われわれが地球上で生活できるのも太陽の恵みのおかげ。その太陽の様子が最近おかしくなっている。異常と言えるほどその活動が静かになっているのだ。歴史上、太陽活動が長期間にわたり不活発だった時期があり、その時の地球の気候は寒冷だった。太陽はこれからどうなり、地球の気候への影響はあるのか。
太陽活動の活発さの指標となるのが太陽表面に現れる黒点の数の多さ。その数はほぼ11年の周期で増減を繰り返す。黒点数のピークを極大、底を極小と呼ぶ。現在は来年春過ぎとみられる極大の時期に向けて太陽活動が上昇しており、ここ数カ月は大規模なフレア(爆発現象)が起きたりもしているものの、全体的に活動度は低い。
極小期前後での累積無黒点日数(黒点が1つも見えない日の累積)は直近では814日に及び、これは110~140年ぶりに黒点数が少ないことを意味している。黒点数だけでなく、活動周期が11年以上に伸びたり、太陽から吹き出すプラズマの風(太陽風)が弱くなったりしている。
太陽に何が起きているのか。日本の太陽観測衛星「ひので」(2006年9月打ち上げ)のデータからわかってきたのは、太陽の磁気構造が異常な形をとりつつあるということだ。太陽は地球と同じように南北が反対の極性を持つ「2重極」の構造だ。極大期に南北の極性が入れ替わる。
北極がS極で南極がN極だったものが、今年に入り、南極がN極を維持したまま、北極がS極からN極に変わりつつある。このまま行くと、北と南がN極で、赤道付近がS極という「4重極」になるとみられる。こうした変則的な磁場の構造は、最近の研究によると、マウンダー極小期と呼ばれる17世紀を中心とした近世の寒冷期にも起きていたらしい。
太陽活動の低下は、マウンダー極小期と同じように、地球の気候を寒冷化させるのだろうか。太陽活動と気候変動をつなぐものとしてカギを握るのが、宇宙のはるかかなたからやってくる銀河宇宙線だ。マウンダー極小期のような寒冷な時期には、大量の宇宙線が地球に入り込んでいた。科学者が有力視しているのは、宇宙線が増えると雲ができやすくなり、気温が下がるのではないかという仮説だ。
想定されている宇宙線の作用としては、荷電粒子である宇宙線が生み出すイオンの効果によって雲の核が形成されやすくなることや、雲にたまる電荷が増えることで雲の成長が促進されることなどがある。これを実験室で確かめる試みも動き出している。
(詳細は25日発売の日経サイエンス8月号に掲載)
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地球、太陽
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