キム第1書記の母親称賛の映像制作6月30日 20時23分
北朝鮮のキム・ジョンウン第1書記の母で、これまで公には紹介されてこなかったコ・ヨンヒ氏を称賛する映像が制作されていたことが明らかになり、母親も偉大だと強調することで、キム第1書記の権威をさらに高めたいねらいがあるとみられます。
この映像は、去年、北朝鮮の朝鮮労働党が制作したもので、内容の多くはコ・ヨンヒ氏がキム・ジョンイル総書記に同行し、軍の部隊を視察する様子で、キム総書記が進めてきた軍事優先の政治の一端を担ってきたことをアピールしています。
また、銃を握っている写真を使って射撃の名人だとしているほか、幼い頃のキム・ジョンウン第1書記が絵を描くのを見守る母親としての一面も紹介しています。
さらに、コ・ヨンヒ氏のスピーチも収録されており、「われわれ幹部と人民は、キム総書記に対する信頼を抱いて生きています」などと話しています。
一方で、映像には名前が一切出てこないほか、大阪生まれの在日朝鮮人だったことなど経歴は触れられていません。
コ・ヨンヒ氏は、キム総書記の4番目の夫人とされていますが、公に紹介されたことはなく、彼女の映像の存在が明らかになるのは初めてです。
映像を入手した関西大学のリ・ヨンファ教授によりますと、先月頃から党や軍の幹部の会合で上映されているということで、リ教授は「歴代の指導者の母親と同じように、キム総書記を陰で支える女性として演出されている」と分析しています。
北朝鮮としては、父親だけでなく母親も偉大だと強調することで、まだ若く実績に乏しいキム第1書記の権威をさらに高めたいねらいがあるとみられます。
どんな人物か
コ・ヨンヒ氏は大阪で生まれた在日朝鮮人で、1960年代の帰還事業で家族と共に北朝鮮に渡りました。
北朝鮮では芸術団に所属して、舞踊家として活躍し、昭和48年には芸術団の来日公演にも参加しています。
こうした活動を通じてキム・ジョンイル総書記に見初められて、キム総書記の4番目の妻になったとされ、キム第1書記をはじめ兄のジョンチョル氏、妹のヨジョン氏と3人の子どもを産みました。
北朝鮮では抗日戦争に参加したメンバーの血筋を重視することから、在日朝鮮人出身であるコ・ヨンヒ氏の存在が公にされることはなく、2004年に乳がんの治療を受けていたフランス・パリの病院で死去したとされています。
ただ、北朝鮮の国営メディアでは、過去に「尊敬するオモニ」などという間接的な表現によってコ・ヨンヒ氏が紹介されたことがあったほか、去年6月には朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」でコ・ヨンヒ氏を指すとみられるクロフネツツジというツツジ科の花を題材とした長文の記事が掲載されたことがありました。
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