ゆらゆら揺れるベルトの上を歩いたり跳ねたり。米国発祥のニュースポーツ「スラックライン」が、日本でもじわりと人気を広げている。年齢や性別に関係なく楽しめ、体幹を鍛える運動にもなるため、3年ほど前から愛好者が増加。兵庫県明石市では全国大会のジュニア部門で優勝した小学生選手が普及に一役買っている。(小林良多)
「前のめりになってるよ。『おへそに重心』を意識して」。6月中旬、明石市が初めて企画したスラックラインの体験教室。子どもから大人まで30人が、幅約5センチのベルト状のラインに乗り“綱渡り”に挑戦した。
ラインの高さは地面から30〜50センチほど。片足で立って体勢をキープする練習から始める。体が傾かないよう頭上に上げた両手を揺らしてバランスを取るのがコツだ。
最初は「見た目よりかなり難しい」と悪戦苦闘していた参加者たちだが、約2時間の練習で前進や方向転換ができるようになる人も。息子を連れて体験した女性(38)=明石市魚住町=は「背筋が自然と伸びて姿勢が良くなりそう」と汗をぬぐった。
スラックラインは、米国でロッククライマーたちが鉄製チェーンに乗ってバランス感覚を磨いたのが発祥とされる。2007年にドイツのブランドが、木や柱の間にナイロン製ベルトを簡単に張れるキットを発売すると人気が上昇。トランポリン競技のように胸や尻からラインの上に落ちて弾みをつけ、体に回転を加える高度な技も続々と生みだされている。日本には09年ごろ紹介され、10年には全国大会が始まった。日常的なトレーニングに取り入れるスポーツジムもあるという。
神戸市中央区のアウトドア専門店「好日山荘神戸本店」はスラックラインのグッズを扱い、週1回、自由に体験できるよう店内にラインを張る。スタッフの戸田竜也さん(30)は「ここ1年ほどで若い人の関心がぐっと高まってきた」と話す。
明石市立清水小学校5年の田中輝登君(10)は、父健雄さん(37)とともに2年前からスラックラインを始めた。インターネットの動画サイトなどで海外選手らの演技を研究し、昨年には全国大会ジュニア部門で年長者を抑えて優勝した。
田中君は地元で開かれた体験教室で模範演技を披露し、PR役も務めた。樹木を保護する観点から練習が許可されない公園が多く、練習場所の不足が悩みだ。「地域でみんなと一緒に楽しめる場所ができてほしい」と願っている。
(2012/06/30 14:36)
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