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道徳教育のページ【中学校の資料】

高齢者に伝えたい ぼくらの心を- 年の差を越えてわかりあえるだろうか -

1 資料名「川遊びのできる川に - 市村はつゑさん - 」<中学校>

- 前半部 -

 

川遊びのできる川に 写真

小学校や中学校の子どもたちと一緒になって活動していると、「川に入っていい?」という言葉が聞かれ、とてもうれしくなります。その生き生きとした子どもたちの目が大好きなのです。

私が川のことに関心をもったのは平成7年のことでした。鉾田川は、濃い緑色でにおいがひどく、川のそばに住んでいる人は、窓が開けられない程とても汚い川でした。それまで私は仕事をもち、忙しく働いていたので、その汚さにあまり気をとめることもありませんでした。

ある日、地区の代表として町の勉強会に参加したとき、

「鉾田町周辺の環境がとてもひどい のよ。」

「困ったものね。」

という話を聞きました。そこで、自分の目で確かめようと、川に出かけてみたところ、あまりの汚さにがく然としたのです。
(こんなにひどいとは思わなかった。何とかしなくては)
 川といえば、魚が元気に泳ぐきれいな川とばかり思っていたのに、深緑色に濁って、鼻を突くにおいが漂っていたのです。来る日も来る日も、汚れてしまった川のことが気になって頭から離れませんでした。
 ある日、知り合いに、あまりにもひどい川の様子を話すと、
「こういうのがあるのよ。」
と、『ぼかし』のことを教えてくれました。ぼかしというのは、米ぬかに微生物の液をかけて、発酵させたものです。このぼかしに生ゴミを混ぜておくと、その生ゴミは分解されて半分の量に減り、それが肥料にもなるわけです。またその肥料ができるときに、水分が下に降りて、液が出てきます。出てきた液が、汚れた川をきれいにするというのです。
 本当にこんなことで川がきれいになるのかと半信半疑でした。しかし、まずは一歩を踏み出さなくてはという気持ちから、地域の人たちと協力してぼかしづくりが始まりました。ぼかしのことに詳しい方に教えてもらいながら、竹を二つに割って、その間にぼかしを詰め、しみ出てくるように穴を開けておきます。とにかく試行錯誤の毎日でした。私のやっていることが少しでも効果が出ますようにと、祈るような気持ちで頑張りました。澄みきったきれいな川になれば、多くの魚や鳥が住むようになり、子どもたちが川に入って遊べるようになるのではないかと、夢や希望はふくらみました。

 

― 後半部 ―

 

あるとき、こんな声を耳にしました。
「本当にこんなことで川がきれいになるのかしら。」
「川というものはいつも流れているわけだから、やってもやっても同じなんじゃないの。」
私たちの取り組みに疑問を投げかける声を聞いて、心がゆらぎました。
(私のやっていることはむだなのではないだろうか)
目立った効果を出すこともできず、ひと月またひと月と、時間ばかりが経過していきます。
自信がなくなりかけているそんなとき、いろいろな思いが夢となって出てくるのでした。子どもたちが自分のもとに集まってきて、
「きれいな川で、魚釣りをしたよ。」
「ほたるがとてもきれいだったよ。」
と、うれしそうに私に語りかけるのです。ぼかしづくりに取り組んでいる仲間に、早速、このすてきな夢のことを話してみました。すると、
「私もそんな夢を見た。」
「私も見た。見た。」

最初は竹だったものを、布の袋に切り替えてみたりもしました。次第にたくさんの男の人たちも手伝ってくれるようになりました。※(注)EM菌のうすめ液を、黄色いタンクに入れ、側溝や川に断続的に流れるように工夫もしてみました。
 学校の子どもたちと活動をしていると、川の流れを観察したり、魚釣りが好きだったり、虫などの小動物を捕まえたりしたことなど、興味をもったことをたくさん話してくれます。川があるだけで子どもたちがみんな生き生きするのです。ひょっとしたらこんなところから何かの天才が生まれるのかなと思っています。

川遊びのできる川に 写真

という言葉から元気が出てきて、みんなで今一度頑張ってみようという気力がわいてくるのでした。そこで、私たちの住む西台地区からきれいにしていこうということになりました。西台は名前の通り高台にあるので、そこが水の始点となっています。西台から排水されるあらゆる側溝にぼかしを注いでいけば、その水が市街地の側溝をきれいにし、鉾田川にもきれいな水がたどりつくというわけです。ぼかしをつくる装置をつくり、つくられたぼかしを運ぶ作業が毎日毎日根気強く続けられました。
 秋深まるころ、ほうらい橋というところの川の底が見えるようになったのです。あんなに濁っていた川の水が澄んできたのです。また魚が泳いでいる姿も目に見えるほどきれいになりました。そして、カワセミまでも往来するようになりました。カワセミを見かけたときは、うれしくてたまりませんでした。一年、365日の半分ぐらいは川を見ている毎日です。

川遊びのできる川に 写真

最初は竹だったものを、布の袋に切り替えてみたりもしました。次第にたくさんの男の人たちも手伝ってくれるようになりました。※(注)EM菌のうすめ液を、黄色いタンクに入れ、側溝や川に断続的に流れるように工夫もしてみました。
 学校の子どもたちと活動をしていると、川の流れを観察したり、魚釣りが好きだったり、虫などの小動物を捕まえたりしたことなど、興味をもったことをたくさん話してくれます。川があるだけで子どもたちがみんな生き生きするのです。ひょっとしたらこんなところから何かの天才が生まれるのかなと思っています。

※(注)EM菌:「有用(Effective)」と「微生物(Microーorganisms)」の頭文字をとったもの。 身の回りにいるバクテリアの中で、生ゴミを食べてエネルギーに変えて生きて いる菌を複合培養したもの。健康や環境を改善し、悪臭の除去、農業や畜産、家庭園芸に広く利用されている。

2 学習指導案

(1)主題名

理想の実現 1-(4)

 

(2)ねらい

常に理想を求め、その実現のために夢と希望をもち、自分の人生を切り拓 いていこうとする態度を育てる。

 

(3)「心に響く」ための工夫

ア 資料のよさ

  • 「総合的な学習の時間」でかかわった地域で活躍した人の実話なので、身近な人に自分自身を重ねて考えたり、人間の生き方や道徳的価値について共感的にとらえることができる。
  • 「理想の実現」のために、主人公の葛藤場面やそれを乗り越えて努力した場面を強調したが、環境問題や自然保護の価値に目を向けて取り扱うこともできる資料である。

イ 工夫あれこれ

工夫あれこれ 写真
  • 「ぼかし」と「EM菌」の実物や、市村さんが活動している様子や川の写真 を提示することによって内容をより具体的にとらえられるようにする。
  • 中心発問の場面では、生徒の名前マグネットを使用して、自分だったら「あきらめてしまう」と「粘り強く頑張る」と「その間」のどの場所に位置するかを黒板に貼り、自分の気持ちを確認しながらその理由について話し合う。
  • 名前マグネットを自由に移動させ、気持ちの変容を一目瞭然、黒板上で確認でき るようにする。
  • 終末で、市村さんからのメッセージを聞き、困難に出会いながらも夢や希望をもち続けて頑張る姿にふれさせる。

エ 配慮すること

この読み物資料を使った道徳の授業では、市村さんを扱った資料の読み取りに陥ってしまうことも考えられる。そこで、生徒一人一人のもっている理想の実現に向け、自分の人生を切り拓くために何が必要なのかを考えさせることを主眼としたい。そのために、一般化の場面では、自分の生活のこと、学習のこと、部活動のこと、将来の夢などの意見を大切に扱うことを心がけ、自分をしっかりと見つめ直させるようにする。

 

(4)展開例

学習活動と主な発問 教師の働きかけ

1 鉾田川の写真や、川の浄化に役に立つ「EM菌」「ぼかし」の実物を見る。

  • 川の写真や「EM菌」「ぼかし」などを提示することによって、具体的にとらえられるようにする。

2 資料「川遊びのできる川に」を読んで話し合う。

○ 「こんなひどいとは思わなかった。何とかしなくては。」と思った市村さんは、どんな川にしたかったのだろう。

◎ 「私のやっていることはむだなのではないだろうか。」と考えた市村さんの心にはどんな気持ちがあったのだろう。

 

○  川があるだけで、生き生きする子どもたちの姿を見ている市村さんは、どんな気持ちだったか

  • 資料の前半部を読み、市村さんの問題意識と取り組みを理解できるようにする。
  • 市村さんが考えていた鉾田川のイメージとあまりにもかけ離れている現実から、具体的にどのような川にしたいのかをとらえることにより、市村さんの理想にふれる。
  • 資料の後半部分を読む。
  • 揺れている不安な心という観点で、どんな気持ちが市村さんの心に存在したのかを想像し、揺れている2つの心をつかめるようにする。
  • 自分に投げかけられた周りの声による不安を乗り越えて出てきた成果であることに注目させたい。

3 「心のノート」P.26~29を活用して、理想の実現に向け、自分の人生を切り拓いていくために何が必要なのかを話し合う。

ア  自分の心のつぶやきを記入する。

イ  何が必要なのかを発表し合う

  • 読み物資料から離れ、自分について目を向けるようにする。
  • 人はそれぞれに理想をもっており、その実現に向かって、自分はどう生きていけばよいのかということを、じっくりと考えさせる。

4 市村さんからのメッセージを聞く。

  • 市村さんから、メッセージが届いたことを伝える。

【市村さんのメッセージ】

 

中学生のみなさん、こんにちは、私は西台「虹の友」の市村はつゑです。西台のお母さんたちとごみを減らそうと「ぼかし」を使った生ごみ減量に取り組みました。最初は半信半疑でしたが「だめでもともと」でいい、まず行動を起こそう、だれかがやらなくては変化はないと考えたのです。お母さんたちは馬力がありました。川を汚してしまった責任は大人たちにあります。きれいな川にして子どもたちに見せてあげたいのです。昔は泳いだり、魚を捕まえたり、蛍を見かけたりすることもできました。ずっと見られなかった蛍を、何と2年前に発見しました。蛍を発見したときには、本当に蛍の光かなと目を疑いました。おそるおそる近づいて蛍の光だと確信したときの感激は、今でも忘れることができません。思ってもみなかったカワセミにも出会いました。泳いでいる魚をダイビングキャッチをするところも皆さんに見せたいシーンの一つです。
 鉾田川の浄化ボランティアを始めて8年目になりました。あきらめずに活動し、少しずつでありますが、よい結果となって現れきているのです。まさに「継続は力なり」です。皆さんも困難にぶつかったときには、8年間もコツコツと頑張っているおばちゃんがいることを思い出してください。失敗をおそれず「だめでもともと」でいいのよ。あきらめずに頑張ってごらん。必ずよい結果がでるはずです。この浄化活動によって、川の周りに住む人たちも、とても喜んでくれています。私の夢にはまだまだ続きがあります。夢の実現は何年先のことになるのかはわかりません。みなさんもすてきな夢を、ずっとずっともち続けてください。

(5) 他の教育活動などとの関連

町の特色、問題点、人々の思いや願い、生き方にふれ、自分たちの手で理想の町づくりを模索していくことをねらいとした「総合的な学習の時間」と関連付けて、総合単元的に構成する。

3. 「心に響く」話し合いのようす

― 中心発問の授業の展開1(展開2の◎)―

T
「私のやっていることはむだなのではないだろうか。」と市村さんは疑問を抱いています。市村さんの心にはどんな気持ちがあったのだろうね。
S1
いくらやってもきれいにならない。こんなことでいいのかな。
S2
周りの人のことを聞いて、こんなことを始めなければよかったと感じている。
S3
でも、私があきらめたらだめだ。きっとこれできれいになるはずだ。
S4
無駄だといってやっていたら川はきれいにならない。
S5
でも、市村さんは、頑張って続けていれば必ず川はきれいになると思っているはずだ。
T
じゃぁ、ほかにちょっと違った意見をもっている人はいないかな。
S6
私はちょっと違って、市村さんは、どうやったら早くきれいになってくれるのかなと考えたと思います。
S7
もしこのまま、川がきれいにならなかったらどうしようかって考えてると思います。

 

― 中心発問の授業の展開2(展開2の◎) ―
 〈話し合いの後にマグネットで自分の気持ちを黒板に貼る〉

 

T
もしみんなが、市村さんだったらどの辺の気持ちになってのるかを、自分の名前を黒板に貼ってくれるかな。
 一つ目は、こんなことをやっても川はきれいにならないのでは。  
二つ目に、きっとこれで川はきれいになるはずだ。私があきらめたらだめだ。というふうに分けました。自分の心はどの辺にあるのかなっという場 所に貼りつけてみよう。  
(自分の意見はこっちなんだけど、市村さんはきっとこっちと思うんだけどな…)
T
どうしてここに貼ったのか、教えてくれる?
S1
周りの人にいろいろ言われたら、やる気がなくなってしまうから。
S2
一生懸命頑張っていても、周りの人に言われると、すぐにあきらめるというまではいかないけれど、不安になるからです。
S3
きれいにしようという強い心をもってここまで来たのだから、自分のやってきたことが無駄ではなかったという気持ちが大きいから。
S5
僕は、一度正しいと思って始めたことを途中で投げ出すことはしたくないからそう思います。
中心発問の授業の展開 写真

 

― 一般化をしている授業の展開(展開の3) ―

 

T
市村さんは、まだ今でも自分の夢を追い続けています。じゃあみんなはどうかな。みんなも自分の夢や希望を達成するために、自分の人生を切り拓いていくために何が必要なのかな。みんなの目標を達成するためには、どんなことが必要なのかな。
S8
最後まであきらめない心が大切。
S9
付け加えて、あきらめずに努力し続けること。
S10
たとえ周りから反対の意見をもらっても、しっかりと自分の気持ちを見失わないように、最後まであきらめないこと。
S11
あきらめないということは、忍耐力が必要だ。
S12
いっしょに頑張っている友達などの話を積極的に参考にすること。
S13
目標をしっかりともつこと。

4.生徒の変容のようす

生徒の実態1(男子18名、女子16名、計34名)
                調査日平成15年6月2日調査人数34人

1 あなたの夢や希望を教えてください。(複数回答)

  • 部活動で活躍する。(33人)
  • テストでよい点数をとり、成績を上げる。(28人)
  • 目指している高校、大学に進学する。(23人)
  • 目指している職業に就く。(6人)
  • お金持ちになる。(5人)
  • 学級で活躍する。(2人)
  • みんなと仲良くして、思いやりを大切にする。(1人)

2 夢や希望を達成するために何が大切だと思いますか。

  • 頑張ること
  • 努力すること、普段から心がけること
  • 目標をもつこと

矢印

道徳:「理想の実現」の授業  (平成15年10月17日実施)

矢印

生徒の実態2(男子18名、女子16名、計34名)
                調査日平成15年10月20日調査人数34人

1 あなたの夢や希望を教えてください。

  •  部活動で活躍する。(31人)
  • 合唱祭で金賞をとる。合唱祭にむけて頑張る(29人)
  • 役に立つ人になる。(12人)
  • 目指している高校、大学に進学する。(11人)
  • 勉強やテストでよい点数をとり、成績を上げる。(10人)
  • 目指している職業に就く。(6人)
  • みんなと仲良くして、思いやりを大切にする。(1人)

2 夢や希望を達成するために何が大切だと思いますか。

  •  あきらめない心
  • 努力し続けること
  • みんなで協力すること
  • 目標をもつこと
  • 忍耐力

全体的に変容している傾向として、自分個人の夢や希望から、集団として社会としての希望を重視する方向にあるということがいえる。また、夢や希望を達成するためには、抽象的に頑張るといった考え方から、頑張るためには協力、忍耐力といった具体化された概念が出てきているのが特徴である。

5 自作資料を作成してみて

  • 資料づくりを進めるにあたって、まず協力者に資料作成の趣旨をしっかり と理解してもらうことが大切であると感じた。「理想の実現」という視点で道徳の読み物資料をつくることを理解してもらうことにより、必要な情報を能率的に入手することができた。
  • 取材においては、活動の場に実際に行って、その人材の心情や活動を理解していくことが大切である。そして、道徳的な価値の設定によっては、記述の力点が違ってくるので、作成者が道徳的な価値をどの点にするのかという方針をしっかりともつ必要がある。
  • 市村さんの取材を進めていくうちに、教師にも市村さんの熱い心が伝わり、道徳の授業だけでなく、学校教育のいろいろな場面で、子どもたちに味わわせたいという思いでいっぱいになった。また、地域人材のよさというのは、目立っている派手な部分だけでなく、普段からの努力や微妙な心の揺れを感じ取ったり、考えさせたりしていく上で大変効果的であった。
資料を提供した学校 鉾田市立鉾田南中学校
住所 〒311-1517
茨城県鉾田市鉾田1469-1
TEL 0291-32-2757
FAX 0291-32-5907
URL http://www.city.hokota.ed.jp/junior_high_school/hs_hoko_south/
E-mail hokota-m@city.hokota.ed.jp

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