大飯原発の半径20キロ圏内に全市民が暮らす小浜市。半島の先端部(右手奥)に原発がある=小浜市役所で
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◆関電に交渉の主導権
小浜市が関西電力に求めた大飯原発の安全協定の見直しに、何ら進展がないまま3号機が今月上旬に発電を再開する。「原発が止まろうが、動こうが根っこの部分は同じ」。確たる姿勢を示せない市に対して、市民からため息が漏れる。
「見直しについては社内で協議している。(関電と市が)互いに話し合い、納得いくまで調整する」
六月十九日、大飯原発を訪れ、会見した関電の八木誠社長は、安全協定の見直しは期限を設けずに対応していく考えを示した。
報道陣から「見直しは前向きなのか」「やぶさかでないのか」と問われても八木社長は具体的な言及を避け、「真摯(しんし)に協議を重ねる」と述べるにとどまった。
大飯原発の半径十キロ圏内に一万六千人が暮らす小浜市。事故が起きれば影響を受けるのはおおい町と同じとの思いは「三・一一」でより強くなった。
市議会の池尾正彦議長は「なぜ、われわれの意向をくんでもらえないのか」と関電に対して不満をあらわにする。三月定例会での決議を受け、自身も美浜町の原子力事業本部を訪れ、立地地域並みに見直すよう正式に申し入れた。
市も五月に隣接地域で初となる住民説明会を開催。立地地域と隣接地域の格差是正を国に訴えた。
しかし、原発の“隣町”ができることはここまで。池尾議長は「次の一手? 今は考えられない」と打開策を見いだせないでいる。
市によると、関電との話し合いは事務レベルで続いている。担当課長は「相手のある交渉ごと」と難しさを説明するが、昨年六月、脱原発の意見書とりまとめに動いた山本益弘市議は「なぜ、もっと力を入れられないのか」と弱腰な市に注文を付ける。
大飯原発1号機が運転を開始したのは一九七九(昭和五十四)年三月。協定見直しは三十年余にわたる問題だが、六月定例会の一般質問で松崎晃治市長は「粘り強く取り組む」と答えるのがやっとだった。関電が交渉の主導権を握り続ける状況に変わりはない。
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