「ヤクルト4‐6阪神」(30日、神宮)
トリが止めた。トリで止めた。さすがは野手キャプテンだ。阪神・鳥谷敬内野手(31)が先制ソロ、タイムリー、そして決勝の犠牲フライと3打席連続の3打点を挙げた。チームの連敗は4でストップ。阪神が、最大5点リードを守れなかったこのカード初戦29日の悪夢を一掃した。
背中で、バットで、野手キャプテンが4連敗中のチームを鼓舞した。試合開始の余韻が残る初回2死の第1打席。鳥谷がロマンの真ん中直球を逃さず、右翼ポール横へ今季3号をぶち込んだ。
「最初は切れるかと思ったんですけど、そのまま入ってくれてよかった。昨日、嫌な負け方をしていたので、先に点を取りたかった」
5月8日・広島戦以来、36試合ぶりのアーチで先制したが、序盤は点を取っては取られる、シーソーゲーム。流れを奪われそうになるたびに、背番号1が引き寄せた。2点リードの三回1死三塁では外角シュートを左前へ流し打ち、2打点目。
同点に追いつかれた後の五回1死一、三塁では3ボールから高め直球を強振し、右犠飛で決勝点を挙げた。サインで打ちにいった犠飛は、あとひと伸びで本塁打という当たり。冗談交じりに「ちょっと力不足です。もう少し飛んでもいいかな、と」と振り返った。
不敗神話がある。これで鳥谷が本塁打を打ったヤクルト戦は、8連勝。通算成績でも圧巻の13勝1敗となった。この日も3打点の活躍で『ヤ戦トリ弾伝説』はより強固になり、継続された。
クールな印象のある鳥谷だが、最近は野球少年のように叫ぶ。胸の「C」マークが駆り立てる、チームへの熱い思いの発露だ。練習前のアップの最後に、いじられ役の新井良と繰り広げる“漫才”は、今や恒例行事だ。「盛り上がるから」と新井良に大声でダッシュするように指令を下す。
6月17日のロッテ戦前には、新井良と一緒に大声を張り上げながら走り、「なんでお前と盛り上げなきゃいけないんだよ」と突っ込んで爆笑を誘った。新井良が「ナイス キャプテンシー!!」と返して、アップが終了。率先して盛り上げ役を務め、個人の成績だけではないプラスアルファをチームに生んでいる。
打撃の調子自体も上昇傾向だ。和田監督は「トリが振れてきたのが1番の収穫」と目尻を下げた。鳥谷は言う。「一戦一戦、しっかり戦って、借金を1つずつ減らし、シーズンの最後に笑いたい」。早大時代を過ごした神宮で、まずは連勝を狙う。それを7月反攻の足掛かりにしてみせる。
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