質問なるほドリ:論文の捏造、どうして起きる?=回答・久野華代
毎日新聞 2012年07月02日 東京朝刊
A 研究者の採用や研究費の支給を審査する際、志願者がどんな論文を何本書いたかが考慮されます。掲載された学術雑誌の質も重要です。米国の学術情報会社が考案した「インパクトファクター(IF)」という指標は雑誌の影響力を示すもので、30を超える著名雑誌から1以下までさまざまです。IFが高いほど業績に有利なので、研究者はIFが少しでも高い雑誌に載せたいと思っています。
Q 論文をめぐる不正は過去にもあったの。
A ソウル大の黄禹錫(ファンウソク)元教授が04年と05年、サイエンスに発表したES細胞(胚性幹細胞(はいせいかんさいぼう))に関する論文は、データや写真が捏造だったことが発覚しました。「ノーベル賞級」と騒がれた成果でしたが、同誌は見抜けませんでした。06年には、東京大の多比良和誠(たいらかずなり)教授(当時)のRNA(リボ核酸(かくさん))に関する論文について東大が調査し「データに信頼性がない」と判断、懲戒解雇しています。
Q どうすれば不正行為をなくせるのかな。
A 意図的な不正を見破るのは難しいので、不正行為を取り締まる第三者機関が必要との意見もあります。病気の治療や地震発生確率など、論文が扱うテーマは私たちの生活に直結するものが少なくありません。そこで起きた不正は科学への信頼を損ねるだけでなく、社会的にも大きな影響を及ぼします。(科学環境部)