ここから本文エリア 道路デザイン 自転車守れ2012年06月25日
筑波大学の構内に一風変わった道路ができた。車道全体にケヤキと葉っぱの模様が描かれ、両脇には「枯れ葉色」の自転車専用レーン。「シェアードスペース」=キーマーク=という概念をもとに、同大の教授らが設計した。白い中央線や縁石はなく、一見すると危ないようだが、その分、車と自転車が互いに注意を払うことで安全運転につながるという。 この自転車専用レーンは今春、完成した。大学を囲むように学外へと通じる全長約4キロの「ループ道路」の一部260メートルにあり、車道は幅を9メートルから6メートルに狭め、両脇の1・5メートルずつを自転車用レーンにあてた。レーンの枯れ葉色は、茶色を薄めたような色合いだ。 道路を整備した背景に、南北で5キロ、東西に1キロと全国でも最大級の敷地と約1万6千人の学生を抱える大学の悩みがある。自転車のマナーと安全の問題だ。 学内で自転車を使う学生は1万人以上。大学の各施設を結び、学内を縦断する遊歩道(ペデストリアンウェイ)を走り回る。学内で発生する自転車事故は年間約150件にのぼる。 そこで、敷地内の遊歩道に集中する自転車を分散させる狙いで、敷地を囲むループ道路に自転車専用レーンの導入を決めた。ループ道路は車の往来も多いため、安全策としてシェアードスペースを取り入れることにした。 「危険を感じさせて、交通を沈静化させるのがねらい」。自転車の問題に取り組み、シェアードスペースを研究する西川潔名誉教授(サイン・アート計画)はこう解説する。 レーンは枯れ葉色で、車道いっぱいに葉っぱとケヤキの模様が描かれている。白色の中央線と横断歩道の表示を消し、路面と同系色にした。車と自転車双方にとって危ないようにも見えるが、西川さんは「車は中央線がない分、注意を払うのでスピードが落ちる。車と自転車が互いに危険性を認識することでかえって安全運転につながる」という。 景観も損ねない。枯れ葉色のレーンは、道路沿いのケヤキ並木にとけ込んでいる。「ドライバーに不快感を与えず、かつ注意を払える色」と西川さん。 国道や県道にできる一般的な自転車レーンは青色が多い。同じく学内の自転車問題に取り組む山本早里准教授(色彩計画)はいう。 「青は発色が強く目立つのは利点だが、景観を損ねてしまう」 大学は今後、利用状況を調べ、問題解決に一定の効果があれば同じような道路を増やすことも検討する。 西川さんは「道路を道路らしく造ってしまえば、自転車も車も走りやすくなるだけで、危険性はかえって高まる。道路を、大学のキャンパスという文脈に置き変え、問題を解決したい」と話す。(斉藤佑介) (キーマーク) オランダの交通技術者ハンス・モンデルマンが1980年代に発案した都市デザインの概念。標識や信号、横断歩道、中央線などをなくすことで歩行者や車の自主性を高め、アイコンタクトをしながら通行するよう促すことで、交通の安全性も高まる。欧州が先進的に取り組む。日本では2011年、京都市で2週間、白線を消してカラー舗装する実験があった。
マイタウン茨城
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