り付ける」にメールを組み合わせた超簡易ワークフローの場合、いつ誰がどこをどのように修正したのかというところが不明瞭になってしまいます。そこで、自己防衛のために「自分を通過した時はこういう状態だった」ことを証明するために印刷して紙媒体を各自保管しておくような運用になってしまい全然ペーパーレス化が進まなくなったという失敗例を聞いたことがあります。そのため、自分が承認・決裁をした時のファイルに電子署名をかけるという機能が実装されていることが多いように思われます。

さて、本日デモを見せていただいたシャチハタのシステムでは「はんこ文化」と「書類の完全性」という2つの問題に対してどのような実装が行われていたでしょうか。

なお、以下の内容には私が説明を理解し損ねているですとか、開発途上の機能が含まれていたりですとか、デモ版と製品版で相違がある等の可能性がありますのでその点ご理解をお願いします。

シャチハタのシステムでは、電子印鑑にそのものずばりの印鑑を用います。

シャチハタの電子印影ソリューション

タブレット状の機器の上に本物の印鑑(紙に捺印可能)としての機能とマウス機能とID機能の3役を備えた印鑑をすべらせてシステムを使用します。ハンコであり、マウスとしても使える印鑑です。このマウス印鑑は固有のIDを持っていますので、画面上の書類にポンとハンコを押すと自分のハンコが押されます。例えPCに不正ログインしたとしても印鑑を管理しておけば不正に決裁される心配がありません。

ハンコを押す際に、簡易的な捺印(電子署名を行わない)と、本格的な捺印(電子署名を行う)を選べるようでして、電子署名を行うとその時点の書類がバックアップされます。ので、次の人が書類に追記したような場合も、自分がハンコを押したのはこの状態の書類に対してです、と証明することができます。

他、自分が過去にどのような書類に対して承認を行ったかを確認できる機能など、細かいところまで作りこまれているように感じました。印象としてはあまりPCの操作に慣れていない方をターゲットにしているのではないかと思います。そういった方にとってはマウスを握るよりもハンコのほうが手に馴染んでいると思われますし、印鑑を押す行為からくるプレッシャーは安直な意思決定を妨げる効果があるようにも感じられます。どなただったか失念してしまったのですが、社印を絶対に他人に預けないようにしており、押すときになれば印鑑の捺印面を見つめながらクルクル回転させて「本当に押して良いか」どうかを心を落ち着けて考えるということを習慣づけているという経営者の方がいるという話も聞いたことがあります。

冒頭にも書いたとおり、無くしてみれば大したことないのがハンコなわけですが、それでもやはりハンコに頼りたいという人が多いのも事実です。ただ単にハンコの使用感を再現した製品が多い中でハンコにIDを割り振ることでセキュリティを高めつつ、承認の都度パスワードを入力しなくてはならないというような煩雑さを回避しているところは優れていると思います。更にそこに朱肉を埋め込んで本物のハンコにしてしまうというシャチハタの熱い思いに感動しました。明日も展示があると思いますので、気になった方はビッグサイトへ行くとデモを見せてもらえると思います。

yohei

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コメント
いちご 2008/05/16 11:00

私も一昨日の初日行きましたよー

会社はweb2.0 の方に出展してたんですが、前職が組込みだった事もあり、自社ブースそっちのけでうろうろしてしまいました・・・<社長、ごめんなさい。
前職でお世話になった方々も組込みの方へ出展されてて久々お会い出来たのがうれしかったですね。

判子はなかなかなくならないですよねぇ
うちの会社でも私の個人印と承認印が本社と営業所とで、それぞれ存在して、影武者が捺印してるという本末転倒な状態・・・・

最終日、強引に時間作ってもっかい見て回ろうかな。。。

yohei 2008/05/20 23:29

いちごさん、コメントありがとうございます。
web2.0のブースもいくつか立ち寄って話を聞きましたのでその中にいちごさんの会社もあったかもしれません。
判子は「影武者の捺印」がばれなかったり、本当に捺印した日付と別の日付を書き入れたりすることが容易な面もあります。そういった柔軟性も隠れた支持理由の1つなのかもしれないですね。


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山口 陽平

山口 陽平

国内SIerに勤務。現在の担当業務は資金決済法対応を中心とした資金移動業者や前払式支払手段発行者向けの態勢整備コンサルティング。松坂世代。

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