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焦点 福島・原発避難者への行政サービス 国の財政支援、不明確
福島第1原発事故の避難先となっている福島県内の自治体が、避難住民への行政サービスと財源確保に頭を痛めている。原発避難者特例法に基づく「特例事務」を除き、国の財政支援を受けられるかどうか不明確なためだ。集団避難を続ける双葉郡の町村が目指す避難中の生活拠点(仮の町)構想は実現まで遠く、当面の生活を支える受け入れ自治体に「責任」の2文字がのしかかる。(若林雅人、野内貴史)
◎「特例」外の経費どうする
避難住民の多くは元の自治体に住民登録したままで、納税先も元の自治体となる。特例事務の経費は第1次的に受け入れ自治体が負担するが、特例法は「国が必要な財政上の措置を講じる」とし、受け入れ自治体の負担分は特別交付税で措置される。 問題は、特例事務以外の行政サービス経費を誰が負担するかだ。
<線引きできず> 特例法には、受け入れ自治体によるその他の事務の実施と国の財政措置に関する規定はあるが、いずれも「努める」という努力規定にとどまる。 法的義務がないとはいえ、受け入れ自治体は本来の住民と避難住民への行政サービスを線引きできるわけではない。 避難区域から約1万1000人を受け入れている福島市は4月、75歳以上の市民向けに行っている市内の路線バス利用無料化事業の対象を避難住民にも広げた。事業は特例事務に該当しないが、市は当面の予算として4〜9月分で計634万円を計上した。 ごみを集積所まで持ち出せない高齢者、障害者宅に職員が赴き、安否確認を兼ねて代理収集する事業も、避難世帯を対象に加えた。 市財政課は「本年度は避難住民へのサービスに需要がどれほどあるか分からず、例年通り組んだ予算の中で対応している。次年度は実態を考慮して編成する必要がある」と説明する。 特別交付税にしても額は交付税総額の6%と決まっており、限られた範囲で実際にいくら措置されるのか、市町村には見えにくい。 5月中旬にあった東北市長会総会で福島市が特例事務以外に市が独自に避難住民に実施する行政サービス費用の全額国庫負担を求める議案を提出した。会津若松市も避難住民への行政サービス実施のための財政措置を要求するなど、受け入れ自治体は財政面での懸念と疑念を持ち始めている。
<「調査が必要」> 「仮の町」は地域コミュニティー維持のため、ほかの自治体に一時的に集団移住する構想。現時点で大熊、双葉、富岡、浪江の4町が打ち出しているが、住民の意向や受け入れ先自治体との調整が進まず、今後数年は現在の受け入れ先自治体が住民サービスを担う。 総務省自治行政局は「特例事務以外の行政サービスの具体的な実施状況を把握しておらず、受け入れ自治体の実情を調査する必要がある。どのような形で財政措置するかは今後、検討したい」と話す。 福島県の佐藤雄平知事は19日、県議会6月定例会の所信表明で「避難者を受け入れた市町村の公的サービスの圧迫という新たな課題も明らかになってきた」と言及。県は今後、国に受け入れ自治体への財政支援を要請する方向で検討している。
[特例事務]要介護認定や保育所入所など医療、福祉関係(8法律、166事務)、児童生徒の就学など教育関係(2法律、53事務)の計219事務。原発避難者特例法に基づいて指定された福島県内13市町村に代わり、1月から避難者受け入れ先自治体が担う。指定市町村はいわき、田村、南相馬の3市と川俣、広野、楢葉、富岡、大熊、双葉、浪江の7町、川内、葛尾、飯舘の3村。
2012年06月25日月曜日
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