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大飯原発の最終検査終了 起動へ
7月1日 18時49分

大飯原発の最終検査終了 起動へ
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運転再開に向けた準備が進められている福井県の大飯原子力発電所3号機では、最終段階の検査がすべて終わり、関西電力は、1日午後9時から原子炉を起動する予定です。
国内で長期間止まった原子炉が動くのは、去年3月の東京電力福島第一原発の事故のあと初めてです。

大飯原発3号機では、先月16日に政府が運転再開を決めたあと、比較的小さなトラブルが合わせて9件起きていますが、関西電力は、運転再開に影響はないとして準備を進めてきました。
そして、原子炉をコントロールする制御棒が確実に機能するかを確認するなど最終段階の検査を、1日午後3時半ごろにすべて終え、いずれも問題はなかったということです。
このため関西電力は、午後9時から牧野経済産業副大臣や地元おおい町の時岡忍町長の立ち会いの下、制御棒を引き抜き始め、原子炉をおよそ1年3か月ぶりに起動する予定です。
また、国内の原発は5月から50基すべてが運転を止めていますが、長期間止まった原子炉が動くのは去年3月の福島第一原発の事故のあと初めてです。
大飯原発3号機は、予定どおりに進めば、2日午前6時ごろに核分裂が連続して起こる「臨界」に達し、今月4日に発電を開始して、8日にはフル稼働になる見通しで、国や福井県は現地に担当者を常駐させ、特別な監視体制の下、原子炉の状況を確認することにしています。

おおい町民 歓迎と不安

大飯原発3号機の原子炉が起動することについて、地元おおい町の住民からは、地域経済に欠かせないと歓迎する声の一方で、安全への不安も拭えないという声も聞かれました。
作業員として原発の工事に携わったことのある71歳の男性は「再稼働なしに地元の生活は成り立たないので、やっとここまでたどりついたことに安どしている」と歓迎する一方で、「原発が100%安全だとは思っていないし、福島の事故を受けて、不安がないといえばうそになる。想定外があっては困るので、安全第一に作業を進めてほしい」と話していました。
また、66歳の男性は「夏場の電力のためには原発の再稼働は必要で基本的には賛成だが、万が一、事故があったときにどうやって逃げるのか、具体的な対策がはっきりしていないことに不安を感じる」と話していました。
一方、77歳の女性は「原発事故の影響で福島ではいまだに多くの人が苦しんでいるなかで、再稼働するのは理解できない。国や電力会社の安全対策も信用できず、不安を感じながらの生活が続いている。1時間でも1秒でも早く、原発から脱却し、自然エネルギーに転換してもらいたい」と話していました。

福島県の避難住民“信じられない”

大飯原発の運転再開について、原発事故によって今も避難を強いられている福島県の住民からは疑問の声が聞かれました。
浪江町の警戒区域から避難している45歳の男性は「国や電力会社は電力不足というが、原発で事故が起これば、何十年にわたって人が住めなくなり、それまでの営みすべてが壊されてしまう。運転再開は、福島を見ていないとしか言えず、信じられない」と話していました。
同じ浪江町の63歳の女性は「福井県や政府の人たちは福島に来て、私たち被災者の声を聞くべきだと思います。原発で苦しむのは、私たちで終わりにしてほしい」と話していました。

東京で運転再開反対デモ

東京では、大飯原発3号機の運転再開に反対する市民グループがデモ行進を行い、再開を思いとどまるよう訴えました。
デモ行進には、主催者の発表でインターネットの呼びかけなどで知った市民などおよそ7000人が参加しました。
はじめにスタート地点の新宿区内の公園で集会が開かれ、主催者の代表が「これだけの反対のなかで再開を決めた野田総理はわれわれの声を全く聞いていない」などと政府の判断を強く批判しました。
このあと、参加者たちは雨の中、原発の運転再開に反対するのぼりやプラカードを掲げてデモ行進し、再開を思いとどまるよう訴えていました。
参加した女性は「あれだけの事故があっても原発を動かすというのは信じられない。生活よりもまずは命だと訴えたい」と話していました。
また、インターネットで知って参加したという男性は「原発反対の動きは市民の間でどんどん広がっていると感じる。こうした状況で運転再開するのは最悪の判断だ」と話していました。

原子炉起動時のトラブル 40年余で79件

大飯原発3号機は、早ければ今月4日に発電を開始し、その後およそ1か月間試験的に運転を続け、最後に行われる国の検査に合格すれば、本格的な営業運転が通常1年余りにわたって続きます。
経済産業省によりますと、本格的な営業運転の前の原子炉を動かし始めた時期には、原子炉の停止に至るようなケースを含め、国への報告が義務づけられている比較的大きなトラブルが、国内でおととしまでの40年余りで79件起きています。
▽このうち平成18年には、福井県にある日本原子力発電の敦賀原発2号機で、原子炉に水を送るポンプを冷やす装置で配管に穴が開いて水が漏れ、原子炉が手動で止められました。
原因は、配管の腐食を防ぐ薬剤を入れる装置の故障でした。
▽また平成21年には、石川県にある北陸電力の志賀原発2号機で、非常用のディーゼル発電機の試験運転を行ったところ、内部の潤滑油が漏れ出し原子炉が手動で止められました。
原因は、発電機の部品の弁がすり減って劣化したためで、弁の点検や取り替えが不十分だったことも明らかになり、管理上の不備が目立っています。
▽大飯原発3号機の発電に向けたこれまでの作業でも、先月19日に発電機を冷やすためのタンクで水位が下がったことを知らせる警報が鳴り、停止中に蒸発して減った水を補充していなかったという管理上の不備が起きています。
このため原子力安全・保安院は、大飯原発3号機の運転再開にあたり、原子炉の停止に至るような管理上の不備がないかどうか慎重に監視を続けています。

原子炉の起動作業とは

大飯原発3号機の原子炉には、核燃料が193体入っていて、1日午後9時から燃料の核分裂を抑えている「制御棒」を引き抜く作業を始めます。
そして作業が予定どおりに進めば、2日午前6時には、核分裂反応が連続して起こる「臨界」に達する見通しで、原子炉で熱が連続的に発生する状態になります。
また原子炉の熱で作った蒸気で今月4日からタービンを回し始め、発電を再開します。
ただ、この時点での出力は、フル稼働に対して5%ほどです。
その後、原子炉の出力を徐々に上げて最大の118万キロワットまで上昇させる予定で、3号機のフル稼働は早ければ8日になる見通しです。

国は監視体制強化

一方で国は、原子炉を動かすにあたって、これまで続けてきた特別な監視体制をさらに強化します。
国の原子力安全・保安院は、これまで発電所に派遣する検査官を、通常の4人から倍の8人に増やして、原子炉の状態などを監視しています。
今回の原子炉の起動にあたって、現地のオフサイトセンターに経済産業省の副大臣や政務官が交代で常駐して、トラブルや事故が起きた場合の政府との連絡や現場での指揮を執ります。
大飯原発の運転再開を巡っては、反対する人たちが東京や地元福井県を中心に大規模な抗議活動を続けていて、国や関西電力は安全対策や情報公開でその対応が厳しく問われています。

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