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「仮の町」と呼ばないで 「領土割譲」連想 福島・双葉郡

 福島第1原発事故で避難する福島県双葉郡の町村民が、ほかの自治体に一時集団移住する生活拠点が「仮の町」と呼ばれていることについて、県が神経をとがらせている。呼称に対し、受け入れ先の候補となる自治体が好意的な印象を持っていないためで、県は拠点整備に向けた協議の本格化をにらみ配慮を働かせているようだ。

 「仮の町という言葉に違和感がある」。27日の県議会6月定例会一般質問で、先崎温容議員(自民)が指摘した。答弁した県の八木卓造避難地域復興局長は仮の町を「新たな生活拠点」と呼び換え、拠点整備の調整に積極的に関わると述べた。
 仮の町は県内外に分散避難している住民が、ほかの自治体に一時的に集団で居住する構想。現時点で大熊、双葉、富岡、浪江の4町が打ち出し、うち大熊、富岡、浪江の3町が候補地にいわき市を挙げている。
 いわき市は双葉郡と地理的、風土的に近く、拠点整備の有力候補地となることは確実だ。県幹部は「そのいわき市が仮の町の呼称を最も嫌がっている」と明かす。
 拠点整備の調整では、いわき市が主な交渉先となる可能性が高い。県としては同市と良好な関係を保ちたいのが本音だ。
 県避難地域復興局は「仮の『町』は自治体の中に別の自治体ができるイメージで『領土割譲』の印象を与えかねない。仮住まいと考えない避難者が住むかもしれず、『仮』もなじまない」と説明。整備先と避難住民の双方への配慮をにじませる。
 政府も福島復興再生基本方針の検討案の中で、仮の町の概念を「町外コミュニティー」と表現した。復興庁福島復興局は「これから協議が始まる段階でまだ統一名称が決まっていない」と話す。
 双葉郡内でも、最初に「仮の町」を使い始めた双葉町や、「リトル浪江」と表現する浪江町など一様ではない。
 大熊町は策定中の復興計画素案に「いわき市に拠点を設けて役場機能と教育施設を設置する」と盛り込んだ。仮の町の呼称は「イメージがよくない」(渡辺利綱町長)として使っていない。
 町幹部は「仮の町は端的に説明しやすい言葉なので使うこともあるが、落ち着いて生活できない印象も与える。呼称は検討課題だ」と話す。


2012年06月28日木曜日


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