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焦点 避難者2万人超えるいわき市 膨らむコスト、先見えず

家庭ごみを収集するいわき市環境整備公社の職員。避難者の流入でごみの総量が増えている=いわき市内郷

 福島第1原発事故による長期の避難生活は、受け入れ先の自治体が避難者に実施する行政サービスにとどまらず、市民生活のさまざまな場面に影響を与えている。

◎「仮の町」構想に市長困惑

 福島県双葉郡の町村を中心に約9600世帯、約2万2000人が避難しているいわき市。市立総合磐城共立病院に2月下旬、採用が内定していた東京都の看護師男性(28)から辞退の電話があった。
 「市内で借りられる部屋を見つけられません」。男性は理由を告げた。都内の医療機関から4月に移ることになっていた。荒川正勝事務局長は「都内に勤めながら探すのは難しかったのだろう」と肩を落とす。

<ごみ7000トン増加>
 いわき市も東日本大震災の津波で被災し、現在、市民約3000世帯、約8400人が市内の借り上げ住宅などに避難している。
 一方、市外からの避難者は仮設住宅だけで約3000戸。借り上げ住宅には計算上、市民の倍以上の6600世帯近くが入居している。
 市内の不動産業者は「市内で賃貸の空き物件を探すのは非常に難しい。市外からの避難者の中には、土地を買って自宅を新築する人も出てきた」と明かす。
 行政コストも、確実に増えている。
 市によると、市外から避難者が流入してきたことで年間のごみ処理量は約7000トン増加。元の自治体に住所を置いたまま転入した区域外就学の小中学生は1500人以上に上り、講師約40人を増員して配置した。
 市は2月から、市民講座や一人暮らしの高齢者への配食サービスなど、原則的に市民向けの53事業を避難者にも独自に提供し始めた。
 本年度当初予算で避難者分の経費として約2億3000万円を計上。内訳は、学用品や給食費の支給など小中学生の就学援助費が約9000万円で最多で、民間保育所での保育実施費約7000万円、予防接種費約3400万円と続く。
 避難者受け入れに伴うごみ収集や健康診断など11年度分の経費約3億円は、特別交付税で措置された。12年度分について市財政課は「要した分は国が措置すると思っている」と期待する半面、「どんな事業にどれだけ掛かるか読めず、先の見通しが立たない」と話す。

<3町設置望む>
 原発事故の避難区域に指定され、「仮の町」構想を打ち出している大熊、双葉、富岡、浪江の4町のうち、双葉町を除く3町がいわき市への仮の町設置を望んでいる。
 仮の町に対し、いわき市以外の受け入れ側は「全面的に協力する」(三保恵一・二本松市長)、「単体の自治体を市内につくることはあり得ない」(瀬戸孝則福島市長)と、賛否が分かれる。
 3町の「ラブコール」を、いわき市はどう受け止めるのか。渡辺敬夫市長は記者会見で「双葉郡は歴史的にも文化的にもつながりの深い場所」とした上で、「仮の町について正式な話がなく、コメントしようがない」と述べるにとどめた。


2012年06月25日月曜日


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