元東邦大准教授:論文172本のデータ捏造、学会が認定
毎日新聞 2012年06月29日 22時13分(最終更新 06月29日 22時19分)
史上空前の論文不正の背景には、昇進や研究費が論文の数や掲載誌の格で変わる、研究界独特の慣習がある。さらに今回の不祥事は、意図的な不正を見抜けない学界の限界も露呈した。
「昇進して教授を目指していたのではないか」。29日の会見で、調査特別委員長の澄川耕二・長崎大教授は捏造の動機をこう分析した。大学に勤める医師は教育・臨床に加えて研究も重要な業務で、論文はその結晶だ。
ある麻酔科医は「教授選では多くの人が、その人物より論文が載った雑誌のインパクトファクター(IF、雑誌の影響力を示す数値)を基準にする」と語る。
IFは雑誌によって1未満〜30以上とばらつきがあるが、藤井医師が論文を投稿していた専門誌のIFは5〜3と「それなりに一流」(澄川教授)だった。だが200本以上の論文を量産しながら、藤井医師が教授になることはなかった。「一流誌に載れば周囲からほめられる。(藤井医師にとって論文投稿は)麻薬のようなものだったのでは」と語る関係者もいる。